Yahoo!ニュース

ピンクのバッタ、子どもが見つけると大ニュース、大人が見つけると?

天野和利時事通信社・昆虫記者
背中と触角がピンク色のショウリョウバッタモドキ。

 珍しいピンク色のバッタが見つかったというニュースは、時々地方紙などで紹介される。発見者はたいてい小さな子どもだ。子どもが珍しい虫を見つけたら、周囲の大人は「すごい、すごい」と拍手喝采する。実にほほえましい光景だ。

 しかし、大人が必死になってピンクのバッタを探し出しても、全然すごくない。周囲の反応は、「フーン、それがどうかしたの」という感じになりかねない。

 昆虫記者もたまにピンクのバッタを見つけるが、誰もほめてくれない。文化部のデスクに、記事や写真を見せても、没(不採用)になるだけだ。

 それでも今回ピンクのバッタを紹介するのは、暗いニュースが多い世の中に一筋の光を届けたいからだ(うそです。単に自慢したいだけです)。

 ピンクのバッタは、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、クビキリギスなどが多いが、今回見つけたのは、ショウリョウバッタモドキという、スマートなバッタのピンク版。

スリムなショウリョウバッタモドキ。ピンクのドレスで際立つ美貌。このタイプは結構多いらしいので、見つけてもあまり自慢できない。
スリムなショウリョウバッタモドキ。ピンクのドレスで際立つ美貌。このタイプは結構多いらしいので、見つけてもあまり自慢できない。

 全身がピンクというわけではなく、背中の上面と触角だけがピンクだったので、正真正銘の突然変異のピンクバッタとは言えないかもしれない。

 正真正銘のピンクバッタは、遺伝子の突然変異による色素変化の結果らしいので、もともと数が少ない。その上、天敵に見つかりやすいので、成虫になるまで生き延びる確率が低い。

 つまり天敵に捕食されず生き残ったピンクのバッタは、よほど運がいいバッタということになる。それゆえ、希少なピンクのバッタを見つけると幸運が訪れるといった伝説が生まれる。

こちらは普通のショウリョウバッタモドキ。
こちらは普通のショウリョウバッタモドキ。

 そしてピンクとか、桃色とかいう色自体に、女性的な甘い幸福感のイメージがある。ピンクのバッタを見つけたら、大人でも大喜びしていいのだ。そんな大人(昆虫記者を含む)を見かけたら、寛容な心で温かく見守ってほしい。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

天野和利の最近の記事