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[高校野球]2024年のデキゴト①「効果的」が8割近い2部制だけど、来年以降も続くのか?

楊順行スポーツライター
(写真:岡沢克郎/アフロ)

 2024年夏の甲子園では、開幕から3日間の3試合日に、午前と夕方に分けて試合を行う2部制を導入した。気候変動で「地球沸騰化」の時代、もっとも気温の高い時間帯の試合を避け選手、そして観客の健康面に配慮するためだ。

 11月、日本高校野球連盟と朝日新聞社は「2部制」について代表49校に実施した調査結果を発表。それによると、78%の学校が「効果的だ」と回答したそうだ。内訳は▽「とても効果がある」7校▽「効果がある」31校▽「あまり効果がない」5校▽「その他」6校。

 導入された3日間のうち、初日は午前に1試合、夕方から2試合で、2、3日目は午前2試合、夕方から1試合。夕方からの試合に該当したのは8チームで、暑い時間帯を避ける恩恵を直接受けたから、おそらく大半は「とても効果がある」と回答したのではないか。もっとも、3日目までに試合をした18校以外の残り31校は、これまでの夏となんら変わらなかったのだから、2部制が効果的かどうか、実感してはいないと思うが。

 大会を通し、選手の熱中症が疑われた件数は58件 (56人)。2部制の3日間では1日平均2.7件、第4日以降は1日平均4.5件と一定の効果はあるようだが、第4日以降は4試合開催だから、顕著に減ったとはいいづらい。ただ、観客にとっては効果があったようで、救護室への受診は合計479人。2部制の3日間に限ると53人で、2023年大会の同期(109人)から半減している。1日平均にすると、2部制開催の受診者数は17.7人、第4日以降は38.6人だった。炎天下、熱心に4試合を見るコアなファンほど、熱中症のリスクが高くなるのは当然か。

夕方からの試合は恩恵を受ける

 開幕日、岐阜城北と智弁学園の第3試合は、もともとの開始予定時間が18時30分(実際の開始時間は18時52分)だったから、ナイターとなることが試合前からほぼ確定していた。岐阜城北の秋田和哉監督は、

「(ナイターでの試合は)非常に楽しみです。通常の練習はもっと薄暗いなかでやることも多いですし、涼しい時間でありがたいですね」

 と好意的に受け止め、エース・中本陽大も、

「開会式のあと宿舎に戻り、昼寝もできていい状態で試合に臨めました」

 と、コンディション維持にも問題はなかったようだ。ただ、岐阜城北がタイブレークで敗れたこの試合、終了時間は21時36分(第2日は19時05分、第3日は18時55分)。先の発表では、「選手のコンディション維持がむずかしい」「最終試合の応援団の帰りが遅くなる」という懸念の声もあったという。

 ワタクシゴトながら、われわれ取材者にとっても、2部制には「試合間のインターバル(最低でも2時間半)をどう過ごすか」という「懸念」がある。

 甲子園近くに宿泊していれば、いったん戻ってなんらかの作業ができるが、かりにホテルとの往復に1時間かかるとすれば、なんとも中途半端な時間だ。球場で原稿を書くにも、食事などの時間を考えればこれも中途半端だし、そもそも締め切りのタイトな新聞社と違い、雑誌やウェブが中心の当方、それほど勤勉じゃない。

 たとえば開幕日、第1試合の終了から第2試合の開始までは、3時間26分の間隔があった。試合後の取材が約30分、球場内で食事をしても、まだ2時間ほどあるのだ。あまり記憶がないのだが、3日間とも資料調べなどをするのがせいぜいで、だらだらとやり過ごした気がする。

 これは一人言。時間を持て余すし、冷たいビールにありつく時間も遅くなるし、2部制の本格導入は見送ってほしいなぁ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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