楽天・三木谷オーナーにお勧めしたいNFL名物オーナーが実践するGM兼任という荒業
【多忙な冬を過ごす石井GM兼任監督?】
楽天から石井一久GMが監督を兼任することが発表されてから3週間が経過した。今もメディアの間で、2つの重職を兼任することに疑義を呈する報道や、今回の仰天人事の裏側を解説する報道が散見される。
すでに監督就任会見で明らかになっているように、石井GMの監督兼任は自ら人事権を発動したものではなく、上層部の要請に従ったものだ。やはり被雇用者としては、上司の要求には従うしかなかったのだろう。
いずれにせよ現在の石井GM兼任監督は、監督として来シーズンに向けた準備を進めていく一方で、GMとして外国人選手を含めた選手補強や契約更改にも携わらなくてはならない。球界の中で最も多忙な冬を過ごしているに違いない。
【常に囁かれる楽天を動かす絶対的存在】
今回の仰天人事に限らず、これまで楽天で監督人事が行われる度に、メディアや球界OBらから囁かれるのが、楽天を動かす絶対的存在だ。言うまでもなく、三木谷浩史会長兼オーナーのことだ。
楽天の初代監督を務めた田尾安志氏も、自身の公式YouTubeチャンネルでチーム内での三木谷オーナーの存在の大きさを解説し、また他の監督から聞いた話として、毎試合先発メンバーを三木谷オーナーに確認していたことなどのエピソードを紹介している。
もちろん三木谷オーナーは、球団のトップであり全社員の雇用主なのだから、最大の権限を有している人物に他ならない。だが長年MLBを取材してきた経験上、現場介入するオーナーというのをあまり聞いたことがない。たぶんヤンキースの故ジョージ・スタインブレナー・オーナーくらいだろう。
【現場の責任者も兼ねるNFLの名物オーナー】
楽天は巨大な組織だ。現場で働くスタッフもそれぞれの役割を担っている。それをオーナーが横槍を入れるようなことになれば、やはり組織として機能するのは難しくなってくる。
ならばいっそのこと、オーナー自らが現場の責任者を兼ね、思う存分現場を指揮していけばいいのではないか。実は米スポーツ界には、それを実践しているオーナーが存在しているのだ。
NFLの中でも輝かしい伝統を誇り、多くのファンから支持されているダラス・カウボーイズのオーナーであるジェリー・ジョーンズ氏こそ、まさにそんな人物だ。彼の肩書は「オーナー兼球団社長兼GM」で、オーナーであるとともに現場の総責任者でもあるのだ。
【次々に豪腕を振るいファンや選手と軋轢も】
元々大学時代フットボール選手だったジョーンズ氏は、1989年にカウボーイズ買収に成功すると、チーム創設時の1960年からHCを務めていたリーグ屈指の名将と謳われたトム・ランドリー氏を、さらにその数ヶ月後に当時のGMを次々に解任し、自ら現場の総責任者に収まった。
そして後任HCとして、プロでのコーチ経験がないにもかかわらず、大学時代のチームだったメイトジミー・ジョンソン氏を連れてくる仰天人事を断行し世間を驚かせた。
各所から疑問や批判を受けながらも、4年目の1992年にジョンソンHCとともにスーパーボウル王者の座を勝ち取ることに成功。そして翌年も連覇しながら、今度は突如としてジョンソンHCを解任し、再び世間を騒がせている。
現在も現場の総責任者として指揮をとり続け、1995年の3度目のスーパーボウル王者になったのを最後に、スーパーボウル出場を逃し続けているものの、2014年には年間最優秀エグゼクティブに選出されている。
その身勝手にも見える豪腕ぶりに、時にはメディアから批難され、ファンや選手たちとも軋轢を生むこともあるが、常に現場の総責任者として批判の矢面に立ち続けてきた。
ちなみにNLFにはジョーンズ氏のみならず、1991年からシンシナティ・ベンガルのオーナーに就任したマイク・ブラウン氏も、やはりGMを兼任している。
是非三木谷オーナーも、ジョーンズ氏のように自ら現場で心置きなく陣頭指揮をとるのは如何なものだろう。NPBにも名物オーナーが誕生するのも、非常に興味がある。