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妻から見た親との同居の実情をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
夫婦世帯とその親との同居。その実情は(写真:アフロ)

経済的理由をはじめ、さまざまな事情で成人し、さらには結婚しても親と同じ住居に住み続ける人は少なくない。また、一度別居をしたものの、結婚や親の健康上の事情、住居環境の変化から、再び同居をする場合もある。結婚をしている人における、親との同居に関する実情を、国立社会保障・人口問題研究所が2022年に調査を実施し、2024年4月に報告書を発表した「全国家庭動向調査」(※)の結果から確認する。

次のグラフは妻の年齢階層別にみた、親との同居割合。複数の親と同居している場合もあるので、当然複数回答となる。また今件では妻の年齢が70歳未満に限定している。

↑ 妻の年齢階層別にみた親との同居率(複数回答)(2022年)
↑ 妻の年齢階層別にみた親との同居率(複数回答)(2022年)

誰か一人でも親と同居している割合は、29歳以下の場合は7.9%だが、30代では9.3%。40代以降も年齢の積み増しとともに同居率は増加していく。当人が年を取れば当然親も同じだけ年を取るため、生活上の不安から同居した・同居を親に希望されたのかもしれない。また、介護のための同居の可能性もある。

親の具体的な立ち位置としては、妻の親よりも夫の親の方が同居率は高い傾向がある。家督の問題、居住している住居の持ち主の事情、夫婦間の立ち位置などが理由として考えられる。ただし29歳以下に限れば、妻の親の方が高い値となっているのは興味深い。

なお親の男女別では妻の親でも夫の親でも、おおよそが母親の方が同居率は高い。元々平均寿命は女性の方が長いため、単純に存命しているか否かの問題だと思われる。あるいは父親は同居を嫌う傾向があるのかもしれない。

それでは親と同居していない場合、どれぐらいの距離が離れているのだろうか。70歳未満の妻のうち、いずれの親とも同居していない人に限定し、その距離の実情を普段使う交通機関での時間で答えてもらったのが次のグラフ。父親と母親で別途答えてもらっているのは、父親と母親が別居している場合があるため。

↑ 別居する親との居住距離(普段使う交通機関での時間)
↑ 別居する親との居住距離(普段使う交通機関での時間)

実のところ父親と母親での違いはさほどなく、ほとんど誤差の範囲。そして妻の親であるか夫の妻であるかによる差異もほとんどない。

あえて言えば、父親より母親の方がいくぶん近場にいるように解釈できる程度。敷地内別居に限ると、妻の親は3%台だが、夫の親は6%台に達している。何かあった時に対応できる利便性を考えると、親との距離感もまた、立場上夫の方が強いとの風潮によるものかもしれない。

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※全国家庭動向調査

国立社会保障・人口問題研究所が原則5年おきに行っている調査で、家庭機能の変化の動向や要因を正確に把握するため、家庭の出産、子育ての現状、家族関係の実態を明らかにすることを目的としている。直近分となる2022年分は、2022年に調査票を配布、同年7月1日時点についての事実の記入をしてもらい、回収した結果を集計したもの。有効回答票数は9661票で、今件はそのうち有配偶の女性(つまり結婚した状態で夫がいる妻)が回答した5518票を主要な分析対象としている。妻の年齢区分は29歳以下2.7%・30代11.8%・40代19.4%・50代21.4%・60代22.0%・70歳以上22.7%。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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