すでに安定感は若い頃のマダックスやペドロより上?!佐々木朗希の投球を支える驚異のBB/9
【今も異次元の投球を続ける佐々木朗希投手】
ロッテの佐々木朗希投手が、引き続き異次元の投球を続けている。
5月27日の阪神戦で交流戦初登板に臨み、チームは9回に佐藤輝明選手の決勝本塁打により0-1で敗れてしまったものの、6回を投げ4安打無失点7奪三振の好投を披露し、これで今シーズンは9試合の登板のうち8試合で6イニング以上、3失点以下というクォリティスタート(QS)を達成している。
異次元と表現するのは、確かな理由がある。プロ3年目の佐々木投手にとって今シーズン最大の目標は、先発投手として初めてシーズンを通してローテーションを守り投げ続けることにある。基本的に佐々木投手に無理をさせず、1試合当たりの球数を100球以下に抑えようとしているチームの起用法からも明らかだ。
そんな成長途上の投手であるにもかかわらず、ここまでの成績は5勝0敗、防御率1.33、94奪三振と、投手成績主要3部門でリーグ1位、もしくは2位にランクしている。このまま推移すれば投手三冠王の獲得も決して夢ではない勢いなのだから末恐ろしい。
【なぜ佐々木投手の投球は安定しているのか?】
4月10日のオリックス戦で史上9人目の完全試合を達成するとともに1試合19奪三振というNPB記録にも並び、一気に脚光を浴びる存在になってしまったが、佐々木投手の本当の凄さはやはり安定感ではないだろうか。
シーズン開幕からローテーションに入るのが初体験にもかかわらず(一度登録抹消されているが)、その時々の状態にかかわらず9試合中8試合でQSを達成しているのだから脅威というしかない。
その安定感の根底にあるのが、与四球数の少なさだと考えている。現在のようにある程度球数が制限される中で長いイニングを投げられているのは、的確にボール球を減らし、なお且つ与四球数を抑えられているからに他ならない。
ちなみにMLBでの投手の指標として使用されるBB/9(9イニングあたりの与四球数)を見ても、佐々木投手の1.18は加藤貴之投手、山岡泰輔投手、石川歩投手に次いでリーグ4位の低さだ。
そこに加え、ほぼ常時160キロ以上を記録する球威とキレのあるフォークで打者を圧倒してしまうのだから、同じく投手の指標であるWHIP(1イニングあたりの被安打+与四球数)では0.67と、他の追随を許さず堂々リーグ1位にランクしている(2位の東浜巨投手で0.79)。
【安定感はプロ3年目のダルビッシュ投手や大谷選手より上】
あくまで個人的なイメージではあるが、いわゆる豪腕といわれる投手たちは制球力に難があるように感じていた。まだ成長途上の若手投手ならば尚更のことだ。
例えば海の向こうのMLBでは、佐々木投手のように登板の度に160キロ以上の速球を連発しているレッズのハンター・グリーン投手がいるが、22歳でメジャー定着をも目指している彼のBB/9は4.9と、明らかに制球力に苦しんでいる。
またNPBを見ても、現在BB/9で佐々木投手より低い数値を記録している投手3人は、豪腕というより技巧派に分類される投手ばかりだ。
さらに日本を代表する豪腕投手であるダルビッシュ有投手、大谷翔平選手、山本由伸投手の高卒プロ3年目の成績と比較しても、やはり佐々木投手の安定感は際立っている(下記参照)。
【MLBの歴代投手の若手時期よりも安定感抜群】
折角なのでMLBの歴代投手たちとも比較してみた。ただMLBの場合はマイナーで経験を積んでからメジャーに上がってくるので、佐々木投手のように20歳でメジャーに定着している投手はそう多くは存在していない。
そこで今回は1990年代以降の投手の中でサイヤング賞を受賞し、さらに大学卒業に相当する22歳までにメジャーに定着(マイナーの登板数よりメジャーの登板数が多かった)した投手を適当に抜粋してみた。
すると浮かび上がってきたのは、ロジャー・クレメンス投手、グレッグ・マダックス投手、ペドロ・マルティネス投手、フェリックス・ヘルナンデス投手、クレイトン・カーショー投手の5人だった。
さらに通算奪三振数でMLB記録(5714個)を保持しているノーラン・ライアン投手も21歳でメジャーに定着しているので、彼も加えて比較してみた。括弧内の数字は、メジャーに定着した年齢を示している。
如何だろう。クレメンス投手を除けば、どの投手も若い頃はかなり制球に苦しんでいるのが理解できるだろう。
ライアン投手の場合は通算与四球数でもMLB記録(2795個)を保持しているので、キャリアを通じて制球力のいい投手ではなかったが、通算BB/9が1.8を誇るマダックス投手や、制球力に定評のあるマルティネス投手やカーショー投手でさえ若い時期には苦しんでいたのが理解できるだろう。
もちろんMLBとNPBの記録を単純比較するのは難しい。だが現在の佐々木投手がMLBを代表する大投手たちの若い頃よりも、洗練された投球を続けているという事実だけは疑う余地がないだろう。
ますますシーズン最後まで見逃せない存在になってきた。