座間事件、twitterの自主規制と政府の再発防止策 #自殺 #自殺募集 の予兆をどう捉えるのか?
KNNポール神田です!
政府は、座間の9遺体事件を受け、今週(2017年11月13日)にでも、各関係省庁での局長会議で再発防止に取り組み、年内に再発防止策を取りまとめる方針だ。
また、米Twitter社においても2017年11月3日にルール変更があった。
日本語サイトでも「自殺や自傷」の項目に禁止と、人物支援としてのメンタルヘルスパートナーなどの情報伝達を明記している。
Twitter社側も異例の早さでルール改正に対応している。2017年10月31日の事件発覚4日後の改正だ。しかしながら、現在でもツイッターで「#自殺」や「自殺募集」で検索すると、この事件に呼応してのtweetから愉快犯もどきまで多種多様な書き込みがなされている。この「#自殺」という言葉だけですべてを判断するのは不可能に近い。むしろDMのやり取りに監視ルールを設定することが必要だろう。いくらアカウントを停止し、削除したとしても、メールアドレスと電話番号さえあれば作れてしまう。また、アカウントを一旦、作成すれば、電話番号を削除し、新しいメールアドレスで使い回しの電話番号で複数のアカウントが作れてしまうからだ。また、Twitterは13歳未満(小学生以下)の場合は、保護者の同意が必要だが、相手が13歳未満かどうかを判断する機能はない。そう考えると、匿名性が担保されているSNSそのものが危険と考えられがちだが、個人のヒモづけがされたSNSほど危険なものはないと思う。
そして、まだ今回の事件の全容が明確になってはいないが、白石容疑者の逮捕のきっかけもツイッター上のログに記録があったことも犯罪捜査の一助にはなっているはずだ。とはいえ、ツイッターがなかったら出会えていないはずとも言えるが、過去のネット事件からも、闇サイトや、いろんなお困りごとにおけるQ&Aや掲示板によって、同じ悩みを持つ人たちの解決の場にもなるが、それらが起因した事件も数多い。
政府の再発防止でSNSに及ぶ規制
2017年内に、再発防止策として、政府が『自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策の強化』や『ネットを通じて自殺願望を発信する若者の心のケア対策の強化』の施策を打ち出す事は明らかだ。しかし、規制すればするほど、その種の救いを求める人と悪用する人たちは、ネットの深みに入り、捜査そのものを困難にすることも考えられる。
特に今回の座間での事件では、何らかの「#自殺」に関する被害者の発言が起因している。その後、相互フォローによってDM上で会話がなされ、容疑者とリアルに接触することによって事件が発生している。それだけ、被害者側が、「#自殺」をきっかけに、誰かに頼りたかった状況を察することができる。逆に言えば、#自殺 という公開ヘルプメッセージとしての可能性から、twitter社側は、メンタルヘルスパートナーの連絡先の介入を設定したと想定される。twitter上には、匿名性を持った個人の人格だからこその利点とそれを悪用するケースも見られる。また、匿名性ではなく、現在アメリカでは、過去にセクハラにあった著名人たちが #MeToo というハッシュ・タグで、過去のハラスメント被害をカミングアウトするという運動で社会的にセクシャル・ハラスメントにSNSで対抗しているという使い方もなされているのだ。単に規制を強めるというのは逆効果を生む可能性もある。
宮崎勤の連続少女誘拐事件で起きた社会事象
今回の猟奇的な事件で想い出させられるのは、1988年の宮崎勤の連続少女誘拐事件である。宮崎勤が大量のアダルトビデオやロリータアニメを保持していたことによって、オタクのイメージが定着され、「有害コミック」に関する騒動が事件を発端に起きた。『コミック表現の自由を守る会』が結成され、発起人に、石ノ森章太郎、さいとう・たかを、ちばてつやらの日本を代表する作家が並んだ。その後、「成人コミック」というジャンルが生まれ、一般書と成人コミックは書店でも、隔離されるようになった。猟奇的な事件ひとつで社会は大きく変化する。何よりも、事業者側の自粛は、現在にも脈々と続いている。すでにテレビの地上波では、いろんな企画が通らず、骨抜きとなり、BSやネット番組に完全にシフトしている。
今回のような事件を二度と起こさないようにとあるが、猟奇的な事件の再発防止は実際に不可能だと思う。むしろ規制を強いることによっての反動の方が心配ですらある。今回の事件は、SNSにおける第二の宮崎勤の社会現象を生む可能性を秘めているからだ。
自殺者数は、年々減少している
そんなに、自殺者が多いのかというと…、実は年々減少しているのだ。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-01.pdf
日本の自殺者数は年間2.4万人(2015年)。2003年のピーク、3.4万人から1万人減少している。※2016年の自殺者数は2.1万人
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-01.pdf
日本の自殺率は世界で18位(2015年)。2005年は世界13位だったので5位もランクは下げている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/国の自殺率順リスト
小中高生の自殺は増えているようにミスリードされそうになるが…
グラフでは、相当な増加に見えるが、実際には、小中高性の自殺比率は2.1万人全体では、1.5%にすぎない。
自殺全体をなくそうと考えるならば、むしろ高齢者の自殺問題だろう。
「40歳代」が3,739人で全体の17.1%を占め、次いで「50歳代」(3,631人、16.6%)、「60歳代」(3626人、16.6%)、「70歳代」(2,983人、13.6%)の順となっている。
そして最大の自殺の要因は「無職」であることだ。
「無職者」が12,874人で、自殺者全体の58.8%を占めている。
厚生労働省自殺対策推進室「平成28年中における自殺の状況」より
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H28/H28_jisatunojoukyou_01.pdf
日本の自殺要因は、『無職の高齢者』と位置づけることができる。
むしろ、「ベーシックインカム」を真剣に考える機会とも言えそうだ。
#自殺 の予兆をどう捉えるのか?
今回の事件は、自殺者というよりも、#自殺 というキーワードをもとに、何らかの救いを求めたかった人とそれを利用した1.27億分の1の確率の繰り返しと考えることができる。「再発防止」策ではなく、#自殺 というキーワードが、SNSで公に出せる人、出せない人に対してのケアが最も重要だ。予兆のある「#自殺」信号を発見されないようにするのではなく、予兆のある「#自殺」信号からなんらかの解決策を講じなければならない。