東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」世界初の新アトラクションは原点回帰の表現力
東京ディズニーシー8番目の新テーマポート「ファンタジースプリングス」が、6月6日のグランドオープンに先駆け、5月7日にプレス公開された。
注目ポイントは、総開発面積約140,000平方メートル、テーマパーク・ホテルエリア約100,000平方メートルという規模、そして、総投資額約3,200億円という東京ディズニーシーの総工事費約3,350億円に匹敵する開業以来最大の開発であること。
そして、ファンタジースプリングスの最も大きな関心事は、異なる3つのエリアをひとつのテーマポートに収めながら世界初登場の新アトラクションが4種類も導入されたことであろう。この大規模な開発がそれに見合った価値を生み出せたのか考察したい。
原点回帰のファミリーエンターテインメントとオーディオアニマトロニクス駆使
ファンタジースプリングスは、魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界をテーマとしている。ここが源泉となり川から海へ流れ込む位置づけであり、その意味でもディズニーテーマパークの原点であるファミリーエンターテインメントに立ち戻り、子どもから大人まで家族でいっしょに楽しめることを重視している。そして、もうひとつの原点回帰は、オーディオアニマトロニクスの有効活用である。
オーディオアニマトロニクスとは、オーディオ(Audio)、アニメーション(Animation)、エレクトロニクス(Electronics control)を組み合わせた造語で、電子制御で人や動物等の動きを音楽や音声と同調させるシステムを指す。ディズニーテーマパークでは、アトラクションにおける物語の再現性を高めるため、本家ディズニーランド開園後の初期(1960年代)からこの技術が活用されてきた。
海外のパークに詳しいファンの間では、「フローズンキングダム」の「アナとエルサのフローズンジャーニー」が、同じように『アナと雪の女王』の物語を体験できるアトラクション、米国ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのディズニーテーマパーク「エプコット」と「香港ディズニーランド」にある「フローズン・エバー・アフター」と差別化されることを期待する声が多かった。ともに水流ライドタイプであることは共通であるが、より高度なオーディオアニマトロニクスをプロジェクションマッピングとの組合せでうまく機能させ、個性を発揮できている。
見どころは、アナとエルサが歌う日本語の歌詞にあわせた口の動きと表情である。もちろん、ノースマウンテンでエルサが歌う「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は複数のシーンで盛り上げている。そして、クライマックスで、凍りついたアナをエルサの「真実の愛」で救うシーンは見事な出来映えである。
オーディオアニマトロニクスに映像と空間を巧みに組み合わせた物語表現
世界初登場、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の世界「ラプンツェルの森」のアトラクション「ラプンツェルのランタンフェスティバル」は、同じく水流ライドタイプのアトラクションである。見どころのひとつは、塔の上で歌うオーディオアニマトロニクスのラプンツェル。夜空いっぱいに広がる無数のランタンの灯りに包まれるシーンは写真映えするが、もう少し表現力を加えたかった。しかし、全体的に映像とオーディオアニマトロニクスとリアル空間を組み合わせ物語をうまく表現している。
同じく世界初登場「ピーターパンのネバーランド」のアトラクション「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」は、ティンカーベルが妖精の粉をボートにかけると空に舞い上がり、ピーターパンやロストキッズとともに、フック船長と海賊たちからジョンを救出する冒険の旅を体験できる。3Dメガネをかけて乗船する形だが、映像表現とライドの動きによる演出は完成度が高い。
世界のディズニーテーマパークの中でもオリジナルティを発揮できている
さらに、「ピーターパンのネバーランド」に登場した世界初のアトラクション「フェアリーティンカーベルのビジーバギー」は、ティンカーベルの作った乗り物“ビジーバギー”に乗りこみ、妖精の谷「ピクシー・ホロウ」の四季をめぐりながら配送の手伝いをする。小規模であるが、小さな子どものいるファミリーだけでなく、大人も十分楽しめる。
総じて、世界初登場の4種類のアトラクションは、世界のディズニーテーマパークのなかでもしっかり個性を発揮できており、東京ディズニーシーに大きな価値を加えている。近年オープンした複数のアトラクションについては出来映えをやや残念に思っていたが、ファンタジースプリングスの新アトラクションは全体的に質が高く、しばらくファンの心をつかんで離さないだろう。