四半世紀前の中学生が起こしたチャイドルブームの主役たちの今
栗山千明が主演する深夜ドラマ『ラブコメの掟~こじらせ女子と年下男子~』(テレビ東京系)が最終回を迎える。幼少期から芸能活動をしている彼女は、1990年代後半のチャイドルブームの中で最初に広く注目された。ローティーンの少女タレントたちが起こしたこのブーム。四半世紀を経た今、立役者たちどうしているのだろうか?
吉野紗香は毒舌キャラ転向から今年ママに
チャイドルは“チャイルド”と“アイドル”を掛け合わせた、中森明夫氏による造語。子役とは違いモデルや歌でも活動する小・中学生世代の女性タレントを指した。ブームが始まったのは1995年ごろで、篠山紀信の撮影による月刊誌『PANjA』の女子小学生の表紙シリーズや、『Namaiki』などこの世代の少女モデルのオムニバス写真集から火がついた。1997年にはチャイドル勢がモデルを務めた小・中学生向けファッション誌『nicola』も創刊。当時はコギャルの時代でもあり、その反動として、無垢なローティーンに目を向けられた面もあった。
ブームの中心的存在だったのは吉野紗香と野村佑香。当時は共にスペースクラフトに所属していた。吉野は中1だった1995年に少女マンガ誌『ちゃお』のモデルオーディションでグランプリに選ばれ、是枝裕和監督のデビュー作『幻の光』では、江角マキコが演じた主人公の幼少期を務めた。
その後もNHK朝ドラ『あぐり』や『それが答えだ!』、『Days』などのドラマ、主演した『ブギーポップは笑わない』などの映画と次々に出演。1998年には久保田利伸プロデュースでCDデビューもしている。
少女らしいかわいらしさで人気を呼んだが、10代後半には奔放な毒舌キャラに転じる。大物タレントにタメ口で話し、バラエティ番組で他のタレントについてピー音が入りつつ「整形してる」「乱交好き」などと吹聴し、テレビから干された時期も。2017年に『じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~』に出演した際は、当時のことを「本番直前に芸能人の裏話を書くアンケートを渡されて、何もネタはなかったけど白紙で出すわけにもいかず、週刊誌に出ていた話を思い出して書いてしまった」と話していた。
2012年にはアメリカ人男性と結婚していたことを公表し、今年2月に38歳にして第一子を出産。芸能活動からは退いているが、ブログでは「カナダのブリティッシュコロンビアにて、英語留学、音楽製作、家族プロジェクトをスタートさせている最中でもあり、その中で妊娠という素晴らしい体験をさせてもらいました」と書いている。
ファッションリーダーだった野村佑香は2児の母
野村佑香は3歳でモデルデビューし、小6だった1995年には、当時ジャニーズJr.の滝沢秀明の初主演ドラマ『木曜の怪談 怪奇倶楽部』でヒロインを演じている。モデルとしてローティーンのファッションリーダー的な存在になり、1996年には中1にしておしゃれのマニュアル本『野村佑香のかわいくなりたい!』を出版。創刊当初の『nicola』でも象徴的存在のモデルとなり、同世代の女子の人気は絶大だった。1997年にはブルマ姿で踊る『ねるじぇら』のCMも話題に。
同年には『木曜の怪談’97 妖怪新聞』に前田愛、浜丘麻矢、大村彩子と人気チャイドル4人で主演した。この4人のユニット・Pretty Chatでエンディングテーマ『WAKE UP, GIRLS』をCDリリース。個人でも1999年に歌手デビューしている。
2002年に大学に進学してからは仕事をセーブし、学業に専念。2007年に女優業に復帰して、2011年に結婚。同年から2015年まで、NHK BSの旅番組『ぐるっと』シリーズに出演し、イタリア、北欧、ブラジルなどを旅した。37歳になった現在は2児の母となり、家庭を優先しているようで、ブログで子育てなど近況を綴っている。
