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TDRまた打撃「時短」の影響

山口有次桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授
緊急事態宣言を受けた時短営業はTDRにどのような影響を及ぼすか(写真:ロイター/アフロ)

緊急事態宣言の要請とTDRの対応

 新型コロナウイルス感染拡大の抑制を目的に、政府は、1月7日、首都圏の1都3県(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)に緊急事態宣言を発令した。東京ディズニーランド&シーは、その前日の1月6日に、各自治体の協力要請などを踏まえ、8日から1月末まで、運営時間をそれまでの9時~21時から9時〜20時に短縮することを発表していた。そして、今回の緊急事態宣言を受け、1月8日に、12日から2月7日まで、両パークの入園者数を大幅に制限し、閉園時間をさらに19時まで早めることを発表した。

 今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるのではなく、感染リスクの高い場面として特に飲食を伴う場所への重点対策が講じられている。不特定多数が集まるテーマパークにおいては、人と人との接触機会が多く、そして、飲食につながる場合が多い。具体的には、収容人数の抑制、営業時間を20時まで短縮、酒類提供は11時から19時まで制限、といった要請が関係する。

 東京ディズニーランド&シーでは、「20時以降の外出自粛」の徹底が強く要請されていることを受け、ゲストの帰宅時間にも配慮し「19時閉園」に設定されたものと推察する。9月以降は21時閉園で運営されており、2月7日に緊急事態宣言が解除された場合、その後21時閉園が見込まれていることから、本来ならこの時期も21時閉園を継続したいところであろう。

東京ディズニーランド&シーの営業時間の変化

 筆者作成
 筆者作成

時短営業による客単価の低下

 1月9日入園分以降、パークチケットの新規販売は一時停止されており、1月11日時点では再開されていない。昨年7月にパーク営業再開後、感染防止対策として収容人数を半分以下に抑える運営が余儀なくされ、大きなダメージを受けてきた。その後、徐々にその割合を高め、感染拡大抑止と効果的なパーク運営を両立するノウハウを蓄積してきた。半分以下の制限が緩和されると、問題のない範囲で収容人数を増やしながら運営されてきた。今回の緊急事態宣言を受け、かなり大幅な入園者数制限がなされると、悪いながらも回復させてきた今年度のチケット売上の見込みを下方修正せざるを得ないだろう。再開後のチケット値上げも手伝い、チケット客単価は上がっているだけに、また打撃を受けたことは残念でならない。

東京ディズニーランド&シーのゲスト1人当たり売上高(円)の推移

オリエンタルランド「2021年3月期 第2四半期決算説明会」(2020年10月29日)を基に筆者作成
オリエンタルランド「2021年3月期 第2四半期決算説明会」(2020年10月29日)を基に筆者作成

飲食販売・商品販売の減少

 そして、何より、営業時間の短縮が飲食の抑制に向けられていることから、飲食比率の低下、そして、飲食販売の客単価下落は避けられないだろう。オリエンタルランドの2020年度下半期業績予想では、飲食販売は、喫食機会の増加により一時的な増加が見込まれていたが、この達成は困難になると思われる。

 また、平均滞在時間が短くなることが、商品販売の売上にも影響するため、商品販売の客単価も若干下がると推察する。同じく下半期業績予想において、商品販売は、スペシャルイベントの中止、縮小により一時的な減少が見込まれていたが、これはその方向にシフトせざるを得ない。

 そして、平均滞在時間の短縮は、顧客満足度の総合的な低下にもつながる可能性がある。

各種イベントの中止や開催延期

 パークの一部ショー・パレードも運営・公演の中止が余儀なくされている。1月13日から開始予定であった新たなイベント「ハッピーフェア・ウィズ・ベイマックス」も開催延期となった。昨年9月にオープンした「ベイマックスのハッピーライド」のあるトゥモローランドで、体験型フォトロケーション設置や、イベント要素のある特別なデコレーション配置、スペシャルグッズ販売、各飲食店のスペシャルメニュー導入など、ベイマックス一色でエリアを盛り上げる予定であった。今回の緊急事態宣言は飲食を伴う場所を中心に対策が講じられているだけに、食の要素を含むイベントを控えることはやむを得ない決定である。

 また、毎年この時期に開催されていた準社員(パート・アルバイト)向けイベント「サンクスデー」が開催できないことも、楽しみにしていた準社員は残念に思っている。サンクスデーとは、一般ゲスト向け営業を早めに切り上げ、閉園後のパークに役員や社員らが出て、日頃の感謝を込め準社員をパークに招待するイベントである。準社員のモチベーション向上と、日々のオペレーションを再確認する効果が期待されている。

 緊急事態宣言を受けた東京ディズニーランド&シーの時短営業は、苦しい環境下での奮闘に水を差し、ダメージをさらに大きくする。だが、こうした試練が、より一層パーク運営能力を高め、先々の魅力向上にも寄与することを切に願う。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授

早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年より桜美林大学ビジネスマネジメント学群助教授、准教授を経て、2009年より現職。専門分野は、レジャー産業、レジャー施設、レジャー活動。1990年から『レジャー白書』の執筆に携わる。近年はアジア諸国のレジャー活動状況調査を実施し発表。単著『新 ディズニーランドの空間科学 夢と魔法の王国のつくり方』『観光・レジャー施設の集客戦略 利用者行動からみた“人を呼ぶ魅力的な空間づくり”』、共著『「おもてなし」を考える 余暇学と観光学による多面的検討』『観光経営学』『観光学全集 観光行動論』等。レジャー施設に関する論文多数。

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