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「今も相談しています」。「ET-KING」KLUTCHが語るいときんさんへの思い

中西正男芸能記者
ソロ活動もスタートさせた「ET-KING」のKLUTCHさん

 TENNさん、そして、いときんさんを失い、5人となったヒップホップグループ「ET-KING」。2人と福祉の専門学校で出会い、グループの原形を作ったKLUTCHさん(42)がソロシングル「TURN OVER」を先月リリースしました。今感じる「ETKING」への思い。そして、直接は会えなくなったメンバーへの思いをストレートに語りました。

違う角度から響かせる

 ずっと「ET-KING」として音楽活動をして、いろいろとインプットをさせてもらってきました。

 そして、ものすごくシンプルな話、今「ET-KING」は5人でやっていて、そのうちの4人が歌っている。単純に、自分が歌うパートが1曲の中で4分の1というか限られたものにはなっている。その中で表現しきれなかったこと、出し切れなかったことを表現できたらいいなという思いがソロのスタートですかね。

 ただ、やってみると、不安なところもありました。5人で作っている時には互いにアドバイスや確認作業を日々しているんですけど、ソロとなるとそれがない。

 自分では「これがカッコいい」と思っていても、それが思いっきり勘違いかもしれない(笑)。折に触れ、メンバーにも聞いてもらったりはしてたんですけど、基本は一人で作っていく中で、その不安みたいなものはありましたね。

 あと、今回の曲は、以前から親交のある西武ライオンズの森友哉君との出会いの中で生まれたものでもありまして。森君のこれまでの葛藤や思いを歌詞に落とし込んだ曲でもあるので、野球ファンの方とか、また「ET-KING」とは違う角度から、違うお客さんの心に響いて、それがひいては「ET-KING」のためにもなるんだろうなと思っています。

「えんとつ町のプペル」

 それで言うと、去年12月に映画「えんとつ町のプペル」に主人公のお父さん・ブルーノのモデルがいときんという流れもすごく大きかったです。

 それこそ、これまで全く接点がなかった「ET-KING」の曲を知ってもらう大きなきっかけになりましたし、僕個人のSNSまで一気にフォロワー数が増えました(笑)。

 またこれも、映画、そして、いときんがくれた流れだったのかもしれませんけど、去年の12月にいときんが卒業した兵庫県の三田市立高平小学校に映画チケットをプレゼントするためにメンバーで行ったんです。

 以前、卒業式にサプライズで歌いに行ったこともありまして、その時に低学年だった生徒さんはまだ高学年として残っていて。「歌いに来てくれて、ありがとうございました」とお礼を言ってくれました。

 その瞬間、強烈に思ったんです。

 こうやって、子どもたちの中で思い出が残ってるんだと。特に、子どもたちにとっては、大きな音で目の前で歌手が歌ってるというシチュエーション自体が初めてという子も多いだろうし、より鮮明に覚えてくれてるんだなと。

 漠然と思っていたことを、目の当たりにさせられるというか。そういう中で20年以上歌っていると、いろいろな子の思い出にもなっているのかなと。

 自分たちの歌がきっかけで何か人生が変わったり、前向きになった子もいるのかなとも思いましたし、逆に、そうならなアカンとも思いました。

今も相談

 その流れも、ある意味、新たにいときんがくれたものやとも感じましたし、いろいろなところであいつの存在は今も強く感じています。

 僕の中で特に大きかったのは、2018年に大阪万博誘致応援ソングとして作った「ET-KING」の「この街の空」という曲があるんですけど、いときんはこの曲を作ってる最中に亡くなってしまうんです。

 亡くなってからも、まだ最後のフレーズが決まらなくて、事務所でメンバーといときんが出た最後のライブの写真を見ながら考えてたんですよ。

 その写真を見てもホンマに楽しそうに歌ってて、その時は闘病中だったんですけど、何の迷いもなく歌いに来てたなと。

 もし、自分があの病気になって、こんなエエ顔をして人前で歌えていたかなと思った時に、恐らくは当時のあいつの気持ちであろう“もう迷わない”というフレーズが出てきたんです。

 もういときんはいないんですけど、今でもヒントをもらったり、いろいろな形で相談はしています。

 そして、自分たちも迷わず、変わらず、ずっと7人一緒の気持ちで、歌い続けようと思っています。

 今、いときんがこの場に居たら、何と言ってるでしょうね…。「とにかく、オレのことはエエように書いといてや!」でしょうかね。多分、合ってると思います(笑)。

(撮影・中西正男)

■KLUTCH(クラッチ)

1978年9月15日生まれ。大阪府出身。大阪の福祉専門学校で出会った、いときんさん、TENNさんと99年に「ET-KING」を結成。その後、センコウ、BUCCI、DJ BOOBY、コシバKENが加入する。2005年からは大阪・大国町でメンバー全員が共同生活をしながら音楽活動を行い「ギフト」「愛しい人へ」などのヒット曲を生み出す。14年、「ET-KING」結成15周年記念全国ツアーの最終公演をもって、活動を一時休止。その間にTENNさんの急逝という悲報が届くが、15年7月から活動を再開する。17年にいときんさんの肺腺がんが発覚し、18年1月31日に38歳で逝去。以後、「ET-KING」は5人で活動し、ABCラジオ「ET-KINGのえべっさんでぇ!」などに出演中。KLUTCH個人として、大阪の BAR「F.Y.B」、club「THE PINK」の立ち上げメンバーとして店舗プロデュースなども手掛ける。先月、初のソロ曲「TURN OVER」が配信スタート。「ET-KING」としてワンマンライブ「 GET IT ON TOKYO/OSAKA」も開催。東京公演は6月12日にCLUB QUATTRO、大阪公演は7月9日にBIGCATで行われる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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