「ウマ娘」大ヒットも先は… 続くPS5の品不足 2021年ゲーム市場
新型コロナウイルスの影響が続いた2021年のゲーム業界。大ヒット作が生まれたスマホゲームと、業績好調な家庭用ゲーム。どちらも良さそうに見えるものの、置かれている状況は対照的といえるのではないでしょうか。
◇スマホゲーム市場の優位は変わらず
まず、世界のゲーム市場規模の半分はスマホゲームが占めており、残る半数をPCと家庭用ゲーム機で分け合う構図になっていることです。日本市場も、スマホゲームが圧倒的に優位なのは変わりません。
角川アスキー総合研究所が今年7月に発表した「ファミ通ゲーム白書 2021」によると、2020年の世界のゲーム市場は20兆円を超え、国内のゲーム市場規模は2兆円を突破。うちオンラインプラットフォーム(スマートデバイス、PCなど)の多くを占めるゲームアプリの市場規模が1兆3164億円(前年比8.4%増)と6割以上を占めています。2021年も変動はあれど、似た数字になるでしょう。
2021年の市場データが出るのは、集計・解析の時間を考えると2022年になるわけです。しかし企業の決算を追うと大筋の流れはつかめます。
◇「ウマ娘」 スマホゲームの難しさを象徴
スマホゲーム市場ですが、DeNAやグリー、mixiなどのゲーム事業の売上高や営業利益は前年同期比減が多く、厳しい状況が浮き彫りになります。
例外は、今年2月に配信されて大ヒットした美少女キャラの競馬ゲーム「ウマ娘」です。同作を手掛けたサイゲームスの親会社・サイバーエージェントの2021年9月期の連結決算ですが、ゲーム事業の売上高は約2628億円(前年同期比68.6%増)、営業利益は約964億円(同217.9%増)でした。利益だけで1000億円目前。ウマ娘の配信時期を考えると7カ月強の数字でコレですから、他社もうらやむ驚異的な数字です。
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スマホゲーム各社の決算や関連資料には、「新規ヒット作の創出」という目標(要するに課題)が掲げられています。そして競争の結果、「ウマ娘」が成功したわけですが関係者に聞くと、なかなか真似できないという声がありました。同作のヒットの理由の一つに、開発期間を2年延ばしてコンテンツの質を向上させたことにありますが、開発費の増大を意味しており、リスクを考慮すると当然のことでしょう。「ウマ娘」のヒットは、スマホゲームが当たったときの予想を超えるすごさと共に、当たらないときの落差を再認識させたといえます。
ある大手スマホゲーム会社の社員は「新作を出して数字が好調でも、投資家からは過去のヒット作や『ウマ娘』などと比べられてしまう。大手はゲーム事業だけでなく、他業種と組み合わせて業績の安定化を図っているのが現状」と話しています。
スマホゲームの人気タイトルは、従来の人気作が引き続き上位を占める構造は変わりません。従って新作ソフトも、ヒットしたコンテンツの知名度を活用した勝負になっています。「ウマ娘」もゲーム自体の出来の良さはあれど、競馬というコンテンツのパワーを活用しており、純然たるゲームの魅力のみで引っ張っているわけではありません。裏返せばゲーム単体だけで引っ張るのは今や大変ということ。今後とも「勝ち組」の人気作以外は、スマホゲーム市場で厳しい戦いが続くと予想されます。
◇今年の顔のゲームは? 首をかしげる関係者
スマホゲームの各社の決算が軒並み厳しかったのとは対照的だったのが、家庭用ゲーム機にソフトを提供する大手のゲーム会社でしょう。任天堂やソニーのゲーム事業(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)だけでなく、スクウェア・エニックスやカプコンなどの大手ソフト会社の業績を見れば、好調なのは一目瞭然です。
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今年は「モンスターハンターライズ」や「ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール」などが売れたわけですが、関係者に「今年の顔になるゲームソフトは?」聞いても、特定タイトルを挙げることなく一様に首をかしげました。2020年に社会的ブームになった「あつまれ どうぶつの森」のような、象徴的なタイトルがないからでしょうか。各社の業績を考えると、ゲーム機もソフトも売れたのは間違いないのですが、人のイメージとは面白いものです。
とはいえ懸念もあります。昨年11月に発売されたゲーム機「PS5」が1年経過してもなかなか店頭に並ばないことで、品不足がどこで解消するかです。今年のゲーム業界を振り返るときに、「PS5が店頭で売ってないこと」という関係者もいました。
PS5は、発売から9カ月で世界出荷数が1000万台を突破し、一時期は店頭に並んだこともあったものの、再び希望小売価格での入手が大変な状況になっています。半導体などの不足により旺盛な需要に即応した増産が難しいこと、世界的なサプライチェーンの混乱が理由です。ゲーム業界だけの問題ではないゆえに、即座の改善は厳しいでしょう。
ただPS5を入手できないユーザーの不満はあるにせよ、無関心というわけではありません。またニンテンドースイッチは、年間出荷数のピークを迎えただけに、今後は減少幅をどう支えていくかという課題もあります。しかし家庭用ゲーム機の2022年の市場の先行きは、暗いわけではありません。
「ウマ娘」のヒットがありながら、市場の頭打ち感は変わらず、先が見通しづらいスマホゲーム市場。一般紙レベルで取り上げられるような社会的ヒットのタイトルはないものの、業績好調な家庭用ゲーム機の市場。明暗が分かれたのが興味深いところです。