年間30本塁打以上は1シーズンだけ! 広島が獲得したケビン・クロンの詳細データをチェックしてみたら…
【広島が新外国人選手の獲得を発表】
すでに各所で報じられているように、広島がケビン・クロン選手の獲得を発表した。
広島から正式発表される前から米メディアで、2020年シーズンに在籍していたダイヤモンドバックスがクロン選手の保有権をNPBチームに売却しようとしていると報じられており、それが広島だったと判明したわけだ。
米メディアで報じられてから、日本の主要メディアは「マイナー通算151発男」や「昨季3A本塁打王」と形容し、長距離打者のNPB入りに関心を示してきた。
もちろんその形容に間違いはないのだが、阪神が昨年オフにジャスティン・ボーア選手を獲得した際も、そうした見出しが一人歩きしてしまい、シーズン開幕当初の大不振でバッシングされたのは記憶に新しいだろう。
今や日本にいながらマイナー選手のデータもしっかり確認できる時代なのだから、ある程度正確なデータをチェックしておくべきだろう。
【シーズン30本以上は2019年だけ】
確かにクロン選手は、2019年シーズンに38本塁打を放ち、3Aパシフィック・コースト・リーグで本塁打王に輝いている。これは紛れもない事実だ。
しかも出場試合は82試合のみで、OPS(出塁率+長打率)に至っては1.226と驚異的な数字を残している。
その一方で、2014年にマイナーリーグの公式戦に出場してから2019年までで、30本以上の本塁打を放ったのは、2019年のみなのだ。2018年も同じ3Aで108試合に出場し、22本塁打に留まっている。つまり2019年は特に顕著な数字を残せたシーズンだったのだ。
元々パシフィック・コースト・リーグは、もう1つの3Aであるインターナショナル・リーグと比較して、圧倒的に打者有利のリーグだといわれている。クロン選手が所属していたリノも砂漠地帯の街で、本塁打が打ちやすい球場として知られている。
しかも2019年は、3AでもMLB公式球が使用されることになり、3Aの2つのリーグともに本塁打数が急増していたシーズンだった。それだけにクロン選手の打撃を、2019年シーズンだけで語るのは非常に難しい。
【OPS.800未満は1シーズンだけ】
だからといって、クロン選手が長距離打者ではないと論じたいのではない。むしろ彼は、間違いなく長距離打者に分類される打者だ。
各シーズンのOPSを見ると、MLBではOPS.800以上で強打者と認識されるのだが、クロン選手がマイナーリーグで.800を下回ったシーズンは2016年のみだ。
しかも2019年以外30本塁打に到達していないとはいえ、2015年以降はすべてのシーズンで20本塁打以上を記録しており、確実に長打が打てる打者と言っていい。
クロン選手のシーズン別成績については表にまとめたので、参考にしてほしい。
【重要なのはNPBへの適応力次第】
ボーア選手もマイナーリーグでは、本塁打数ではクロン選手にやや劣るものの、OPSではほぼすべてのシーズンで.800を超える数字を残し、さらにメジャーでの実績でははるかにクロン選手を上回っている。それでも阪神やファンの期待に十分応えることはできなかった。
ただボーア選手の場合、極端に左投手に弱いというデータが確認されていたが、クロン選手は比較的左投手を苦手にしているようだが、逆に2018年には右投手より左投手から高い打率を残しているシーズンもあり、明確な傾向は見られない。
つまり結論をいえば、クロン選手のマイナーでの実績は決して特別なものではなく、ボーア選手をはじめ大砲として期待されて日本にやって来た外国籍選手たちの実績とあまり変わっていないということだ。
もちろんクロン投手がマイナーリーグで見せていた打撃を日本でも披露できれば、間違いなく長距離打者として期待していいだろう。だが重要なのは、如何にNPBのスタイルや投手に適応できるかだ。
とにかく「マイナー通算151発男」や「昨季3A本塁打王」に踊らされず、日本に来てからのクロン選手の適応度に注目すべきだと思う。