Yahoo!ニュース

ウクライナ軍が破壊したロシア軍のドローン、6か月で800機突破

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ軍提供)

戦車や大砲を上空から破壊するのにも貢献しているドローン

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。

ウクライナ軍によると2022年2月24日から2022年8月20日までの約6か月間でロシア軍兵士の犠牲者は44,000人以上で、破壊したドローンは800機を超えた。

6か月で800機だから1か月で約130機とすると1日に平均して4機のドローンを迎撃して破壊していることになる。両軍とも監視・偵察ドローンや攻撃ドローンをかなりの規模で飛ばしているので、カウントされていないで破壊されたドローンを含めるともっと多いだろう。

ウクライナ軍では破壊したドローンのなかで、監視・偵察ドローンと攻撃ドローンの内訳は明らかにしていない。ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。最近では「Kartograf」と呼ばれている監視ドローンも使用しており、それもウクライナ軍によって破壊されている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。イラン政府がロシア軍に攻撃ドローンを提供することを明らかにしていたが、まだ実戦では使われた様子はない。

そしてウクライナ軍では迎撃して破壊したロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」や攻撃ドローン「KUB-BLA」の残骸の写真や地対空ミサイルを発射して上空で撃破する動画を投稿して世界中にアピールしている。

破壊された装甲戦闘車両が約400台、戦車が約2000台、大砲が約1000台なのでそれらに比べると破壊されたドローンは少ない。戦車や大砲の多くも上空からドローンで爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき破壊している。

▼ウクライナ軍による"ハードキル"で徹底的に破壊されたロシア軍の監視ドローン

ハードキルで徹底的に破壊しておきたいドローン

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。

上記のウクライナ軍が破壊して公開しているロシア軍のドローンが真っ黒に焦げて原型をとどめていないのも"ハードキル"で徹底的に破壊された証跡である。

▼ソフトキルで機能停止されたロシアの監視・偵察ドローン

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事