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厳格なノルウェー移民大臣 支持率が41%と人気者。右翼ポピュリスト政党はこの国で成功したのか?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
進歩党の全国総会でスピーチをする移民大臣 Photo:Asaki Abumi

地元の全国紙ダーグブラーデ(9月12日付)によると、シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣が、新設された同職に就任以降、安定した支持率を誇っていることが判明した。大臣は、首相が率いる保守党と連立政権を組む、右翼ポピュリスト政党・進歩党出身。

進歩党は、国会に籍を置く政党の中でも、移民や難民の受け入れに最も厳しい。2013年の国政選挙で、初めて与党となった。昨年の難民危機以降、「欧州ではポピュリストの波が」、といわれてきているが、ノルウェーでは、その小さな波は早い段階できていた。

Ipsosによる調査結果では、41%が「大臣として良い仕事をしている」と回答し、「悪い仕事をしている」と答えたのは26%だった。同じ調査が行われた2月と比較すると、その人気は10%上昇している。また、移民対応においては、59%が良い仕事をしていると答えた。

子どもとの時間を優先するために、政界引退を示唆

親がどう報道されているか、子どもが理解する時がくる Photo:Abumi
親がどう報道されているか、子どもが理解する時がくる Photo:Abumi

政治家が長期の夏休みをとる7月、リストハウグ大臣は、政界、もしくは大臣職から引退する意向を検討していることを地元のVG紙に伝え、大きなニュースとなった。その理由は、仕事が多忙すぎて、子どもを幼稚園に迎えにいくなど、家庭での仕事が優先できなくなってきているからだ。「主人に、もっと子どもと時間を過ごすべきだと言われた」と話す。

また、過激な発言が多い大臣は、インターネット上で、根強い支持者がいる一方、毛嫌いする人も数多い。筆者はこの夏、複数の音楽祭を取材したが、特にポップ音楽界では、移民大臣をコンサート会場で名指しで批判するアーティストが多いことに驚いた。

「マスコミやSNSで、母親がどう書かれているか、子どもがそのことを理解する年齢になった時が試練となる」、と、一人の母親としてリストハウグ大臣は語る。男女ともに、フルタイムの政治家として、親としての役割を両立することの難しさを訴える政治家は他にもいる。

今年の進歩党の全国総会でも、移民大臣の子どもの姿が会場にはあった。父親が世話をしていたが、時間があるとすぐに母親のそばに駆け付けており、少しでも一緒にいようと必死のように見えた。大臣の子どもが、いじめの対象になりやすいことは、現地の報道陣も理解しているため、子どもがいるときは、誰もが前席が写る撮影を控えていた。

一方で、進歩党や移民大臣の過激な政策は、移民や難民背景の家族が一緒にいられることを困難にしているという批判がある。大臣や進歩党のこれまでの発言は、世間に「異端者恐怖」と呼ばれる、見知らぬ者に対する不信感を広め、外国人によって住みにくい社会にしているという指摘も。リストハウグ氏は「社会統合大臣」でもあるが、他者の子どものことは、どれだけ考えられているだろうか?

夏休み後、リストハウグ大臣は、来年の国政選挙に出馬することを表明した。

右翼ポピュリスト政党は、ノルウェーで成功したのか?

ユプスコース氏 Photo:Asaki Abumi
ユプスコース氏 Photo:Asaki Abumi

2017年の国政選挙に向けては、右翼・左翼政党のどちらが勝利するか、予想が非常に難しい状況となっている。毎月行われる各報道機関が発表する世論調査でも、結果は五分五分で、大差がないためだ。

8月末には、オスロ市内で「ポピュリスト政党はどのようにコミュニケーションするか?」という、研究者が集まったトークショーが開催されていた。オスロ大学の過激派・極右・ヘイトスピーチ・政治暴力センターの研究者であるアンネシュ・ユプスコース氏は、「ノルウェーで、右翼ポピュリスト政党が、本当に成功したかどうか結論がでるのは、国政選挙の結果次第」と語った。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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