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浦和レッズ・柴戸がすごい! 日本代表も狙える進化

神谷正明ライター/編集者
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「グイッ」という音が聞こえてきそうな

 浦和レッズ・柴戸海の進境が著しい。そのチーム内で日に日に高まる存在感のベースとなっているのは無尽蔵のスタミナ、そしてボール奪取能力だ。

 柴戸は相手とボールの間にタイミング良く自分の体をねじ込むのがうまい。「グイッ」という音が聞こえてきそうな競り合いからボールを狩る。一回かわされても、瞬時の反応で再度、深いタックルも繰り出せる。どちらのプレーも体が強くないと出せないもので、いわゆる“粘り腰”があるタイプだ。本人も「自分の長所である球際の強さであったり、運動量のところで相手に走り負けないというところはここ数試合、自分の中でも出せている」と自信を持っている。

 大卒でレッズ入りしてから3シーズン目を迎える柴戸だが、走行距離でトップを記録することも珍しくない運動量の多さは1年目から見せていた。ボランチとして中盤のスペースをカバーし、危ない場面で顔を出して相手の攻撃をせき止めるプレーは今と変わらない。一方で、ボールハントについても武器にはしていたものの、現在ほど際立ってはいなかった。

 ところが、新型コロナウイルスによるリーグ中断が明けてからは、面白いように相手のボールを狩り取っている。再開初戦となった昨年王者・横浜Fマリノスとの試合で、柴戸は積極果敢にボールを奪い取りにいき、デュエルに勝ってボールを収めるシーンが多かった。鋭い出足で相手のパスをインターセプトする場面もよく見られた。

 リーグ中断を機に特徴が出せるようになっているのは本人も認めるところだが、その大きな要因はプレーの考え方が変わってきたからだ。

柴戸に見られた変化

 ボールを奪いにいくのは、ある意味ギャンブルだ。前に出ていって足を出して、相手にかわされたら、自ら敵にスペースを明け渡すことにつながり、ピンチを招く。だから、勝算はもちろん、それ相応の覚悟が必要だ。

 これまでの柴戸は、中盤の危ないところをカバーしようというリスク管理の意識が高いように感じられた。もっとも、それ自体は決して悪いことではなく、立派な守備対応の1つ。やたらめったらボールを奪いにいって、簡単にかわされる方がチームにとっては迷惑だ。ただ、セーフティファーストのプレーだと、受け身になって球際での鋭さがその分なくなってしまう。

 今の柴戸は“いけそうならどんどんボールを取りにいこう”というリスクテイクに積極的で、それが鋭い出足、現在の圧倒的な存在感につながっている。チームのオフィシャル媒体では、ネガティブなことを考えなくなった、と心境の変化を口にしている。

 もちろん、すべてがうまくいっているわけではない。リスクを取ってボールを奪いにいった結果、傷口を広げてしまうこともある。

 たとえば、ルヴァンカップのセレッソ大阪戦でカウンターを受けた後半終盤の場面。柴戸は、余裕のある状態でボールを持った清武弘嗣に対し、明らかに遅れて距離を詰めにいった結果、あっさりとかわされて、がら空きにしてしまったバイタルエリアを使われ、最終的には失点を誘発した。

 ただ、積極的にボールを取りにいくプレーを続けていれば、そういったことはいつかは起こる。それで勇気をなくして、良さも失ったらもったいない。ミスはないに越したことはないが、出てしまったらそれを反省材料にして、失敗の確率を減らす試行錯誤を繰り返せばいい。幸い、柴戸がそれで気落ちしたようなプレーになることはなかった。

 ボールを奪ってから素早く前に運んで相手ゴールに迫ろうとする今のレッズの戦い方において、柴戸は欠かせぬピースとなっている。その中で、現在のプレースタイルを突きつめていければ、日本代表の道が拓けてもおかしくはない。

ライター/編集者

大学卒業後、フリーライターとして活動しながらIT会社でスポーツメディアに関わり、2006年にワールドカップに行くため完全フリーランスに。浦和レッズ、日本代表を中心にサッカーを取材。2016年に知人と会社設立。現在は大手スポーツページの編集業務も担い、野球、テニスなどさまざまなスポーツへの関与が増えている。

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