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見えてきた今年の夏映画興行。トップに君臨する作品は?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
トムのアクションのように急上昇なるか?

7月も終わり、夏休み映画のヒットの動向が見えてきた。もともと今年の夏は、例年以上に大ヒットのポテンシャルをもった作品が乱立。夏映画「戦国時代」を予感させていた。うまくいけば相乗効果、悪い方向になれば共倒れの可能性もあったが、現在のところ、全体に好成績を残している。

7月最終週の時点で発表された興行収入の数字は以下のとおり。

『バケモノの子』 25億円(公開3週目)

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 25億円(公開4週目)

『ターミネーター:新起動 ジェニシス』 20億円(公開3週目)

『ラブライブ! The School Idol Movie』 20億円(公開7週目)

『HERO』 19億円(公開2週目)

『マッドマックス/怒りのデス・ロード』15億円(公開6週目)

『インサイド・ヘッド』約13億円(公開2週目)

『ポケモン・ザ・ムービーXY「光輪の超魔神フーパ」』約10億円(公開2週目)

これを公開週による今後の推移と、シリーズの前作や同系列の作品を参照したうえでの、おおまかの予想を立てると…

『バケモノの子』50億円

同作の細田守監督作品は『サマーウォーズ』(09)16.5億円、『おおかみこどもの雨の雪』(12)40.9億円と右肩上がり

『HERO』50億円

07年の前作が81.5億円で、今回のペースを考えると、このあたりか。

『アベンジャーズ〜』40億円

1作目が35.3億円。その後の人気の拡大で微増に期待できる。

『インサイド・ヘッド』30億円

ディズニー/ピクサー作品は、シリーズもの以外の新作は興収の幅が広い。今回は安定的にヒットしているので。

『ターミネーター〜』30億円

シリーズ前作となる『ターミネーター4』(09)が33.2億円。目標はそのあたりか。

『ポケモン〜』20億円

前作が29.1億円。

『ラブライブ!』23億円、『マッドマックス』18億円

ここで昨年の数字と比較してみる。以下が2014年、夏休み映画の興行収入の最終数字。

『STAND BY ME ドラえもん』83.8億円

『マレフィセント』65.4億円

『るろうに剣心 京都大火編』52.2億円

『思い出のマーニー』35.3億円

『GODZILLA ゴジラ』32億円

『ポケモン・ザ・ムービーXY「破壊の繭とディアンシー」』29.1億円

『トランスフォーマー/ロストエイジ』29.1億円

『ホットロード』24.7億円

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』15.9億円

6月末から8月中旬公開の、いわゆる「夏休み映画」の上位(15億円以上)の興収を単純に計算すると、

2014年 367.5億円

となる。上記の2015年の7月末までの公開作品の予想を合計すると

261億円

と100億円くらいの差になっている。この100億円を埋めていくのが、以下の8月の公開作になる。

8/1公開『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

8/5公開『ジュラシック・ワールド』

8/7公開『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』

8/8公開『日本のいちばん長い日』

このうち『進撃の巨人』は、待望の映画化であるうえに、アニメ版も含めた人気の浸透という有利な条件も揃いつつ、ファミリー映画ではないので、とりあえず50億円あたりが目標か。『日本のいちばん長い日』は20億円あたりだろうか。そうなるとカギになるのが、洋画の大作2本。そしてこの2本が、アクション超大作として多くの観客を満足させる仕上がりになっているのだ。

まず『ジュラシック・ワールド』。

ついに恐竜のテーマパークが完成し、そのパーク内をアトラクション感覚で楽しませる作りに、シリーズ最強の新種恐竜による大パニック、信じがたいほど進化をとげたリアルな恐竜のビジュアルで、サマームービーとして文句なしに楽しめるのだ。

シリーズ前3作の日本での興収は順に、141.1億円、98.6億円、51.3億円と落ちてはいるものの、恐竜の映像への人気は依然として高く、この『ジュラシック・ワールド』は世界興収で、『アバター』、『タイタニック』に次ぐ歴代3位に到達している。第3作から14年の歳月が経っているので、「また観たい」という渇望感もメガヒットの要因で、日本でも高い数字が期待できる。

そして『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』。

シリーズ5作目となる本作は、トム・クルーズのチャレンジ精神が、もはや「神レベル」となり、アクションの体感度が半端じゃない。前作の世界で最も高いビル(ブルジュ・ハリファ)でのスタントに比べても、今回の数々のシーン(離陸する飛行機にしがみつく。6分半も意気を止めた水中シーン、ヘルメットなしの高速バイクアクション)はハイレベル。しかも監督の並々ならぬ演出力や、ヒロインとのドラマなど、あらゆる意味で「本格派」の完成度を実感できる。

シリーズ前4作の日本での興収は順に、61億円、97億円、51.5億円、55.4億円と安定しており、今週末の全米公開の数字にもよるが、5作目で急激に数字を落とすことはないだろう。

つまり『ジュラシック』も『ミッション』も50億円を狙える作品。場合によっては。どちらかが夏休み映画の「主役」を勝ち取る可能性も大いにある。問題は、公開がほぼ同時期のため、観客を食い合ってしまう点だけで、そこをクリアできれば、この夏の映画興行は昨年を大きく上回る結果になるはずだ。

100億円近い作品は生まれないだろうが、『バケモノの子』『HERO』『進撃の巨人〜』『ジュラシック・ワールド』『ミッション:インポッシブル〜』の5作のうち、4作が50億円超えを達成する…というのが希望的、および冷静な観測である。

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』

8月7日(金)より全国公開

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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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