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日本代表キャップ歴代2位の小野澤宏時が語る、「団体競技の醍醐味」+α【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2011年のワールドカップでは、優勝したニュージーランドとも対戦。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表として国内歴代2位となる81キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を持つ小野澤宏時が、若いチームにおけるシニアプレーヤーの立ち位置などについて語った。

38歳の小野澤は2003、07、11年のワールドカップなどに出場し、テストマッチ(キャップ対象試合)では世界歴代4位の55トライを記録。長らく「うなぎステップ」と称される変幻自在の走りで名を馳せてきた一方、同じチームでのプレー経験のある選手からは試合中の情報伝達やポジショニングなどを尊ばれる。

現在は静岡産業大学経営学部の非常勤講師として、一般の女子学生を対象にラグビーを指導。引退後に教員になる青写真も描いており、某大学院でコーチング学を研究。母校の静岡聖光学院中学校、高校ラグビー部の育成コーチも務めている。

8月6日、所属するキヤノンの一員として釜石シーウェイブスとの練習試合に先発。前半4分に先制トライを決め、ハーフタイム終了間際にはキックチェイス、密集戦での相手への絡みつきを重ね、なおも攻撃を続ける相手のランナーを大回りしながらタックルした。

36―12で勝利した後、単独取材に応じた(東京・キヤノンスポーツパーク)。

以下、一問一答。

――酷暑のなかでの試合。前半終了間際の動き、しびれました。

「いやぁ。全然、です」

――試合を振り返って。

「きょうは若手、ベテランだけれど怪我明け、といった選手が混ざっていました。今週だけでも積み上げというものがかなりあって。例えば、1年目の10番の上原哲。プレーが始まる前のコミュニケーションをどう取るのか、で、実際にプレーが起きた後にどうするか。その点で向上が見られたので、もう、おじちゃん嬉しいという感じです。もちろんまだまだなところもあるんですが、『(試合中に)こうした方がよかったな』という部分をどう(自分から上原に)伝えるかという方法論の(を考えるという)1週間に進んでいける。来週も楽しみ。チームからスキルの部分でのフィードバックもあるなか、(プレー中の感覚などを)どう伝えるか…。そのために経験のある選手がいると思う」

――他の選手の能力を高めるのも、仕事。

「よりいいチームにするためにいるので、(若手選手の)能力が上がったと思ってくれたら嬉しいですし。チーム全体の自己効力感(自分に対する信頼感)みたいな…。自分のコミュニケーションや自分の立ち位置によってチームが変わったと実感して、積み上げてゆく。トップリーグ(日本最高峰のリーグ戦。キヤノンは昨季16チーム中6位)の上位チームは、その自己効力感が高いと思うんですよ」

――自己効力感。

「自分がこれをしたことで、何か、チームとして良くなった、ということです。この深さで(攻撃ラインに)入ったから、あの飛ばしパスが利いた、とか。『なんか、良くなった気がする』。これの数が多いのが、団体競技(の醍醐味)でしょう」

――ご自身も充実しているようです。昨季までは肩の故障などに苦しんでいたようですが…。

「身体のどこにも問題がないので、楽しくやってます。(去年は怪我こそ)治ったけれど、(関節や筋肉などの動きに)硬さがあった。(自身の胸元を動かしながら)いまは緩むことが出てきたので」

――地元の静岡では指導にも携わっています。

「産業大学でも、サッカー部やバスケット部の女の子をメインにラグビーを教えています。一般教養のラグビーの授業です。(指導者としては)できれば、若い世代というか、初めてやる人にとっての充実をもたらせるようになれれば。経験もしてきたのでラグビーの方法論は持っているんですけど、(自身は)人がラグビーをできるようになる手助けをする、その環境でありたいので。引っ張り上げるコーチというより、選手同士で『何か、面白いかも』となっていけるようにできれば。普及育成に興味があるので」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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