「自由だけど孤独感あるなっしー」:ふなっしーの言葉から考える孤独感の心理学
■ふなっしー、阿川佐和子さんの「聞く力」に、ホンネぽろり
これだけの超売れっ子ですが、全部一人だそうです。ふなっしーの正体を知っている人も、ごく少数でしょうし。「孤独感」を感じることもあるでしょう。
ゆるキャラの中に入っている人から聞いたのですが、イベント会場等では大部屋の控え室で、他のゆるキャラさんと知り合いになったりするそうです。でも、「ふなっしー」とか「くまモン」といった大物は別室なので、同じイベントに参加しても知り合うチャンスはなかったそうです。
■有名人・表現者の孤独感
有名人は、みんなに顔や名前を知られ、応援してくれるファンもたくさんいるでしょう。華やかな場に出ることもあるでしょう。でも、だからこそ孤独感を感じることもあるでしょう。「孤独は山ではなく街にある」(三木清)ですね。にぎやかで人が多いほど、強く感じる孤独もあるでしょう。
大勢の人に知られているのに、心が通じあう親友や親族は限られている。ましてや芸能活動、ゆるキャラとしての悩みや喜びを共有できる人はもっと限られている。マネージャーも、相方もいない。孤独を強く感じることもあるでしょう。
芸能人も、芸術家も、何かを表現する人は、孤独だと思います。いくら表現しても、結局誰も分かってくれないと、感じることもあるかもしれません。それでも、いやだからこそ、表現し続けなくてはならないのですが。
■良い孤独・悪い孤独
人はみな孤独感を持っています。特に青年たちにとっては、孤独は日常的に感じる基本的な生活感情です。
孤独感が、疎外感や劣等感、自己嫌悪感と一緒になることもあります。これは、悪い孤独感ですね。孤独な心の隙間を埋めようと考えすぎて、奇妙なことを始めてしまう人もいます。
孤独感をごまかすために、ギャンブルに走ったり酒浸りの生活になったり、ひたすら目立つことを考えたりすれば、うっかりすれば人生の破滅です。
人との交流、コミュニケーションの不足が孤独感を生み、それが抑うつ感を高めることになれば、気持ちはますます沈みます。この状態がひどくなれば、孤独感を感じているのに、人に近づくことができなくなり、さらに孤独になっていきます。
孤独感に心が押しつぶされれば、自殺への思いさえわいてくるでしょう。
でも、孤独感にも良い点があります。寂しさがあるからこそ、人と仲良くなろうとするでしょう。友人やパートナーを大切にする気持ちもわいてくるでしょうし、コミュニティーを大切にする思いも出てくるでしょう。
健康的な普通の孤独感なら、行動へのエネルギーになることもあります。人間は一人だけではダメだと感じて、仕事や趣味やボランティアを熱心に行うこともあります。健康的な活動が、健康な心をつくるでしょう。
友達がいない、独りぼっちだと悩むなら、こちらから誰かの良い友達になりましょう。
良い孤独感は、自律性にもつながります。世界で初めて単独のヨットで太平洋横断をした堀江謙一は、一人だったけど人々とのつながりを感じていて寂しくはなかったと語っています(『太平洋ひとりぼっち』)。一人で全部行いますから孤独ではあっても、悪い意味の孤独感ではなく、強い自律心が表れています。
みんなとつながってる安心感があり、同時に自分のヨットは自分で操舵して自分で判断して海を進む。風はふくけれど、翻弄されるのではなく、風を利用して前に行く。それが、ふなっしーの今の活動であり、それが人生なのかもしれません。
■孤独感と共に
孤独感が辛過ぎて、いつも誰かとつながっていないと不安でしょうがないというのも、困った状況です。もう人間関係で傷つきたくないから孤独でもガマンするというのも、楽しくありません。
孤独感は、なくなれば良いものではありません。いつも、みんなと仲良しこよしが良いわけでもありません。仲良くもできる、ライバルと競争することもできる、そして一人で活動することもできることが大切です。
仲良くもできるるし、一人でも大丈夫と思えるといいですね。
ふなっしーは、今とても充実感があるでしょう。だから「自分は孤独だ」「孤独な戦いだ」というのも、自分でちょっとかっこいいと感じられるのでしょう。
ただし、心身が疲れ果てた時や、トラブルが起きたとき、かっこいい孤独感が病的な孤独感にならないようにしなくてはなりません。本当に困ったときに、この人になら話せる人の存在は必要でしょう。
それはもちろん、ふなっしーだけではありません。孤独な戦いをしている私たちみんなにとって、同じでしょう。私たちは、一人で生まれ一人で死んでいく。みんな孤独です。だからこそ、人とのつながりを大切にしたいと思います。