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消えゆく”留萌の駅そば”今後はどうなる? 「日本最北の駅そば」も訪ねてみた

宮武和多哉ライター(乗り物・モビリティ全般、観光、ご当地グルメ)

JR留萌駅。留萌本線の区間廃止と運命をともにする
JR留萌駅。留萌本線の区間廃止と運命をともにする

「留萌駅立ち食い蕎麦」はJRJR留萌駅の待合室内にある
「留萌駅立ち食い蕎麦」はJRJR留萌駅の待合室内にある

冬場は晴れ間も少なく、最低気温がマイナス20度を下回ることもある北海道・留萌市。ターミナル駅の構内で長らく”駅そば”を提供してきた「留萌駅立喰そば」が、JR留萌本線・石狩沼田〜留萌間の廃止とともに、20233月末をもって姿を消します。

わずか数坪のお店ですが、ここで出される「にしんそば」の味わいは格別。甘辛く味付けされたにしんの甘露煮がそばの上に乗り、にしんの旨味と甘さが染み渡ったダシは、じっくり飲み干さずにはいられません。

留萌駅は札幌・旭川からはいずれも2時間ほどかかり、夕方2時までの営業時間に到達する列車は、わずかに2本。(ほか高速バスでも到達可能)「にしんそば」を食べに行くのは容易ではありませんが、足を運ぶ価値は十分にあるでしょう。

お店を経営されている北海コーポレーション・武蔵照義さんにお話を伺いました。

昨年12月に留萌駅の廃止が決定してからは、名残を惜しんでそばを食べにくる人も多く、1日100杯近く売れる日もあるのだとか。

しかし、20年ほど前に武蔵さんの会社(北海コーポレーション)が経営を引き継いだ頃にはお店のみんらず留萌本線の利用者も多く、現在は2時で閉業するお店も夕方まで空けていたそうです。

「留萌駅立喰そば」裏側に残る小窓。ここからもそばや寿司を提供していたという
「留萌駅立喰そば」裏側に残る小窓。ここからもそばや寿司を提供していたという

また毎年9月に開催される「るもい呑涛まつり」では行燈の行列が留萌駅の前に入ってくるため、店の裏側にある小窓を開けて、ぞろぞろと集まる見物客にそばや稲荷寿司を出していたのだとか。

この行列も数年前から留萌駅に入らず、2020年に開業した「道の駅るもい」を終点とするルートに変更。駅としての賑わいが徐々に消えていく中でも、「留萌駅立喰そば」は営業を続けてきました

2020年に開業した「道の駅るもい」。
2020年に開業した「道の駅るもい」。

気になるのは、今後の「留萌駅立喰そば」の今後。留萌駅は23年3月の鉄道廃止後は防災拠点を備えた体育館や交流施設の建設を検討中。駅舎は閉鎖となるため、「留萌駅立喰そば」も、3月末をもって閉店されることは、”確定”だそうです。

実は武蔵さんのお店はもう1軒、前述の「道の駅るもい」にもあります。現在は冬季休業中ですが、昨年の営業期間中には”駅前店”と同様に「にしんそば」や、予約制の駅弁「にしんおやこ」を出されていたそうです。

ただ現時点では、このお店も含めて、今後は未定だそうです。

※何か動きがあれば、追加で書き記します。

☆「道北の駅そば」音威子府は惜しまれつつ閉店、でも2駅で健在!

音威子府駅・交通ターミナル。駅そば「常盤軒」もこの駅舎内にあった
音威子府駅・交通ターミナル。駅そば「常盤軒」もこの駅舎内にあった

音威子府駅「常盤軒」そば。2009年撮影
音威子府駅「常盤軒」そば。2009年撮影

北海道は大きく「道央」「道南」「道東」「道北」に分けられますが、留萌市は「道北」(北海道の北部)に区分されます。

このエリアでは、そばの実を皮ごと挽くことで生まれる独特の”黒そば”で知られていた音威子府駅「常盤軒」が2021年に閉店。経営されていた方の逝去により、やむを得ず姿を消しました。

しかし、他に数軒の”駅そば”が健在。2023年2月現在の「道北の駅そば」「最北の駅そば」を訪れてみましょう。

☆最北端の「駅チカ交流施設内そば」~宗谷本線・稚内駅「ふじ田」

稚内駅の立ち食いそば「ふじ田」。駅併設の交流施設内にある
稚内駅の立ち食いそば「ふじ田」。駅併設の交流施設内にある

稚内駅「ふじ田」昆布そば。
稚内駅「ふじ田」昆布そば。

日本最北端の駅・稚内では、立ち食いスタンド「宗谷そば」が営業していましたが、駅舎の建て替えとともに閉店。(現在は別の場所で新しいお店を営業されています)

