ニュースメディアでトップ継続なものの減少続く米新聞広告費
減少続ける米新聞広告費、プラスはオンラインのみだが…
インターネットの浸透に連れてメディア、特にニュースメディアのパワーバランスは大きな変貌を遂げつつある。その流れが日本以上に進んでいるアメリカでは、新聞の動向が大いに注目を集めている。同国の新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」発表による公開値によれば、2013年における同国の新聞にける広告収入は前年比でマイナス7.1%。カテゴリ別ではオンラインのみがプラスで、残りはすべてマイナス。特に小さな広告を多数集めて情報集合体として見せるタイプの広告「クラシファイド広告(Classified)」の減少ぶりが著しい。インターネットに容易に代替され、メリットが見いだせなくなりつつあるのが原因。
「リーマンショック」の影響で大きく落ち込んだ2009年、その後のリバウンド(反動)が見られた日本の経済指標同様に、アメリカの新聞業界の広告収入もまた、下落した2009年と比べ、2010年はリバウンドが確認できる。ただし「オンライン広告」がプラスに転じた以外は「前年と比べて減少幅が縮小した」に留まり、金額面では落ち込んでいる(前年比でマイナス)。さらに2011年以降はそのリバウンド効果も無くなり、「オンライン広告」は成長率を鈍化させ、紙媒体はマイナス圏のままほぼ横ばいを維持。また「ナショナル広告」(全国区の広告)は減少幅を拡大しつつある。
額面上は唯一成長を続け前年比プラスを維持している「オンライン広告」にわずかな期待をかけたいところだが、日本の広告業界同様、額面そのものはまだ小さい。そのため、他の広告区分の不調分は補えない。
2007年、インターネット(によるニュース展開)が本格的に浸透しはじめた時期から新聞広告費は激減。ピーク時の2005年と比較して2013年ではわずか4割強でしかない。とりわけ緑の部分、「クラシファイド広告」の減少ぶりが半端でない(2005年比で1/4足らず)のも分かる。
直近2回の不況時において具体的に広告費が落ち込んだ「凹み」が確認できる。そしてその「凹み」も広告費全体から見れば大きな減少では無かった。そしてそれゆえに、2007年以降の金融危機+メディアの変化を受けての広告費減少が、天変地異レベルのものであるのも分かる。
それでもなおニュースメディアでは一番。だが…
新聞の売上は主に広告費と新聞そのものの販売で構成される。広告費は上記の通りさんさんたるありさまだが、販売売上は意外にも健闘している。
とはいえ新聞のメディア力が落ちていることは否めない。広告費の減退は広告効果の減退(絶対的・相対的)によるところが大きいからだ。
しかしながらニュースを伝える媒体として、アメリカにおいて新聞が今なお巨大なメディアであることに違いは無い。次のグラフは主要ニュース媒体の総売り上げを示したものだが、新聞が言葉通りケタ違いの売上を示している。
新聞の386億ドルという値は上記の販売・広告の額面合計と一致しないが、イベントや流通などの多種多様な補助的収入、ダイレクトマーケティングによる収入(チラシなど)を含めて、この額になる。
新聞以外でもっとも大きい売り上げを上げているのは地方テレビ。しかしそれでも89億ドル。ネットワークテレビ、つまり全国規模のニュースはわずか21億ドルでしかない。そして新聞やニュース関連の話では常に救世主的に扱われ、成長率では群を抜くデジタル系は8億ドル。
日本のニュースメディアでも同様に、新規参入型のメディア、具体的にはインターネットなどによる独自メディアは、購読者数と共に影響力を増しつつある。しかし金銭面、ビジネスという点では今なお小さな規模でしかない。そして従来型メディアの代表格たる新聞は、少なくともビジネスの観点では巨大な影響力を有している。この巨大な力を持つ新聞が急速にその影響力を縮小し、売り上げを落とす一方、実額面では新メディアのみでは到底補完しきれず、ニュースメディアそのものが規模を縮めているのが実情である。
もちろんニュースの需要そのものが減ったわけでは無い。売上が落ちているのに過ぎない。見方を変えればニュースそのものが「売上を得難い」対象になりつつあることを意味する。それゆえに、従来のスタイルを踏襲し続ける旧来メディアは採算が取れにくくなり、経営的な面で窮地に追いやられるという次第である。
メディア関連の変化は、日本と比較してアメリカが先行することが多い。日本のメディア関連動向も、往々にしてアメリカを追いかける傾向がある。文化や社会習慣、決まりごとの違いから、一様に同じ道を歩むことはないが、大いに参考になる。今後アメリカのニュースメディア、特に新聞がどのようにして窮地を切り抜けていくのか、その手法を注意深く見守りたいところだ。
■関連記事: