一休寺とその周辺の魅力
一休寺に行くにはJR片町線の京田辺駅が最寄りで、約1.2キロ西へ歩きます。途中に見えてくる棚倉孫(たなくらひこ)神社は、推古31(623)年創建との記録も残る古社。この時期は、本殿横の美しい山茶花に目が吸い寄せられます。樹齢150年以上の古木は、遠目からみると桜かと見間違うほど、見事な花を咲かせていました。
一休寺は、JR東海の秋のキャンペーン寺院となった効果もあってか、平日でも駐車場は満車。大型バスのツアーもどんどん訪れて大盛況でした。紅葉も表参道から方丈へ至る道はもちろんのこと、方丈庭園(南庭)からの眺めは、枯山水と刈り込みに加えて、後ろの紅葉の赤が彩りを添えています。方丈以外にも本堂、開山堂周辺の木々も色づき、とんちで有名な可愛らしい一休さんと、この寺院を造った実像(63歳~亡くなる88歳まで住持を務める)に近い一休さんの像の対比も面白かったです。
一休寺を出て西へもう少し進むと薪(たきぎ)神社に突き当たります。古くからのこの周辺の氏神として、この付近の信仰の山でもあった甘南備山(かんなびやま)の上にあったものが、近年こちらに移されてきています。境内にはかつて一休寺の門前で金春禅竹が演能を行ったことから、「能楽発祥の碑」が立っています。
帰りは余力があれば、行基が開いたという古刹・甘南備寺へも足を延ばしてみてください。こちらも甘南備山から平地に移転し、その際に黄檗宗になっていることから、山門は中国風に造られています。本尊で平安時代の慈覚大師作と伝わる薬師如来坐像は、『今昔物語集』にも登場します。かつてこの寺院で修行していた若い僧侶が、都の寺院に憧れ、ついにこの寺を出る決心をした夜、夢に薬師如来の化身である老僧が現れ、「汝は前世、この寺院の下の土の中にいたミミズであった。その際にたくさんの法華経を聞いたからこそ、このように現在僧侶として生まれてくることができたのだ」と。これを聞いた若い僧侶は都へ出ることをやめて、この寺院でさらに修行に励むようになったという話です。他にもこのお薬師さんは「耳の仏」と称されており、難聴に悩む参拝者が回復を願って奉納した穴の空いた石が本堂壁面に吊るされています。甘南備寺からは天井川を回り込んで駅まで10分弱です。
一休寺以外の箇所では誰にも会うことはありませんでした。それほど、普段から静かなエリア。ぜひ、紅葉の時期以外も足を運んでみてください。次に一休寺が賑わうのは1月の最終日曜に行われる「一休善哉」の日です。一休さんゆかりの美味しい善哉が授与されます(有料、拝観料含む)ので、その日を狙っていくのもおススメです。