開幕延期を決めたMLBがシーズン162試合を実施できる可能性は?
【MLBが開幕延期とオープン戦残り試合の中止を発表】
すでに日本でも大きく報じられているように、MLBは3月12日、米国内における新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、オープン戦残り試合の中止と3月26日のシーズン開幕を最低でも2週間の延期を発表した。
MLBが発表した声明によれば、今回の措置は、全30チームおよび選手会と協議をした上での結論だとしており、各チームもMLBの声明に合わせ、MLBの決定に従う旨の声明を発表している。
ただ今後についてはすべて未定で、現時点で決まっているのは当面は対外試合を実施しないということだけ。MLB、チームともにスプリングトレーニング継続を含め今後の対応を協議していかねばならない状況だ。
【4月9日開幕が162試合実施可能なギリギリのライン】
今回の決定を受け、MLBは2週間遅れの4月9日のシーズン開幕を目指し調整していくわけだが、選手にとって相当厳しいシーズンになることは避けられそうにない。
スポーツ専門サイトの『the Score』が今後の動向を予測しているところでは、当初の日程通りに9月27日に公式戦全日程を終了させるには、この日が162試合の通常シーズンを実施できるギリギリのラインになるという。
さらに9月27日終了の場合は日程が過密になるため、オールスター戦が中止になる可能性がある。しかも当初の日程のようなオフ日を入れることが困難であり、順延試合もダブルヘッダーで実施しなければならない状況で、選手は相当の負担を強いられることになる。
開幕延期に合わせ日程を後ろにずらすことも可能だが、そうなると公式戦は10月中旬まで続き、そこから1ヶ月間のポストシーズンを戦わねばならなくなる。そうなると屋外球場を本拠地にする北部地域のチームでは、試合を実施するのも困難な気候条件が予想され、最悪の場合は温暖な地域の球場での代替開催を検討しなければならなくなる可能性もある。
4月9日開幕でさえこれだけ厳しい状況になってしまうことを考えれば、さらに延期がずれ込むことになれば、選手会のストライキで開幕が遅れた1995年以来の短縮シーズンを実施するしかなくなるのは確実といっていい。
【取り巻く環境は不安要素ばかり】
現在MLBを取り巻く環境も、まったく楽観視できる状況にない。
すでに新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、非常事態を宣言しているワシントン州ではシアトル地域におけるスポーツを含めた250人以上のイベント中止を決定しているのは報じられている通りだ。
またカリフォルニア州でも、3月いっぱいは州内における250人以上のイベント自粛要請を発表しているし、さらにイリノイ州も両州に呼応するかのように、州内の全プロチームに対し5月1日までは公式戦開催を自粛するよう求めている。
MLBとしても、こうした州政府の新型コロナウイルス対策を無視することはできず、現状を考えれば4月8日開幕すらも困難だとみるべきだろう。
短縮シーズンはMLB、チーム、選手だけが辛い思いをするわけではない。球場で働く警備員、売店スタッフ、放送中継クルーなどは基本的に日給ベースで働く人が多く、彼らの生活をも圧迫することになる。
とにかく新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化するのを待つしかない。MLBを含め各リーグが受けるダメージが少しでも軽微になることを祈るばかりだ。