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紙の新聞かニュース配信サービスか…ニュースを読んでいるテキスト系媒体の利用実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ニュースを取得するスタイルは人それぞれ。その実情は(ペイレスイメージズ/アフロ)

紙の新聞以外ではポータル提供のニュースがトップ

速報性や拡散性、画像や音声、動画などのマルチメディア性、蓄積と検索、リンクによる過去データの検証の容易さなど、インターネットはニュースを配信するのにプラスとなる特徴を多数有している。これを受けて法人の新聞社やポータルサイト、当サイトのような個人にいたるまで、多種多様な立ち位置から、インターネット上にニュース・情報が提供されている。紙媒体としての新聞と、これらインターネット上のニュース系情報サイトは、どのような利用状況にあるのだろうか。総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、その実情を探る。

今件では新聞やニュースサイトなど、ニュースを読んでいるテキスト系媒体系の利用状況を尋ねている。紙媒体の新聞以外に新聞社が提供する有料サイト(日経電子版など)、同無料サイト(YOMIURI ONLINEなど)、ポータルサイトが提供しているニュース配信サービス(Yahoo!ニュースなど)、ソーシャルメディアが提供しているニュース配信サービス(LINE NEWSなど)、さらにはキュレーションサービス(スマートニュースなど)、そしてそれらのいずれの方法でも読んでいないの選択肢を提示し、複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。

↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2016年)(複数回答)
↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2016年)(複数回答)

全体ではポータルサイト提供のニュース配信サービスの利用率がもっとも高く60.4%、次いで紙媒体の新聞が56.3%。紙媒体の新聞がトップに付かなかったのは、今調査では初めて。さらにソーシャルメディア提供のニュース配信サービスが続く。新聞各社が積極展開している新しいビジネスモデルこと、有料サイトは利用率が2.8%に留まっている。

年齢階層別に見ると、紙媒体の新聞利用率が歳を重ねるに連れて上昇していくのは、他の多数の調査結果からも容易に想像ができた通り。60代では10人に8人強が新聞を読んでいる。同時にインターネット経由のニュース利用が漸減しており、歳と共に「インターネットから紙へ」が進んでいる状況が分かる。ただしピークは媒体によって異なり、例えばポータルサイト提供のニュース配信サービスでは30代が、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスでは20代がピークとなっている。新聞社提供の無料サイトはどの年齢階層でもさほど違いは無いが、最高値をつけているのは50代。

有料無料を問わず、新聞社自身が提供するウェブ上のニュースよりも、それらを集約したポータルサイト提供のニュースやソーシャルメディア提供のニュース配信サービスの方が需要が大きく、多数の人が利用している実情は皮肉な話。他サービスと一緒にまとめて利用できることや、多種多様なニュースの集約で幅広い情報を一括して確認できるメリットが好かれているのだろう。特定の出版社の発行本のみを集めた本屋より、多種多様な出版社発刊の本を集めたごく普通の本屋の方が需要が大きいのと同じではある。

一方、ソーシャルメディアでも付加価値施策の一環として展開を始めている、ポータルサイトと同様のニュース配信サービスの利用者は20代がピークで、約6割。年齢階層別の値動きはソーシャルメディアを利用している人の数の割合にほぼ連動している。ポータルサイト提供のニュースでも一部行われているが、ソーシャルメディアを利用するのと同じ感覚で読めるよう、ダイジェストでの提供が多いため、他人との交流をするかのように目を通している人も多分にいるのだろう。要は知人とのやりとりも、ニュース媒体経由からの情報取得も、同じ情報の斜め読み的な感覚で接しているものと考えられる。

昨今では各種メディアが公式アカウントを取得し、ソーシャルメディア上でニュースのダイジェストと記事ページへの誘導を書きこむ事例が増えている。この手法は今調査の解答用紙では「新聞社自身がTwitterなどで提供するものは『新聞社提供の無料サイト』に該当」との説明がされていることから、それを加算した上でも利用者はさほど多くない実情を見るに、そのような形でのニュース取得者もまた、少数派のようである。

昨今では多様な意味で注目を集めているキュレーションサービスだが、こちらは全体で8.9%と少なめ。ただし若年層でいくぶん利用率が高く、10代から30代では新聞社提供の無料サイトを追い越すほどの利用率を示している。

同様の調査は前年も行われている。そこで前年比を算出したのが次のグラフ。

↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2016年)(複数回答)(前年比、ppt)
↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2016年)(複数回答)(前年比、ppt)

10代から50代にかけて大変な勢いで、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスの利用率が増加している。これはLINE NEWSなどのサービス提供によるところが大きい。報告書でも特記事項として「テキスト系ニュースサービスにおいて急速に存在感を増す結果」「各年代で利用率が約2~3倍と大幅に増加した」との表記があり、その特異な値動きぶりが改めて確認できる。併用するケースは多々あるためすべてがというわけではないが、下落動向を見るに、いずれも利用していなかった層と、紙媒体の新聞利用者、そして新聞社提供の無料サイト利用者が、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスにシフトした感は強い。

ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスは各報道機関や通信社が情報提供をしている。ポータルサイト提供のニュース配信サービスに向けて起きたシフトが、今度はソーシャルメディア提供のニュース配信サービスに対して生じていると見るべきだろう。

いちばん使っているのはどれだ?

これら新聞・ニュースサイトのうち、どれを一番使っているかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2016年)
↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2016年)

全体では4割近くが紙の新聞、次いで1/3強がポータルサイト提供のニュース配信サービス、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスが1割強、選択肢内ではいずれも使っていないとの回答が1割近く。これが主な状況。

年齢階層別動向では10代ではポータルサイト提供のニュース配信サービスとソーシャルメディア提供のニュース配信サービスがほぼ同率で合わせて5割強。20代以降はポータルサイト提供のニュース配信サービスのウェイトが高まり、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスは減退していく。20代から40代まではポータルサイト提供のニュース配信サービスが最高値を示すが、歳と共に紙媒体の新聞の値が増加し、50代では過半数を得て最高値となる。

トップの媒体のみを挙げると、10代はソーシャルメディア提供のニュース配信サービス、20代から40代がポータルサイト提供のニュース配信サービス、50代以降は紙媒体の新聞となる。キュレーションサービスや新聞社の有料・無料サイトは「もっとも利用している」の選択としてはほとんどゼロ、誤差範囲でしかない。

新聞社自身のニュースサイトは有料版がほとんど使われず、無料サイトも利用率は想像以上に低い。やはりまとめて一度に確認ができるポータル系サイトのサービス、そして常用しているソーシャルメディア提供のニュース配信サービスの便宜性に、多くの人が魅力を覚えているようだ。

一時期は次世代を担うサービスとして注目されたキュレーションサービスは伸びが今一つで、むしろポータルサイトやソーシャルメディア提供のサービスへの集中が目立つ。海外はともあれ日本では、その運用・配信スタイル、そして品質に少なからぬ疑問が呈されたのが原因かもしれない。

■関連記事:

シェアされやすいリンクは新聞社サイトやYahoo!ニュース

ニュースとソーシャルメディアの関係をグラフ化してみる

※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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