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次は「ONE PIECE」でMr.3役 主演ホラーで超常体験? 日本の皆さん「マルチャン」と呼んで

斉藤博昭映画ジャーナリスト
デヴィッド・ダストマルチャン(写真:REX/アフロ)

10/4、『悪魔と夜ふかし』という何やら怪しさ満点の映画が公開される。

深夜に生放送されたTV番組。そのマスターテープが発見された。そこに映っていた奇怪な現象とは……というオーストラリア映画。舞台が1970年代ということで、懐かしのオカルト的テイストが日本の観客にもアピールしそうだが、その主人公、TVショーのホストを演じる俳優の“顔”に、映画ファンなら見覚えがあるはず(名前がスラスラと出てくる人は少ないと思うが)。

『オッペンハイマー』でロバート・オッペンハイマーの聴聞会で告発する男、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』では水玉模様の超人、『アントマン』の泥棒……。スクリーンに映るだけで何やら怪しげなオーラを充満させ、『DUNE/デューン 砂の惑星』など多くの話題作に引っ張りダコのこの人、名前はデヴィッド・ダストマルチャンという。

息子は「ONE PIECE」をすべて知っている

次に控えているのは、あの「ONE PIECE」実写でのMr.3=ギャルディーノ役ということで、日本でもさらに注目度がアップするのは確定的。たしかに、原作のMr.3にはぴったりの容貌のダストマルチャンだが、オリジナルどおり頭に数字の「3」を乗せて登場するのか。撮影はこれから始まるので、まずその話から聞いてみると……。

「つい先日、体のサイズの採寸が終わり、間もなく衣装のフィッティングがあるんです。早くMr.3、ギャルディーノに変身したくてたまりません。というのも僕の息子は、僕が知る限りで世界一のマンガ&アニメのファンだから(笑)。彼はONE PIECEを1000話は読み、アニメもすべて観ています。そんな息子はもちろん、日本の人たちが僕の演技に誇りを感じてくれたらいいですが。準備は整ってますよ!」

ダストマルチャンの自宅とオンラインで行ったこのインタビューで、おもむろに彼は背後のロウソクを手に持つと、サービス精神たっぷりに宣言してくれた。Mr.3が登場する、Netflix「ONE PIECE」シーズン2の配信はまだ少し先だが、その前にダストマルチャンの魅力を知っておくうえで『悪魔と夜ふかし』は必見だろう。

ホラー映画の撮影現場で異変が…

ダストマルチャンが演じたのは、深夜のトークショー「ナイト・オウルズ」の司会者、ジャック・デルロイ。1977年のハロウィンの夜、霊能力者や、悪魔に憑依されるという少女らを呼んで始まった生放送でいったい何が起こるのか……。これはぜひ映画を観て確かめてほしいが、いかにも70年代のオカルトブームを再現した作りが味わい深い。

ダストマルチャン自身は、オカルト現象を信じるタイプなのか聞いてみると……。

「信じてますね。科学では解明できない超常現象が必ずあるからです。たとえば地球には現在、何兆リットルという水が存在し、毎日、その水を月の力が動かしている。そんなパワーがあるくらいだから、月が人間の生理機能にも影響を与えているはず。でも今はその事実がわからない。何百年後かに解明されるかもしれず、そうした超常現象はいっぱいあるでしょう」

なかなか説得力のある科学的な答えが返ってくる。では撮影現場で超常現象、つまり奇妙なアクシデントは起こらなかったのだろうか。こうしたホラー映画では“都市伝説”のように語られることもある。

「それがね、起こったんですよ。悪魔に憑かれる少女役の俳優の楽屋を通り、鏡の前でメイクアップをしている彼女を何気なく見た時、意味もわからず全身に鳥肌が立ちました。あれは何だったのでしょう。そしてもうひとつ。番組の中でテルミン(楽器)が異常な動きをして、テーブルが揺れ、小道具が爆発したりする現象が起きますが、そのシーンを撮影している最中、スタジオの外から壁をドンドン叩く音と、誰かが泣き叫ぶ声が聞こえてきたんです。しかし周囲に伝えたら、誰もその音を聴いてなくて、僕だけが感知したようで本当に怖かったです」

『悪魔と夜ふかし』より (c) 2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
『悪魔と夜ふかし』より (c) 2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

ダストマルチャンに特殊な霊能力があるのか。そんなエピソードだが、実際に彼のフィルモグラフィーを眺めると、ホラーやスリラーが多いのは、俳優としての個性と無縁ではないだろう。

「僕はホラーが大好き。子供の頃からずっと、コミックやスーパーヒーロー、モンスター、SFの大ファンでした。磁石のようにそれらのジャンルに引きつけられた感じ。そして今、俳優としてホラーやSFの傑作に参加しているのですから、最高に幸せなんです(笑)」

サムライが出てくる僕のコミック、ぜひ読んでみて

そんなダストマルチャンは俳優以外で、もうひとつのライフワークがある。それはコミック作家。しかも趣味という域を超えているのだ。

「僕は長年、『Count Crowley(カウント・クロウリー)』というコミック作品の物語を書いてきました。深夜のホラー番組の司会者が密かにモンスターハンターとして活躍しているという作品です。そして新作として書いた『Knights Vs. Samurai(騎士vs.サムライ)』がちょうど発売されたばかり。ドラゴンや鬼、天狗といった日本とイギリスの神話モンスターが出てきます。東の島に向かった騎士団が、自分たちと見た目が違う侍の集団と出会い、恐ろしい戦いを強いられる物語です。日本語のセリフや漢字も出てくるので、ぜひ日本の皆さんに読んでほしい。そして率直な感想を聞きたいんです!」

「Knights Vs. Samurai」Amazonのページより
「Knights Vs. Samurai」Amazonのページより

インタビューの冒頭で、「日本のインタビューを受けてとても興奮している」と語ったダストマルチャン。その真意は、Mr.3役だけでなく自身のコミックにもあったようだ。

コミックに目の肥えた日本の人たちに、ぜひダストマルチャンの作品を評価してほしい。少しでもその名が浸透するように、ちょい覚えにくい名前を短くして「マルチャン」というニックネームを広めていいか聞いてみると(日本では「ブラピ」などが一般的だと説明に付け加えて)……。

「それ、いいですね。賛成します。ぜひ僕を『マルチャン』で広めてください」

ホラーやスリラーで個性を発揮するデヴィッド・ダストマルチャンを「マルチャン」と呼ぶのは、ちょっとギャップもあるが、そのギャップも味ということで、コミックを発信する超オタクな彼が、Mr.3をどのように演じるか妄想しながら、新作『悪魔と夜ふかし』をぜひ映画館で体感し、背筋を凍らせてほしい。ハロウィンにぴったりの怪作なので!

(c) Braden Moran
(c) Braden Moran

『悪魔と夜ふかし』

10月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次ロードショー

配給:ギャガ

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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