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大相撲・雷部屋初の秩父合宿がスタート 自然豊かな環境と元力士経営の温泉宿で英気を養い名古屋場所へ準備

飯塚さきスポーツライター
獅司(写真中央)を囲み、雷部屋の力士たちが「雷」ポーズで(写真:すべて筆者撮影)

大相撲夏場所を終え、早くも来月の名古屋場所へ向けて稽古を再開している力士たち。部屋によっては、環境を変えて稽古に励むところもある。さいたま市中央区に部屋を構える雷部屋は、埼玉県秩父郡小鹿野町にて、3日より約10日間の合宿をスタート。初日前日の激励会から翌日の朝稽古に同行した。その様子をお伝えする。

長年育んだ同期の友情がかなえた初の秩父合宿

澄んだ空気と広大な山々に囲まれた秩父。この地で温泉旅館「宮本の湯」などを営み、雷部屋の合宿を受け入れたのは、元幕内・剣武こと宮本一輝さん。師匠の雷親方(元小結・垣添)とは、日本体育大学相撲部の同期だ。卒業後は武蔵川部屋(のちに藤島部屋)の力士として切磋琢磨した二人は、18歳から苦楽を共にしてきた仲である。

合宿を誘致した元幕内・剣武の宮本一輝さん
合宿を誘致した元幕内・剣武の宮本一輝さん

雷親方は、日体大時代から「宮本の湯」を訪れ、英気を養って次の日からの糧にしていたとしみじみ回顧する。

「私にとっては第二の故郷のようです。昨年、部屋を継承して雷部屋を興すにあたり、弟子のみんなをここへ連れてきて合宿をすることはひとつの夢でありました。宮本社長をはじめ、多くの皆さんにご協力いただき、その夢がこんなにも早く実現できたことを本当にうれしく思います」

夏場所を戦い抜いた力士たちへ、名古屋場所へ向けて頑張る心と体を作ってもらいたい。そのために最高の環境を提供してもらったと、雷親方はかつての戦友への感謝の気持ちと尊敬の念を語った。

激励会は大盛況! 地元のファン130人が駆けつける

初日前日の激励会には、あいにくの雨にもかかわらず、地元のファンおよそ130人が駆けつけた。

歓迎を兼ねた激励会で挨拶をする雷親方(写真右から2番目)と、部屋頭の獅司(写真左)
歓迎を兼ねた激励会で挨拶をする雷親方(写真右から2番目)と、部屋頭の獅司(写真左)

「宮本の湯」の絶品ちゃんこ鍋に舌鼓を打ちながら力士たちと触れ合ったファンは、皆満足げな様子。若い衆に続き、最後は親方と宮本さんがカラオケを披露し、会場は大盛り上がりで幕を閉じた。

歌を披露する毅ノ司。トップバッターでSMAPの『SHAKE』はナイス選曲!会場は拍手喝采の大盛り上がりだった。夏場所で勝ち越し、次の名古屋場所では幕下に戻る見込みだ
歌を披露する毅ノ司。トップバッターでSMAPの『SHAKE』はナイス選曲!会場は拍手喝采の大盛り上がりだった。夏場所で勝ち越し、次の名古屋場所では幕下に戻る見込みだ

環境を変えてリフレッシュ 朝稽古は誰でも見学可能

翌朝から稽古はじめ。立派な屋根のついた土俵は「秩父ふるさと村」という農園レジャー施設内に位置している。

緑の山々に囲まれた土俵。気候もよく素晴らしい環境だ
緑の山々に囲まれた土俵。気候もよく素晴らしい環境だ

緑まぶしい遠くの山間へ向かって、澄んだ風が土俵の上を滑り抜け、力士たちの火照った体を優しくなでていく。普段の稽古場とはまた違った環境で汗を流すことによって、まさに心身共にリセットできることだろう。稽古後はしっかりちゃんこを食べて、近くの川へ遊びに行ったり、宿の温泉で癒されたりと、思い思いに過ごす力士たちであった。

この日の鍋は、世話人の荒ノ浪さんが作ったソップ(しょうゆ)鍋。写真は給仕に勤しむ序二段の鷹司
この日の鍋は、世話人の荒ノ浪さんが作ったソップ(しょうゆ)鍋。写真は給仕に勤しむ序二段の鷹司

合宿中の朝稽古は、一般観覧が可能だ。秩父ふるさと村への入村料500円(町民は無料)がかかるが、稽古自体は無料で誰でも見学することができる。雷親方は「普段、国技館などになかなか足を運べない秩父の皆さんが、地元で気軽に日本の伝統文化に触れられるいい機会。多くの方に見学にいらしていただきたいですね」と歓迎する。合宿を誘致した宮本さんは「地元への恩返しになれば」との願いがある。

稽古の最後に股割りをする力士たち
稽古の最後に股割りをする力士たち

また、都内から遠征した筆者も宿泊した「宮本の湯」では、元力士が経営する温泉旅館とあって、土俵をモチーフとした「土俵露天風呂」の温泉を堪能でき、館内には至る所に相撲関連の写真や記念品が飾られるなど、相撲ファンにはたまらない造りとなっている。遠方の方も、旅行の一環で秩父へ、そして力士たちの朝稽古見学へ、足を運んでみてはいかがだろうか。後ろ髪引かれながら帰京した筆者はすでに、言わずもがな、秩父の虜である。

雷部屋秩父合宿朝稽古詳細

日時:6月12日まで(6日、8日は不可) 朝8時から

場所:秩父ふるさと村

   埼玉県秩父郡小鹿野町長留220番地

   ※入村料500円(小鹿野町民は無料)

「宮本の湯」詳細ホームページはこちら

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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