避難訓練の警報音が鳴り響く中、竜王戦七番勝負第5局▲羽生善治九段-△豊島将之竜王戦2日目開始
12月6日。神奈川県箱根町・ホテル花月園において第33期竜王戦七番勝負第5局▲羽生善治九段(50歳)-△豊島将之竜王(30歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。
8時48分に羽生九段、49分に豊島竜王が対局室に姿を見せます。
両者ともに朝は後ろ髪が跳ねていることがしばしばあり、本日は羽生九段の方が、その跳ね方が大きいようにも見えます。
40枚の駒が初期位置に並べられたあと、立会人の中村修九段が声を発しました。
「それでは昨日の指し手を再現していただきます」
記録係の木村友亮三段が前日の棋譜を読み上げます。
「先手、羽生九段▲7六歩。後手、豊島竜王△8四歩。・・・」
戦型は相矢倉。1日目の早い段階から、緊迫した序中盤となりました。
44手目、豊島竜王が△8五飛と浮いたところで指し掛け。羽生九段が45手目を封じました。
佐々木「封じ手予想は▲3四歩ですかね。みんな▲6六銀と言うんで(笑)」
ABEMA解説の佐々木大地五段はそう語っていました。
中村九段がはさみで2通の封筒を開き、封じ手用紙に記されている次の手を読み上げます。
「封じ手は▲6六銀です」
その声を聞いたあと、羽生九段が7七の銀を6六に押し上げました。今期竜王戦はここまで5局、封じ手はいずれも大方の予想通りとなりました。
そのあと対局室は静寂に包まれる・・・というのが定跡ですが、本局ではアクシデント発生。警報音が対局室に鳴り響きました。羽生九段は少し驚いた表情を見せます。
佐々木「これ、豊島竜王に風が吹いていますか?」
佐々木五段がそう言ったのは、過去のタイトル戦決着局、豊島現竜王の対局中にしばしばアクシデントが起こった故事を差しています。
2020年叡王戦七番勝負第9局(永瀬拓矢叡王-豊島将之挑戦者)では、時間を表示するタブレットが消えました。
これらアクシデントがあったタイトル戦決着局を、豊島現竜王はすべて制しています。
また関西将棋会館の対局ではこんなこともありました。
こちらも豊島勝ちでした。
本局、アラーム音は地域の避難訓練のため、鳴らされたものだったようです。それがいったん鳴り止んだあとで、両対局者は一礼。2日目の対局が始まりました。そしてもう一度音が鳴り、そのあとでようやく、対局室に静寂が訪れました。
封じ手が示されたあとは、相手もすぐに指すことが多くあります。豊島竜王も当然、羽生九段の銀上がりは想定していたでしょう。しかしすぐに次の手を指しませんでした。
大山康晴15世名人(1923-92)はタイトル戦で旅館やホテルを訪れた際には、すぐに非常口を確認したそうです。そしてもし荷物などが置かれてふさがっていたり、鍵がかけられて閉まっていた際などには、宿の人を叱っていたのだとか。そんな、いかにも稀代の受けの達人らしいエピソードが残されています。
考えること1時間4分。豊島竜王は慎重に読み進めたのでしょう。そして銀取りに歩を打ちます。勘定としては、豊島竜王が1歩を損して、豊島玉近くの3筋で銀交換がおこなわれることになりました。
豊島竜王は手にした銀をすぐに羽生玉近く、8筋に打ち込みました。いよいよ激しい攻め合いとなりそうです。
時刻は11時を過ぎました。現在は豊島竜王が52手目を考慮中。形勢、消費時間ともにいい勝負です。
竜王戦2日目は昼食休憩をはさみ、夕食休憩はなく、終局まで指し続けられます。
本日は現在、収録済みのNHK杯3回戦、渡辺明名人-羽生善治九段戦も放映されています。