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WBCミドル級チャンプが腰を痛め、防衛戦延期

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 32戦全勝22KOでWBCミドル級タイトルを5度防衛中のチャンピオン、ジャーモール・チャーロ(32)。来る18日に地元、テキサス州ヒューストンのリングに上がる予定だった。

 6人目のチャレンジャーは、30勝(11KO)2敗のポーランド人、同5位のマチエ・スレツキ(33)。しかし、王者はトレーニング中に腰を痛め、試合12日前に延期が発表された。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 チャーロにとっては、2年連続となる「ジューンティーンス」での試合であり、チャンピオンは意気込んでいた。

 1865年6月19日、合衆国北部軍のゴードン・グレンジャーがテキサス州ガルヴェストンで、連邦政府が発した「テキサス州で奴隷とされてきた全員が自由となった」命令文を読み上げた日である。奴隷だった人々に歓喜を齎した記念日が「ジューンティーンス」だ。

提供:イメージマート

 厳密に言えば1日前の予定だったが、黒人たちにとって大きな意味を持つ日に行われる防衛戦で、チャーロのファイトを心待ちにする人も多かった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 この試合が決まった際、チャーロは言った。

 「『ジューンティーンス』は俺の日だ。この祝日に勝利して、更なる喜びを分かち合いたい。故郷を代表するアリーナ、トヨタセンターで戦えることを光栄に思うよ。新たな強い選手を迎え、素晴らしい夜になるだろう。準備万端だ。

 これまでの対戦相手って、ベラベラ喋るヤツばかりだったな。でも、俺と向き合うと態度が変わっちまうんだ。スレツキのように、ビビらずに向かってくる選手を望んでいた。

 以前、スレツキの友人と一緒にトレーニングしたことがある。俺がどんな思いでリングに上がるか、彼を通じてスレツキに伝えてもらおうかな。親近感があるよ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 スレツキはいい挑戦者だ。多くの人が存在を知らないだろうが、トップレベルさ。強い相手と戦うには、いいタイミングだな。彼は俺をぶちのめすと発言しているが、リングに上がったらサバイバルを味わうだろう。

 どんな相手でも、俺は焦らずに戦う。目の前の相手よりも大きな物を見ているんだ。この試合が終わったら、スーパーミドル級に上げるかもしれない。俺は今がピークだ。誰とだって戦う。勝利のために戦法を変えることも出来る。激しい戦いになるだろうよ。彼をノックアウトする。

双子の弟を祝福するジャーモール(右)(C)Stephanie Trapp/SHOWTIME  
双子の弟を祝福するジャーモール(右)(C)Stephanie Trapp/SHOWTIME  

 (5月14日にスーパーウエルター級で4団体統一王者となった)ジャーメルの活躍ぶりが、モチベーションを上げてくれる。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20220517-00296214

 俺たちは刺激し合っているよ。今の目標は、スレツキを打ちのめすことだ。誰もがチャンピオンを夢見るけれど、そこまで行ける人間なんてほとんどいない。ただ、スレツキと下すこと以上に、名のある選手とのメガファイトを実現させるために、俺は戦うよ」

 WBCミドル級王者は、黒人にとって大きな意味のある日に、どんなメッセージを発信するかが注目されていたが……。腰の痛みは深刻そうだ。新たな日程がアナウンスされるのはいつか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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