そして2012年に、駅やバスターミナルと併設した交流施設「キタカラ」が開業。新たに入居した「ふじ田」は立ち食いそば・食堂を施設内で運営、「四大かに弁当」などの駅弁も販売しています。

ただ、お店は前述のとおり、駅舎ではなく交流施設の中。改札からの距離はわずかですが、厳密にいうと「駅チカ交流施設内そば」掲げられた看板も「最北稚内 立ち食いそば」という書き方になっています。

しかし、削り昆布をたっぷり入れた「昆布そば」は絶品。特急「サロベツ」都市間バス「わっかない号」から降りた乗客が、吸い寄せられるようにカウンターに向かっていました。

☆「最北の駅そば」「最北の駅カレー」~宗谷本線・士別駅「フーズサービスささき」

士別駅の待合室で営業する「フーズサービスささき」
士別駅の待合室で営業する「フーズサービスささき」

駅構内にある“駅そば”という条件であれば、宗谷本線・士別駅の「フーズサービスささき」が「最北の駅そば」ということになります。

この駅そばは柔らかめの蒸し麺が黒い出汁を吸い込み、ボリュームはなかなかのもの。また特製のカレーライス・カレーそばは、油断していると結構「ピリッ!」とくる辛さがり、どちらも「また食べたい!」と後からふいに思い出すような味です。

士別駅は高校生の利用が1日300人ほどあり、待合室も賑わいを保っています。しかし駅舎は築50年を越えていることもあり、士別市やJR北海道は建て替えを検討中。駅そばの今後はまだ未定だそうです。

☆最北端の「バスターミナルそば」~深名線・幌加内バス停「雪月花」

幌加内バス停。複合施設「交流プラザ」前にある
幌加内バス停。複合施設「交流プラザ」前にある

「幌加内そば 雪月花」天ぷらそば
「幌加内そば 雪月花」天ぷらそば

JR深名線(1995年廃止)を引き継いだバス路線「深名線」(ジェイ・アールバス北海道」の幌加内バス停は「交流施設プラザ」1階にあり、ここからの始発便もあるなど、その佇まいはれっきとした「バスターミナル」です。

「バスターミナルそば」といえば新潟・盛岡(現在は閉店)などが知られていますが、幌加内は「最北端のバスターミナルそば」ということで、いかがでしょうか。

バスを降りて目の前にあるそば店「雪月花」のそばは、もちろん地元・幌加内産。噛みしめるごとに香りの良さを味わえます。ただしここに到達するバスは1日7本のみということもあり、大半のお客さんがクルマやバイクで来店されている様子。10台ほどの駐車場は、いつも一杯です。

☆他にもいろいろ、北海道の駅そば

旭川駅の駅そば「JR旭川駅構内売店」きざみそば+駅弁「三色めし」
旭川駅の駅そば「JR旭川駅構内売店」きざみそば+駅弁「三色めし」

その他、北海道では「改札内の駅そば」なら札幌駅、また「駅舎内」なら旭川駅・新得駅、「駅併設の交流施設内」なら栗山駅など。

留萌駅「にしんそば」の名残を惜しんだあとは、それぞれ個性を持つ「北の駅そば」巡りはいかがでしょうか。

〈了〉

【この記事は、Yahoo!ニュース個人のテーマ支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、オーサーが執筆したものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

【記事内の写真はすべて筆者撮影です】

ライター(乗り物・モビリティ全般、観光、ご当地グルメ)

鉄道全線完乗・路線バス1800系統乗車・フェリーなど船舶60航路乗船(いずれも国内・202年現在)47都道府県で通勤ラッシュ巻き込まれ&100Km以上ドライブを経験。モードにこだわらず「乗りもの」全般をカバー。 ☆☆ 全国の駅弁・駅そば・ご当地料理を食べ歩き、おうちで再現レシピも作成します(「再現料理人」としてNHK「さし旅」で指原莉乃さんと共演等経験あり)  ☆☆ 香川県高松市出身・兵庫県・大阪府・高知県・東京都・神奈川県などに在住経験あり  ☆☆ 著書「全国オンリーワン路線バスの旅2」(イカロス出版)2022年6月28日発売!

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