[高校野球]2024年のデキゴト②「飛ばないバット」でホームランが激減!
横浜(神奈川)が17年ぶりの優勝を飾った明治神宮大会では、3本のホームランが飛び出した。初日、東洋大姫路(兵庫)の五番・高畑知季が3ラン。第2日は敦賀気比(福井)の四番・小林拓斗がレフトに、一番の岡部飛雄馬は3ランをライトに運んだ。
2024年のセンバツから、新基準のバットが採用された。そもそも01年の秋、飛距離や打球速度を抑えて選手の安全と折損事故を防ぐため、バットの最大径を70ミリから67ミリに縮小し、スイングスピードを抑えるよう、重量を900グラム以上としていた。だが、選手の体格向上や練習方法の多様化などで、ふたたび打高投低傾向に。たとえば17年夏には、大会最多を上回る68本のホームランが生まれ、広陵(広島)の中村奨成は、従来記録を上回る1大会6本塁打を記録した。そこで22年、最大径を67ミリから64ミリに、打球部の肉厚を3ミリから4ミリに見直す。移行期間を経て、完全採用されたのが24年センバツ、というわけだ。
走塁と小技重視の原点回帰?
もともと、「打球が飛ばない」「木のバットと似た感覚」などといわれていた新基準のバット。実際、センバツの31試合で本塁打はわずか3本にとどまった。
これは金属バットが採用される直前、1974年の1本以来の少なさで、しかも3本のうち柵越えは2本。1本は、ファウルにも見える疑惑つきだったから、もしかすると柵越えは実質1本だといえる。さらに、大会を通じての長打81本も、金属バット採用の75年以降では最少。「芯に当たれば飛距離は同じ」と、木のバットを使う選手も話題になった。
新基準に多少は慣れると予測された夏も、ホームランはわずか7本。東海大相模(神奈川)の柴田元気に大会第1号が飛び出したのは第6日で、通算7本は前年の23本どころか、金属バット導入の74年の11本を下回る。確かに、01年の導入時とは違い、今回の新基準はやはり「飛ばないバット」のようだ。
これにより、フライボールがもてはやされた高校球界のトレンドも、やや変わりつつある。攻撃面では、多くの監督が「打球が飛ばないので、低く鋭い打球を徹底する」と口をそろえ、走塁面の比重が大きくなった。犠打の多用はもちろん、走者三塁でのヒットエンドランも増えているようだ。
外野手の守備位置は明らかに浅くなったし、局面によっては内野手も大胆な前進守備を敷く。神宮大会、東洋大姫路と横浜の準決勝では、タイブレークの1死満塁で横浜が内野5人というシフトを敷いたが、これなどは「外野までは打球が飛ばない」という判断が根拠になっている。
前回、新基準が導入された02年センバツでは、前年21本だったホームランが14本に減っていた。だが夏には逆に、前年の29本を大きく上回る43本。センバツ後の4カ月間で、明らかに順応が進んでいたわけだ。球場が異なるため単純比較はできないものの、神宮大会の9試合では、センバツの31試合と並ぶ3本のホームランが生まれている。来年のセンバツでは、果たして「飛ばないバット」への順応が進むのか——。