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くっきー!が語る恩人と恩返し。そして、貫くことの不安と意義。

中西正男芸能記者
恩人への思いを語った「野性爆弾」のくっきー!

 芸人のみならず、アーティストとしても注目されるお笑いコンビ「野性爆弾」のくっきー!さん(44)。昨年、米・ニューヨークで開催された世界最大の美術市場「Art expo New York」で“最も注目する5人”にも選出され、今月、5年ぶりとなる絵本「口だけ紳士と6つの太陽」を出しました。まさにオンリーワンの存在感を見せていますが、その礎を築いた恩人への思い。そして、貫くことの不安と意義を語りました。

やりたいことしかやってこなかった

 今回の絵本では、絵と写真を組み合わせて作るという手法も取り入れているんですけど、これはずっとやりたかったことだったんです。

 そんな思いがあった中、絵本を作りませんかというお話をいただいて、今年の7月頃から動き出した感じですね。これまで、やりたいことしかやってこなかったんで、今回も、ありがたいことにやりたいことが重なって、久々に絵本を作ることになりました。

 今、仕事が全部で10あるとしたら、その中でパワーバランス的に絵は2くらいですね。あくまでも、幹はお笑い。

 客観的に見たらどうか分からないですけど、僕の中では、絵もお笑いの一環というか。ボケない絵は描かない。絵のみならず、ボケない何かはしない。基本的に、そう思ってはいるんです。

 さすがに、スッと読んで、感動して泣ける。そんなんは、よう描かないというか。感動というのも、実はよく分からないものだとも思うし、なんとも難しいですわね。

 僕の絵のスタートは、そもそも、楽屋での落書きからですからね。今から15年ほど前ですかね、大阪時代に楽屋で、なだぎ武さんとかと雑誌のグラビアのネエチャンの顔を描いて、髪形だけパンチパーマにしたり、水着を脱がしたりして遊んでたんです。

 それを見た芸人がイベントとか結婚式のウエルカムボードに絵を描いてくれと言ってきて、そのボードを見たテレビ局の人が「これは面白い」と思ってくれて番組に呼ばれたり。そんな感じで、じわじわ広がっていったんです。

 ただ、髪形だけパンチパーマにする絵とかは今でも描いてますし、やってることは変わってないんですけどね(笑)。

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スベるのを恐れない突進力

 笑いに関しても変わらないというか、そういう部分は強いと思います。そこに導いてくれたのは間違いなく「バッファロー吾郎」さんですよね。

 僕らみたいなタイプの芸人って、全てが「バッファロー」さんに通じるというか。てっぺんであり、笑いの主です(笑)。

 若手の頃から「バッファロー」さんがされていた「バッファロー吾郎の爆笑新ネタ逆転満塁ホームラン寄席」「ダイナマイト関西」「バトルオワライヤル」などのイベントに頻繁に呼んでいただいてました。

 あと、プライベートでも竹若(元博)さんとテニスをやったりね。まだこの世界に入ったばかりの「とろサーモン」久保田も来てました。久保田が軟式テニスでかなりの腕前だそうで、誰かが呼んだんですよ。

 でも、軟式はボールが柔らかいから打つ時に思いっきり振るんですって。それを硬式でやったからか、第一打撃で先輩に借りたラケットのガットを切って、そのままリュック背負って帰っていったんですよ。こいつ、マジで狂った後輩やなと思いました。

 人生で何の足しにもならん時間でしたけど(笑)、ただ、楽しいだけの時間でした。

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 「バッファロー」さんからたくさんのことを学びました。中でも、一番大きかったのは“スベるのを恐れない突進力”だと思います。

 もちろん、お客さんあってのお笑いなんです。ただ「バッファロー」さんは、お客さんはあまり笑ってないけど身内はものすごく笑ってるというのがあるんです。

 身内ウケと言われるのかもしれませんけど、NSCという養成所に入って、最初は客前でやる機会もないので、ネタをするにしても、まずは「これでどうだ!」というネタで身内を笑わせにかかるしかない。

 そこから舞台に立つようになって、お客さんにウケるようにシフトチェンジしていくんですけど、自分たちが「これだ!」と作ったものが最初のネタの方向性のはずなんです。だから、どのコンビでも、ルーツはみんな「バッファロー」さん的なもののはずなんです。それを調整していくか、そのままいくかの違いだけで。これは僕の解釈ですけど。

 お客さんに合わせるか。そのまま突っ走るか。この二択。そして、僕は「バッファロー」さんのコースを選んだということです。

 その道がどこに続くかは分からないし、続かないかもしれない。道中は不安のみでもあります。でも、突っ走ったら、どこかには着いた。それが今なんやなと。

 バッファローさんは「キングオブコント」で優勝してるし、ハリウッドザコシショウも「R-1」で優勝してるし、意外と強いんですよ。“バッファローブラッド”は(笑)。

 ただ「キングオブコント」をとった時も、特におめでとうパーティーをやったりすることもなく、喫煙所で「なんか、優勝したはりましたね」という感じでした。逆に、僕が仕事が増えてきても、何が変わることもなく「最近、忙しいんちゃうん?」くらいの感じですしね。なんというか、フラットですね。

究極の恩返し

 「バッファロー」さんへの恩返し。究極、できたら一番いいのは「バッファロー」さんメインのコント番組ができることですよね。それが最高です。

 ケンドーコバヤシさんがいて、ザコシショウがいて、なだぎさんがいて…。他にもたくさん出たいという人間はいるでしょうし。今年はコロナでいろいろなものが止まってしまいましたけど、何とか、来年以降でそんなことができたら面白いやろうなと思います。

 ま、ホンマに今年はコロナで、なんというか“色のない一年”という感じにはなってしまいましたね。2019年の余韻というか。

 ただ、時間はあったので、絵は描けたし、あとYouTubeとかそういう場も増えたので、ギターを弾く機会は増えました。弾くとなると、また新しいギターも欲しくなるし。なんだかんだで、22本くらいまで増えました。でも、次々買っても弾ける時間は決まってるし。ケースが積み重なって、奥の方のギターは出せなかったりもしてますし。

 この間「坂上どうぶつ王国」(フジテレビ)で、多頭飼育の問題を取り上げてたんですけど、今、完全にギターの多頭飼育です(笑)。だから、今度「坂上どうぶつ王国」でロケに来てもらおうと思ってます。

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(撮影・中西正男)

■くっきー!

1976年3月12日生まれ。滋賀県出身。本名・川島邦裕。幼稚園からの幼馴染だったロッシー(本名・城野克弥)と94年に「野性爆弾」を結成。NSC大阪校13期生。若手時代から独特の世界観で注目され、MBSテレビ「オールザッツ漫才」などで注目を集める。2008年に拠点を大阪から東京に移し、白塗りした顔で表現するモノマネ芸などでブレーク。新作絵本「口だけ紳士と6つの太陽」が発売中。12月8日まで東京・渋谷PARCOにて「口だけ紳士と6つの太陽」の原画展とポップアップショップを開催している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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