栗山千明は『キル・ビル』から躍進して今も主演級
チャイドルたちの中で、現在も芸能界で活躍中なのが栗山千明。ブーム当時は吉野や野村と同じスペースクラフトの所属で、中1だった1997年に出版された篠山紀信撮影の写真集『少女神話』が話題を呼んだ。『nicola』などでモデルを務め、1999年にホラー映画『死国』で女優デビューしている。
2000年には中学生同士が殺し合いをする映画『バトル・ロワイアル』に、陸上部の短距離エースの役で出演。これがクエンティン・タランティーノの目に留まり、『キル・ビル』で鎖付きの鉄球が武器のGOGO夕張役に抜擢される。ハリウッドデビューを飾り、女優として大きく躍進した。
その後もコンスタントに作品に出演し、ドラマ『ハゲタカ』、『アルジャーノンに花束を』、『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』、映画『スクラップ・ヘブン』、『鴨川ホルモー』、『種まく旅人 くにうみの郷』など、ヒロインや主演も多い。最近でも大ヒットしたアメリカのドラマのリメイク『24 JAPAN』で、主人公の片腕ながら最後に裏の顔を見せた役が印象深い。『ラブコメの掟』では、容姿も仕事もパーフェクトなのに彼氏いない歴15年という主人公を演じ、36歳にしてラブコメの胸キュンも体現している。
前田愛は梨園の妻として名家を支える
チャイドルブームの中で、吉野や野村と並ぶ人気トップだったのが前田愛。現在は歌舞伎役者の六代目中村勘九郎の妻だ。
小5だった1994年から『あっぱれさんま大先生』にレギュラー出演。ショートカットのかわいい女の子として目を引き、野村と共に『木曜の怪談 怪奇倶楽部』に出演した。1996年にスタートしたドラマ『はみだし刑事情熱系』では、パート1から5まで柴田恭兵が演じた主人公の娘役を5年に渡って務め、1999年公開の映画『ガメラ3 邪神覚醒』では主演など、女優業を中心に活躍した。
結婚したのは26歳だった2009年。その後もしばらくは芸能活動を続けていたが、2児をもうけて37歳となった現在は、梨園の妻として家庭を支えることに徹している様子。毎年放送されるドキュメンタリー番組『密着!中村屋ファミリー』では、昨年末も着物で品のある美しさを携えた姿を見せていた。
前田亜季は連ドラのゲストで存在感を発揮
前田愛の2歳下の妹・前田亜季はチャイドルブームが一段落してからの活躍が目覚ましかった。1995年から小4で『天才てれびくん』にレギュラー出演し、小学生時代に映画『学校の怪談2』、『学校の怪談3』とヒロイン。中1だった1999年には昼ドラ『しおり伝説~スター誕生~』に歌手を目指す役で主演し、劇中歌でCDデビューも。
さらに、2000年には映画『バトル・ロワイアル』でヒロインを演じて、広く注目される。その後、『リンダ リンダ リンダ』、『最終兵器彼女』、『水に棲む花』など主演級での映画出演が相次ぎ、演技力を高く評価された。
2013年には、朝ドラ『ごちそうさん』で杏が演じたヒロインの女学校時代の友人役。現在は35歳で、近年は連続ドラマのゲスト主役での出演が多い。放送中の『半径5メートル』の1話では、レトルトのおでんを買おうとしたら見知らぬおじさんに非難された話をSNSに投稿した主婦を演じた。実は夫への不満を抱えていた役どころで、相変わらずの存在感を発揮した。
こうして見ると、30代後半になった元チャイドルたちで、今も芸能界の第一線で目立った活動をしているのは、栗山千明くらいだ。だが、チャイドルブームを契機に創刊された『nicola』では新垣結衣、川口春奈、永野芽郁、清原果耶らが中学時代にモデルを務め、逸材が早くから世に出る登竜門となった。芦田愛菜など以前は「大成しない」と言われていた子役出身者が、活躍の場を広げる土壌もこのブームから連なっている。