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強豪SR渋谷に連勝した裏で大阪エヴェッサの窮地を救った現役大学生とベテラン外国人

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
サンロッカーズ戦で鮮烈プロデビューを飾った中村浩陸選手(中央・筆者撮影)

【強豪SR渋谷に連勝し地区首位タイを死守】

 ここまで琉球ゴールデンキングスとともに西地区首位を走る大阪エヴェッサが、前節で東地区の強豪サンロッカーズ渋谷を地元大阪で迎え撃ち、第1戦を87対76、第2戦を98対94と連勝に成功し、地区首位タイの座を死守している。

 これまでエヴェッサの対サンロッカーズ通算成績は1勝7敗とまったく歯が立たない状態で、1勝したのも2016年12月11日のこと。実に3年ぶりの勝利だった。今回の連勝は、改めて今シーズンのエヴェッサのチーム力を示す結果となった。

 しかも今シーズンのサンロッカーズは、試合全40分間でフルコートディフェンスをしかけ、相手チームに常にプレッシャーをかけ続ける強力ディフェンスで勝ち星を積み重ねてきたが、そんなサンロッカーズの伊佐勉HCでさえも、以下のように今シーズンのエヴェッサを評価している。

 「昨日(第1戦)の負けは(チームが)やるべきスタンダードレベルがすごく低くて、僕の中では受け入れがたかったんですけど、今日(第2戦)の負けに関しては、選手はしっかりやるべきことをやってくれたし、今日は納得いく負けといってしまうと言葉選びが合っているか分かりませんけど、選手が引き続き自信をなくさないようにやっていきたいと思います。

 (エヴェッサは)この2日間まったくシュートが落ちなかったイメージがあります。ディフェンスがそこまで悪いかというわけではなかったんですけど、シュートに関してはよく切れられたという印象はありますけど、やっぱりファーストブレイクポイントをやられているので、そこは修正しないといけないですし、1つの負けの原因になっているのは明らかです。

 そういった意味で大阪さんは走るということを徹底されていて、さすが西の1位だなと思いました」

【連勝の裏で故障者続出の危機的状況を救った2選手】

 だがエヴェッサはチームにとって歴史的な連勝を飾った裏で、大きな代償を支払ってもいる。第2戦でショーン・オマラ選手と伊藤達哉選手が立て続けに負傷し、途中退場を余儀なくされているのだ。

 すでにサンロッカーズ戦を迎える前に、リチャード・ヘンドリックス選手と合田怜選手が戦線離脱していた。そんな状況下で彼らと同じポジションのオマラ選手と伊藤選手が途中退場していったのだから、天日謙作HCにとっては泣きっ面に蜂ともいえる状態だった。

 それでもサンロッカーズに連勝できたのは、窮地を救った2人の選手が登場したからだ。2試合で計65得点を叩き出したベテランのジョシュ・ハレルソン選手と、長期離脱を余儀なくされた合田選手の穴埋めとして特別指定選手枠で獲得した現役大学生の中村浩陸選手だ。

サンロッカーズ戦2試合で65得点を記録したジョシュ・ハレルソン選手(中央・筆者撮影)
サンロッカーズ戦2試合で65得点を記録したジョシュ・ハレルソン選手(中央・筆者撮影)

【チーム合流後1週間で2試合通じて出場時間が52分超え】

 特に圧巻だったのが中村選手だった。チームに合流してわずか1週間しか経っていないのに、いきなりプロデビューし、第1戦では24分44秒の出場で、6得点、3アシストを記録。第2戦では伊藤選手の負傷もありさらに出場時間を延ばし27分27秒の出場で、11得点、1アシスト、5スティールを記録。早くもチーム主力級の活躍をみせたのが光った。

 天日HCは中村選手の期待以上の活躍に、「浮かれたとことか動じることもなく、ちゃんと頭を使ってボール運びもやってくれているし、プレーも流しているし、これから長いキャリアが始まりますけど、今日は二重丸です」と大絶賛している。

 当の中村選手本人も気負ったところはまるでなく、大物ぶりをのぞかせている。サンロッカーズの強力ディフェンスを「想定内」とした上で、以下のようにプロデビューを振り返っている。

 「最初はすごく緊張したんですけど、やっていくうちに雰囲気とかに慣れていって、最後は勝利に貢献できたのでいいかたちで終われたなと思います。

 1プレー目、2プレー目くらいが終わった頃から相手のディフェンスのハードさとかにだんだん慣れていって、序盤で慣れました。

 ジョシュとプレーしたのは今日が初めてでした。これからチームを理解していったりだとか、個人の特長をしっかり理解していくのが大切だなと思います」

【さらに2選手を補強し主力選手の復帰を待つ】

 とはいえエヴェッサが厳しいチーム状態にあるのは間違いない。伊藤選手は深刻な負傷ではなかったものの、オマラ選手は右第5中手骨骨折で復帰まで約2ヶ月間を要する見込みで、チームはインジュアリーリスト登録を発表している。

 それに伴いエヴェッサは、カイロ・バローン選手と今村拓夢選手(特別指定選手枠)の獲得を発表し、当面は主力選手たちが復帰するまで新戦力を加えて凌いでいく覚悟だ。

 今後もチームを牽引していかねばならないハレルソン選手は、以下のように話している。

 「今シーズンは負傷を抱えてのプレーをしていたが、ようやく状態が上がってきている。やはり健康な状態でプレーできるのは大きな違いだ。自分が心地いいスポットを見つけ、そこからしっかりシュートを打つようにしている。

 今後は自分とアイラ(ブラウン選手)への比重が大きくなるだろう。だが最近は日本人選手も活躍してくれている。チームとしてしっかりディフェンスしながら、自分とアイラを中心にうまくボールを回しながら、これからも日本人選手たちも引き続き活躍を期待している」

 果たしてエヴェッサは、厳しい局面をどう乗り切っていくのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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