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やはり山田はすごかった! 「代打」出場の近江が死闘制す

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近江の山田は急きょ出場のハンディを感じさせず、延長13回を投げ切った(筆者撮影)

 開幕前日の京都国際の出場辞退で急きょ、近畿地区補欠から繰り上がり出場が決まった近江(滋賀)。昨夏4強の原動力となったエースで4番の山田陽翔(3年、主将=タイトル写真)が甲子園に帰ってきた。そして長崎日大との1回戦は、延長タイブレークにもつれ込む死闘。山田は決勝打放って165球の熱投を見せ、完全復活を印象付けた。

夏の激闘でヒジを故障も復調気配

 山田は夏の激闘がたたり、ヒジを故障。昨秋は全く登板せず、チームは近畿大会8強止まりで、センバツの選考に漏れた。チームは夏一本に絞って調整していたが、まさかの京都国際のコロナ禍で「代打」出場が決まった。ただ、山田は12日、練習試合の智弁学園(奈良)戦に登板し、6回1安打1失点(自責0)の投球を披露していて、復調ぶりが伝えられていた。

「体を慣らしつつという段階」

 冬の間、フォーム改造に着手した山田は、かなりバランスのいい投げ方になっていて、課題だった制球も改善されていた。さらに直球のスピードも、この日は自己最速にあと2キロと迫る146キロを計測し、13回でも142キロが出ていた。長く彼の投球を見ているが、夏よりもはるかにいい。はっきり言ってここまで投げられるとは思っていなかった。そして試合後、筆者の代表インタビューにも涼しい顔で「(13回投げてもヒジは)全く問題なくやれている」と言い切った。さらに「もっと下半身を使えればよかったが、体を慣らしつつという段階なので、今日はこの辺でいいかな」と、余裕すら漂わせていた。

チームの調整不足を全て背負う

 この日は「投手山田」がメインだったが、4番打者としての本領は、タイブレークの13回の打席できっちり発揮した。無死1、2塁で、初球を迷いなく叩くと、左翼への勝ち越し適時打が生まれる。これが決勝打(試合は6-2で勝利)となった。「どんどん振っていこうと決めていた」と言っていたが、それまでの打席では力みが目立ち、フライアウトの連続だった。この日はチーム全体としてフライが多く、内野手のもたつきもあって、攻守とも調整不足は明らか。9回2死からようやく追いつく敗色濃厚の苦戦で、それを山田が全て背負った格好だ。常日頃から「山田を見習ってほしい」と選手たちにハッパをかける多賀章仁監督(62)も、改めてその思いを強くしたのではないだろうか。

「いたたまれない」と京都国際を思いやる

 インタビューの最後に、急きょ、出場が決まったことを尋ねると、山田のトーンが一気に下がり、「出られない高校の分も、と言うか、嬉しさよりいたたまれない気持ちがまさっていた」と、京都国際の球友たちを思いやった。本来ならこのあと威勢のいい言葉を期待したいところだが、目の前にいる山田は、本当に立派な男だと思った。投げて、打って、ハートも「さすが」の一言しかない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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