確固たる考えを持つ三竿健斗 代表でさらに存在感を高めるには
淡々とした冷静な語り口の中にも、サッカーに対する確固たる考えがにじみ出る。森保ジャパンの初陣となった9月シリーズに続き、10月の代表戦2試合でも招集を受けた三竿健斗はサッカーを守備から捉え、それこそが自分の生きる道だという自負が感じられる。
攻撃面に関する質問に対しても、返ってくる答えには守備の意識が含まれている。たとえば、こんな感じである。
「ボールをテンポよく動かすことは出したいですけど、それを出すためにも自分がボールを奪ってリズムを作らないと、なかなか出しにくいと思うし、ボールを奪えば一人置き去りにできるので、そこで周りの選手を使って前線に持っていけたらと思うので、一番は守備かなと思っています」
三竿がイメージするボランチとしての攻撃への関与は、守備から“逆算する”ものというのが伝わってくる。その背景にあるのは、卓越したボール奪取能力への自信だ。
だから、世界トップクラスのタレントを擁するウルグアイ相手に、自身が試してみたいことも明確だ。「とにかく、食らいつくというか、ボールをどんどん奪いにいって、どれくらい世界のトップの選手たちに自分の守備が通用するのか挑んでいきたいし、スペースが大きいと簡単に剥がされると思うので、正面というより死角から入って、ボールにアタックできればと思っています」とイメージをふくらませている。
ただ、森保一監督がボランチに託す役割は複雑だ。中盤の防波堤としての守備での貢献は当然だが、攻撃面でも状況に応じたポジショニングとビルドアップの力といったものが求められる。
森保監督のサッカーでは頻繁に見られる、ボランチが中盤からDFラインに落ちてビルドアップに関与するプレーもその一つだ。ウルグアイ戦前日会見でも「ボランチがDFラインに降りてビルドアップしたり、試合のなかで変化をもたらす戦いも選手たちはトライしてくれている」と4バック、3バックに関係なく、チームの戦術として落とし込む作業をしていることを明かしている。
だからこそ、攻撃面での具体的な動き方に対してどういう意識で取り組んでいたのか、少し掘り下げて聞いてみた。
──パナマ戦では相手の2トップの守備に対し、チームとしてボランチが落ちて3枚で回す形で対処することが多かったが、そのパターンに取り組んでみての手応えは?
「ビルドアップの部分ではもっと前を向きたいと思いますし、前を向いた時にもっとFWだったり、サイドハーフにつけられる時もあったので、それは試合をこなすごとに慣れてくると思うし、でも、やっぱり僕が考えているのは奪った時にというのが一番チャンスだと思っているので、ビルドアップも大事ですけど、良い守備から良い攻撃というのが僕は大事だと思っています」
──青山選手がDFラインに落ちる形の場合、三竿選手は中盤に1枚残る。ミスの許されない状況で精神的にもプレッシャーを感じながらプレーすることになるが、その際に考えていたことは?
「直接受けてターンする時はなかったですけど、真ん中にいることで2トップが絞って、センターバック、特に冨安のところが空いて持ち運べていたので、いるだけでいいというか、自分が直接受けなくても他の選手が受けられていたので、そこは監督とも話して、ああいう時はあれでいいと話しました。まあ、仲間のためにスペースを空けられていたんじゃないかと思います」
たしかにパナマ戦では、日本のビルドアップの仕方に対して相手が守備のやり方を変えてくることはなく、右センターバックの冨安健洋がフリーでボールを運んだり、縦パスを入れる形が再現性高くできていた。ただ、冨安がサイドから運ぶという形だけでは、相手の中盤を動かして崩すという流れにはなりにくかった(それでも縦パスは通っていたが)。
1ボランチが最終ラインからボールを引き出すこともできれば、攻撃の組み立ての選択肢は広がるし、中も使う形もあるというのをちらつかせることで、中央エリアに相手選手を動かし、サイドやハーフスペースを使った攻撃をしやすくするといったことにもつながる。
三竿はボール奪取能力だけでなく、足元の技術も非常に高い。プレッシャーのかかる状況でも積極的にボールを引き出し、相手を動かして有利な局面を作るといったプレーでもアピールできる素地は十分ある。守備で存在感を発揮できるのは間違いないが、攻撃面での影響力ももっと高められれば代表のレギュラー奪取に一層近づくはずだ。パナマ戦にフル出場したことにより、ウルグアイ戦での出場があるのかどうかは微妙なところだが、よりレベルの高い相手と対峙した時にどういう選択ができるのかは注目したいポイントだ。