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2月中旬のキャンプ開始が暗礁に! アリゾナ州自治体がMLBに開始延期を求める書簡を送付

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今年のスプリングトレーニングも通常開催が厳しくなってきた(筆者撮影)

【カクタスリーグ幹部らがMLBに書簡送付】

 2月中旬から開始予定のスプリングトレーニングが迫る中、MLBが新たな問題に直面することになった。

 米メディアが報じたところによれば、アリゾナ-州のスプリングトレーニングを統轄する組織『カクタスリーグ』が同地域内の市長らと連名で、1月22日付けでMLB及びロブ・マンフレッド・コミッショナー宛てに書簡を送付し、スプリングトレーニング開始の延期を求めたという。

 第一報を報じた1人である、フェニックスの地元TV局でニュース番組ホストを務めるバーン・レスニク氏は、Twitter上に入手した書簡の画像を投稿している。

【フェニックス地域が米国内最大の感染拡大地域に】

 同氏が入手した書簡は、マンフレッド・コミッショナー宛てにカクタスリーグで事務局長を務めるブリジェット・ブリンスベイカー氏を筆頭に、各チームのスプリングトレーニング施設が置かれている各市市長ら計10人の連名になっている。

 この書簡は、すでに15チームのスプリングトレーニング施設中10施設が受け入れ準備が整っている一方で、全施設が位置するマリコパ・カウンティ(郡)が現在、米国内でも最大の新型コロナウイルス感染拡大地域になっていることから、現場はスプリングトレーニングの開始を延期するのが妥当との結論に達したことをMLBに通達しているものだ。

 また書簡では、ワシントン大学の研究機関の感染予測も紹介しており、スプリングトレーニング開始予定の2月中旬では1日当たり9712人の感染が予測されるが、3月中旬までには3072人まで減少するとしている。

【今後も選手会らと協議を続ける意向のMLB】

 『サンフランシスコ・クロニクル』紙のスーザン・スラッサー記者によれば、この書簡に対しMLBは声明を発表し、今後も公共衛生機関や選手会と調査を重ねていきながら、判断していく姿勢を明らかにしている。

 ただMLBやオーナー側は元々、スプリングトレーニングを安全に実施するためにも参加者全員のワクチン接種を優先すべきとの立場から、開始を遅らせる意見が多かった。

 一方で、スプリングトレーニング開始を遅らせると今シーズンも通常の162試合を実施できないリスクが考えられることから、フルシーズン実施を主張する選手会が難色を示していた。

 また参加者全員がワクチン接種できる態勢を整えられるかどうかも不透明な状況もあり、MLBもスプリングトレーニングを予定通りの日程で実施する方向で各所に通達していた。

【再び選手会と衝突の可能性も?】

 今やスプリングトレーニング開始まで1ヶ月を切り、日程調整を含めMLBは早急な決断が求められている。

 もちろんアリゾナでスプリングトレーニング開始が延期されるようなことになれば、準備期間の平等を期すためにも、フロリダのスプリングトレーニング開始も同様に延期せざるを得なくなってくるだろう。

 また延期時期によっては、公式戦日程にも影響を及ぼしかねない。そうなると、是が非でもフルシーズン実施を主張している選手会と再び衝突する可能性もあるだろう。

 ただ日本でも自治体の要請を受け入れ、Bリーグがオールスター戦中止を決めていることからも、やはりMLBも自治体の意見を無視することはできないはずだ。

 果たしてMLBはどんな決断を下すのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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