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仮想通貨ハッキング67億円 テックビューロ代表 朝山貴生氏、人生最大のピンチ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

テックビューロは9月20日、同社が運営する仮想通貨取引所「Zaif」に不正アクセスが発生し、ビットコインなど約67億円相当の仮想通貨が流出したと発表。あわせて、14日ごろから入出金など一部のサービスが停止していることを公表した。約67億円のうち、テックビューロ固有の資産が約22億円相当、ユーザーの預かり資産は約45億円相当。フィスコのグループ企業であるフィスコデジタルアセットグループの子会社を通じて、50億円の金融支援、テックビューロ株式の過半数を取得する資本提携、過半数以上の取締役および監査役の派遣を検討するための基本契約を締結した。カイカとの間でも、セキュリティ向上のための技術提供を内容とする基本契約を締結している。テックビューロの現経営陣については、本件対応後、フィスコグループの経営陣に引き継ぎ、経営責任として役員を退任する方針としている。

出典:「Zaif」、不正アクセスで約67億円相当の仮想通貨が流出--入出金を一時停止

仮想通貨のハッキング事件がまた発生してしまった。「Zaif」は、『Zaifなら安心・安全!万全のセキュリティ』をキャッチコピーにしていたのにそのエビデンスが絵に書いた餅となってしまった…。

しかも、2018年9月14日に発生している『事故』の報告が9月20日と6日以上も経過してからの発表となった。

平成30年9月14日頃以降、弊社サービスにおいて、仮想通貨の入出金等の一部のサービスが稼働しておらず、お客様には大変なご迷惑をおかけしております。

弊社における調査の結果、入出金用ホットウォレットの一部が外部からの不正アクセスによりハッキング被害を受け、弊社が管理する仮想通貨のうちの一部が外部に不正流出させられたことが判明しました。

出典:仮想通貨の入出金停止に関するご報告、及び弊社対応について テックビューロ株式会社

ベンチャーが畑を耕し、焦げ付いたら大手が刈り取りをする構図

ユーザー分の流出したビットコインの預かり資産は、フィスコからの50億円の金融支援で補填される方向へとおそらく進みそうだ。しかし、テックビューロそのものも、フィスコ傘下入りすることになりそうだ。466億円を流出したコインチェック社が36億円でマネックス証券傘下に買収された形と、同じ道をまるでトレースしているようだ。

仮想通貨の取引所は、全世界で共通の審査基準があるわけでもなく、日本においても金融に関する法律を満たす限り、認可され、問題があれば行政処分が適用される。とはいえ、金融の法律は『仮想通貨』を想定して作られてはいない。また、『仮想通貨取引所』というサービスも、江戸時代のベンチャーであった『両替商』のような生まれたのビジネスだ。なので中途半端なあとから監督庁として任され『みなし業者』なようなくくりを作ってきた経緯がある。

デジタルデータは自由になりたがる

そもそも、仮想通貨は変動の大きさから投資から投機的な市場を形成し、オウンリスクとして参入しているのだから、不正ハッキングという『ピンチカード』が、登場することも織り込まなければいけないビジネスだ。セキュリティを強固にすればするほど、使い勝手は悪くなるというトレードオフとの間で、どこまで使い勝手を高め、セキュリティも高めるという技が要求される。金庫番やガードマン、装甲車などで希少な現金をガードするのではなく、デジタル化されたデータを一箇所にとどめておき管理することの難しさを物語っている。しかし、そのリスク以上に送金のメリットがあるので仮想通貨は重宝されているのだ。

テックビューロ、朝山貴生代表の長年の夢 COMSA 

1999年、筆者は、西海岸のシリコンバレー在住しながら、現地の取材活動にあたっていた。その頃にサンノゼのインキュベート施設IBI(International Business Incubator)で、ビジネスホスティングサービスのCTOをやっている朝山貴生氏と初めて会った。ギラギラとした目を持つ、長髪のロン毛の若者に日本のベンチャーとは、まったく違うニオイを感じていた。それから数ヶ月後、朝山氏は独立し、サンタクララのどでかい倉庫を借りて新たなビジネスを始めたという。会社名は4D Matrix, Inc.という。さっそく、同じ日本人として興味を持ち取材にかけつけた。

朝山社長は、『WEB SHOW(商)』という、ソリューションを開発しているという。一般な起業がWEBで商いをする時のすべてをパッケージで面倒を見るというサービスだという。ビジネスモデルは当時でも安易に想像できたが、実際にはどのようなものが作れるのか?ということだ。オフィスで紹介されたチームの顔ぶれがとてもユニークだった。楽天市場のシステムを作ったという日本人に、マーケティングを担当するという米国人、デザインを担当するという女装しているゲイの白人。それにロンゲの朝山社長。当時からかなりぶっ飛んだ印象で、どうやって資金調達をしているのかが見えない謎の人物だった。自宅では、長髪をゆらしながら、ギターを超速でスイープし悦に入る…。チームみんなで業務中に『オースティン・パワーズ』の映画を見にいく…。筆者の英語力では、英語での笑いについていけないが、朝山社長は見事な理解力でゲラゲラ笑っている。シリコンバレーでIPOを目指すという氏の眼差しに筆者も期待した。

その後、『WEB SHOW』は日本向け円建てクレジットカード決済サービス 『決済ドットコム』へと変わったようだ。その後、あまり話に聞かなくなったが、ICO向け総合サービスCOMSAコムサやブロックチェーン技術mijinを展開する株式会社テックビューロを見た時に、朝山社長の名前と遭遇した。常に、最先端のインターネット向けサービスを目指している氏の行動力と先見性は、相当に鋭い。

NEM財団の評議員メンバーにも名前を連ねている。

https://nem.io/about/foundation/

nem財団の評議員メンバー 出典:NEM財団
nem財団の評議員メンバー 出典:NEM財団

当時のギラギラした眼の印象はおだやかになってはいるが、日本人がインターネット一本で世界で活躍していく姿を見届けたい筆者は、今回の不正ハッキングで、ブロックチェーン技術によるCOMSAの火を消して消さないでほしいと願うばかりだ。

今回の不正ハッキングを受けながらも、テックビューロからの会社分割によって、COMSA事業は、テックビューロホールディングス株式会社の運営となっている。しかし、今後の方針を検討中だという。

インターネット界風雲児の朝山貴生の長年の夢である集大成の『COMSA』の成功を祈るばかりだ。

https://comsa.io/ja/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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