史上初「七番勝負第9局」が見えてきた? 豊島挑戦者、叡王戦第8局で速攻から優位に立つ
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9月6日。神奈川県秦野市「元湯 陣屋」において叡王戦七番勝負第8局▲豊島将之竜王(30歳)-△永瀬拓矢叡王(28歳)戦がおこなわれています。
戦型は角換わり。先手の豊島挑戦者は低い陣形から桂を跳ね出していく速攻を仕掛けました。前例のある形ですが、時間の使い方からして相当に深いところまで準備しているであろうことがうかがえます。
豊島挑戦者は端を突き捨て、飛車を前線に飛び出し、35手目、端に歩を垂らした局面で12時30分、昼食休憩に入りました。
両者の昼食はビーフカレーでした。
永瀬叡王は3日前に同じ陣屋でおこなわれた王座戦第1局の時の昼食と、同じ選択です。
休憩の間、永瀬叡王は和服からスーツに着替えました。いつもの永瀬定跡です。
13時30分、対局再開。手番の永瀬叡王はすぐに指さず、なおも考え続けます。豊島名人は眼鏡をはずし、入念に拭きました。その間、永瀬叡王はスーツのジャケットを脱ぎ、半袖シャツ姿になります。対局室の外からは蝉の声が聞えてきて、まだまだ暑さを感じる時節です。
やがて永瀬叡王の手が動きます。そして中段に角を打ちました。豊島玉をにらむと同時に、飛車の退路を絶っています。
永瀬叡王が36手目に使った時間は1時間2分。持ち時間は6時間で、消費時間の通計は豊島24分、永瀬2時間26分となりました。
時間の使い方を見れば、まずは豊島挑戦者が序盤で一本取ったのではないかと思わせます。
局面が大きく動き、永瀬叡王は飛銀、豊島挑戦者は角金の交換となりました。駒割はほぼイーブンですが、玉形などその他の要素から、盤上の形勢も次第に豊島挑戦者に傾いてきたようです。
51手目。豊島挑戦者は端のスキに金を打ち込んで、着実に攻めていきます。筆者手元のコンピュータ将棋ソフト「水匠2」は評価値にして千数百点の差がつきました。
時刻は17時を過ぎ、現在は永瀬叡王が考えています。この苦しい状況から、どう指していくのでしょうか。
1982年の第40期名人戦は千日手2局、持将棋1局を含んで最終局までもつれこんだため「十番勝負」とも称されました。
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千日手は1局としてはカウントされませんが、タイトル戦における持将棋は完結した1局と見なされます。
第40期名人戦も含め、七番勝負が持将棋1局を含め第8局まで進んだ例は3回あります。
番勝負で持将棋が2局生じた例は過去に一度もありません。したがって、七番勝負で第9局まで進んだ例もありません。今期叡王戦で、第9局は実現するのでしょうか。