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ビール会社の人に聞いてみたい 野球の日本シリーズ優勝のビールかけについて 飲まないから食品ロスなのか

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「食品ロス」関連のツイートを見ていたら、こんなツイートがあった。

「SMBC日本シリーズ2018」でソフトバンクが2年連続9度目の日本一になったとのこと。ツイートした方のプロフィールには「言いたい放題の言いぱなし」とある。

筆者の父(故人)は元甲子園球児で、王貞治さんと対戦したことを自慢にしていた。家には王さんのサイン色紙が飾られていた。

が、筆者は野球に興味がない。「セ」と「パ」があるのは知っているが、それぞれどのチームが属しているのか知らない。近所の百貨店で「優勝セール」があって、初めて対戦が行われているのを知るくらいだ。このツイートで初めて対戦が行われているのを知った。10月27日から11月3日まで、香川県高松市、京都府、宮城県の白石蔵王、名古屋と、講演などで出歩いていた。

だが、食品ロス問題に携わっている人間は、年に一回のビールかけのビールまで問題にしなければならないのだろうか。

飲料の飲み残しは披露宴や宴会で多い

農林水産省の、平成27年度食品ロス統計調査(外食調査)によれば、外食での食べ残しは、食堂・レストランに比べて、結婚披露宴と宴会で多い。

外食での食べ残しの割合(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)
外食での食べ残しの割合(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)

結婚披露宴での食べ残し・飲み残しで最も多いのは「飲料類」で205.3g

どのようなものが食べ残しや飲み残しになっているかを見てみると、結婚披露宴の場合、重量ベースで最も多いのが飲料類で、205.3g。おそらくビールの飲み残しはここに含まれるだろう。

結婚披露宴での食べ残し・飲み残し(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)
結婚披露宴での食べ残し・飲み残し(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)

宴会での食べ残し・飲み残しで最も多いのは「飲料類」で183.2g

同じように見てみると、宴会の場合も「飲料類」が重量ベースで最も多く、183.2gとなっている。

宴会での食べ残し・飲み残し(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)
宴会での食べ残し・飲み残し(平成27年度 農林水産省 食品ロス統計調査・外食調査)

国も宴会での食べ残しゼロ運動に取り組む

このように、外食の中でも、飲食店やレストランに比べて、宴会や披露宴などで食品ロスが多いデータが出ている。国(環境省・農林水産省)も、このデータに従って、宴会での食べ残しを少なくするための運動「30・10(さんまるいちまる)」に取り組んでいる。

筆者も、環境省のページから「30・10」の普及啓発ツールをダウンロードして、飲み会の時にいつもテーブルに置いている。これだけのことでも、参加者は、食べ残しを出さないように意識するようになる。

環境省 30・10運動普及啓発用三角柱POP ダウンロードページ

環境配慮のキーワード「3R」の優先順位とは

環境配慮のキーワード「3R(スリーアール)」の優先順位は、最優先が「Reduce(リデュース:廃棄物を出さない)」。

次が「Reuse(リユース:再利用)」。

3番目が「Recycle(リサイクル:再生利用)」。

びん再使用ネットワークの公式サイトでは、京都大学名誉教授の高月紘(ひろし)先生が、わかりやすいイラストを描いていらっしゃる。

3Rの優先順位(びん再使用ネットワーク公式サイトより、高月紘先生のイラスト)
3Rの優先順位(びん再使用ネットワーク公式サイトより、高月紘先生のイラスト)

命の持ち時間は少ない 限られた時間で優先順位をつけて取り組んでいく

3Rの優先順位の上から取り組んでいくのと同様、限られた持ち時間で、何から手をつけるかといえば、優先順位の高い方からだろう。筆者にとって、それは、日本の食品ロスの大きな割合を占める部分(家庭も事業者も両方)だ。ビールで言えば、全国で発生している宴会や披露宴での飲み残しだろう。

食品ロス問題に取り組んでいるからといって、日本で発生している食品ロスを、隅から隅まで100%、一つの取りこぼしもなく言及するなんて不可能だ。優先順位をつけて、重要なところ、大部分を占めているところ、マスメディアが「クライアント(取引先)だから」と言って追及しないところを追及していくしかない。

年に一回(か数回)のビールかけについて、当のビールを作っている大手ビール会社の方は、どう思っているのだろう。お問い合わせ窓口を通して問い合わせをすれば、社としての答えは返ってくるだろう。そうではなく、工場の方など、現場の人に伺ってみたい。ビールかけの映像を見て、自社のビールが消費されているのを見て、日頃、製造や開発に苦労している人は、どう感じているのだろう。買ってくれるなら後はどうなってもいいのか。それとも、飲むために作っているのだから、ちゃんと味わって飲んで消費して欲しいのか。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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