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北朝鮮の無人機、韓国侵入…撃墜作戦中の韓国軍機が墜落

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
2017年、韓国で発見された北朝鮮の無人機(韓国軍提供)

 韓国軍合同参謀本部は26日、北朝鮮の無人機(ドローン)数機が軍事境界線を越えて韓国領空を侵犯し、民間地域の上空にまで侵入したと発表した。軍当局は撃墜を試みたが、成功したかどうかは今のところ不明。

 北朝鮮の無人機が韓国の領空を侵犯するのは2017年6月以来、5年6ヶ月ぶりとなる。

 合同参謀本部によると、軍のレーダーが同日午前10時25分頃、京畿道一帯で北朝鮮の無人機と推定される未詳の航跡を複数補足。軍が撃墜作戦に乗り出したことを受けて、午後に1時間ほど仁川国際空港と金浦空港で民間機の離陸が禁止された。

 韓国軍は無人機が軍事境界線を越える前に補足し、警告放送と警告射撃を行ったという。その後、空軍の航空機と攻撃ヘリコプターが撃墜作戦のため離陸。同日午前11時39分、空軍の戦術統制機KA-1が墜落しているが、動機も北朝鮮の無人機対応作戦に投入されていたという。乗員2名は脱出して無事だった。

(参考記事:金正恩、期待のドローン部隊指揮官「いけにえ」で処刑

 合同参謀本部によると、無人機はレーダー上に現れたり消えたりを繰り返し、一部は将兵の肉眼で確認された。また無人機は複数で、それぞれ異なる航跡を辿ったという。

 無人機の大きさは、2014年に京畿道の坡州などで墜落・発見された全長約1.5メートル、幅約2メートル、重量約15キロのものに近いという。

 一方、北朝鮮国内にいる韓国デイリーNKの内部情報筋は昨年4月、北朝鮮軍当局が同月中旬、偵察用と攻撃用の「超小型無人機」の実験に成功したと伝えている。金正恩総書記は同年1月の朝鮮労働党第8回大会で、精密偵察用の無人偵察機開発を強化する方針を示しており、実験はこれに沿ったものと見られる。

 情報筋によれば、実験は同月10~12日、平安北道(ピョンアンブクト)亀城(クソン)の芳峴洞(パンヒョンドン)で、軍需工業部と国防科学院、国防省兵器審査局などが合同で行った。実験の内容は詳らかでないが、党中央委員会に対して「最終的な戦術・技術的諸減の安定化試験に成功」したと報告されたという。

 また、これに対して軍上層部からは「人民軍を最精鋭化、強軍化するためのもうひとつの礎石が築かれた」と評価する武力総司令官(金正恩氏)名義の感謝のメッセージが伝えられたという。

 金正恩氏は1月の党大会で、「各種の電子兵器、無人打撃装備と偵察探知手段、軍事偵察衛星の設計を完成した」と明らかにするとともに、「近いうちに軍事偵察衛星を運用して偵察情報収集能力を確保し、500キロ前方縦深まで精密偵察できる無人偵察機をはじめとする偵察手段を開発するための最重要研究活動を本格的に推し進める」と表明した。

 さらに、「武装装備の知能化、精密化、無人化、高性能化、軽量化の実現を軍需産業の中核的な目標に定め、研究・開発活動をこれに志向させなければならない」と強調した。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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