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「ZARA」を手がけるインディテックス社の次期CEOが決定、デジタル戦略とサステイナビリティを強化

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
次期CEOのカルロス・クレスポCOO(左)とイスラ会長兼CEO(公式写真)

「ZARA」や「ベルシュカ」を擁する売上高世界ナンバーワンのアパレル企業、Inditex(インディテックス)は5月23日、次期CEO(最高経営責任者)に48歳のCarlos Crespo(カルロス・クレスポ)COO(最高執行責任者)が昇格する人事を決めた。これまで率いてきたデジタル戦略とサステイナビリティ(持続可能性)の施策をさらに推進することになる。

指名委員会の執行委員長も務めるPablo Isla(パブロ・イスラ)会長兼CEO(55歳)は、クレスポ氏に対して、COOとして能力があり、「インディテックスの戦略的なデジタル変革とサステイナビリティ(持続可能性)への広範なコミットメント」などによって、優れた仕事をしてきたと指摘。「昇進するのは自然なことだ」と語る。

2018年8月に六本木にオープンした「ZARA」のポップアップストアでは、サステイナビリティを前面に打ち出す期間を設けた(筆者撮影)
2018年8月に六本木にオープンした「ZARA」のポップアップストアでは、サステイナビリティを前面に打ち出す期間を設けた(筆者撮影)

クレスポCOOが指揮を執るEC売上高は前期比27%増で4000億円超に

インディテックスでは、店舗とオンラインを統合する「オンライン・マージド・オフライン」の考え方を打ち出してきた(リアル店舗とオンラインの2つのチャネルがあるというオムニチャネルとは異なるとらえ方をしている)。さらに、「クリック・アンド・コレクト」で、オンラインでチェックして店舗で受け取りを促したり、アプリを投入したり、近隣店舗に在庫があるかどうかの確認ができるようにするなど、利便性や売上げを高めるさまざまな施策を推進してきた。これをけん引してきたのが、クレスポ氏だ。インディテックスの前期のEC売上高は前期比27%増の32億ユーロ(約4032億円)、EC化率は12%まで高まっている。2019年1月期決算は、売上高が前期比3.1%増の261億4500万ユーロ(約3兆2942億円)、営業利益が同1.0%増の44億5700万ユーロ(約5403億円)、純利益が同2.2%増の34億4400万ユーロ(約4339億円)だった。

「ZARA」のスペイン・マドリッドの物流センター。RFIDの活用を含めて効率的なロジスティクスで、旬な商品をタイムリーに提供する武器になっている(筆者撮影)
「ZARA」のスペイン・マドリッドの物流センター。RFIDの活用を含めて効率的なロジスティクスで、旬な商品をタイムリーに提供する武器になっている(筆者撮影)

クレスポ氏は、「私はこの会社にとって重要な時期に重要な役割を果たすことに興奮している」とコメント。さらに、「デジタル変革とサステイナビリティを実現するためには、エキサイティングな課題がある。起業家精神とチームワーク、そしてイノベーションが必要条件になるが、幸い、これが私たちの企業文化の特徴だ」と続ける。

新CEOは今後はイスラ氏と協力しながら全体のビジネス戦略を策定する。担当分野は、テクノロジー(システム、データおよびデジタル)、ITセキュリティ、物流、輸送、建設、製造、法務、調達、持続可能性とサプライチェーンの要を握ることになる。

クレスポ氏は会計監査としてキャリアをスタートし、2001年に財務部門の会計方針の責任者としてインディテックスに入社。2005年からグループのロジスティクスプラットフォームを構築し在庫管理を統括。最高監査責任者を経て、2018年にCOOに就任した。CEOには年次総会で取締役に任命された後、7月に予定する取締役会の承認を受けて正式に就任する。イスラCEOは会長職を継続する。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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