まるでSFバイク!あらゆる情報をスクリーンに投影するシステムをサムスンが開発
■近未来を感じさせるライダーアイテムの発表
韓国の大手家電メーカーのSAMSUNG(サムスン)が、バイクのウインドシールドに各種情報をディスプレイする新たなシステム、「SMART WINDSHIELD」(スマート・ウインドシールド)のプロトタイプを発表し話題になっている。
「SMART WINDSHIELD」はバイクのウインドスクリーンと一体化した装置で、スマートフォンとWifiによって接続することで、各種情報をディスプレイに映し出す仕組みになっている。動画などを見る限り、スクリーンに直接投影するのではなく、透明のダッシュボードのような専用ディスプレイが組み込まれているようだ。
動画ではヤマハ・トリシティをベースにしたプロトタイプとして登場しているが、簡単にウインドシールドとスマホをWifiで接続している場面から始まり、走行中の着信に対しては相手にSMSで定型文を自動的に送ったり、GPSを活用した通常のナビ機能が表示される様子なども描かれている。
将来的には「ウインドシールド自体」にこの機能を持たせることで、汎用性を高めることも視野に入れた開発が進められているという。
また、発売時期など詳細は未定だが、ホンダ、ヤマハ、BMWの3社で進めている2輪版の「協調型高度道路交通システム(C-ITS)」とも連動して、交通情報などを表示するディスプレイとしても活用が期待されているようだ。
現在もスマホとインカムを連動させて、通話や音声ナビや音楽を楽しむといった活用法は一般的になりつつある。また、一部の高級輸入モデルなどでは、バイク自体にブルートゥース機能を搭載することで、スマホ経由で電話の着信やSMSの受信内容をメーターディスプレイに表示する機能を持たせているモデルもある。また、ヘルメットのシールドに情報を映し出す未来型ヘルメットが発売され最近も話題になった。
■視点の移動量が多いライダーへの「リスク改善の発想」
バイクで走行しながら通話したりナビ情報を得たりといった情報収集ができるという意味では、従来の技術と大差ないようでもあるが、ただ今回サムスンが開発したシステムでは、バイクと一体化したウインドスクリーンに大画面で投影できる点が新しいと言える。
通常、バイクの車体に搭載されるメーター類は画面も小さく、バイクという乗り物の構造上どうしても視点の移動量が多くなりがちだ。頻繁に視点を移動すれば、当然そこに伴うリスクも大きくなる。これを改善するために、一部のクルマなどではフロントガラスにナビ情報などを表示するヘッドアップディスプレイなども実用化されているが、これに近い発想だろう。
■思考や動作のキャパシティとの兼ね合い
ただし、ヘッドアップディスプレイにも欠点はある。それは人間の問題だ。運転操作に限らずだが、人間が一度にできる思考や動作のキャパシティには限度があり、これを超えると極端に情報処理が遅くなったり、ミスを犯しやすくなることが知られている。
いくら大きな画面で分かりやすく表示され、視点移動量も少ないからといって、情報の洪水の中で集中して運転できるとは思えない。つまり事故の危険が潜んでいることにもなりかねない。
発想は素晴らしいし、バイクがネットとつながり、スマート化されることで得られるメリットや可能性は無限大だと思うが、安全面での検証は必須。まずはこうした不安材料を払拭できるアイデアや技術的ブレークスルーが求められると思う。