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田子にんにくのおいしさを日本全国へ!/GABULIC 山蔭伸二さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
「OSTERIA GABU」「GABULIC」代表の山蔭伸二さん

日本一のにんにくの産地である青森県。その中でも、特にブランド化され高い評価を得ているのが、田子(たっこ)町の「田子にんにく」です。この物語の主人公は、この「田子にんにく」のおいしさを全国に広めるべく動き出した、山蔭伸二さんです。

山蔭さんは、仙台の人気店「OSTERIA GABU」のオーナーシェフ。ワインをガブガブ飲んでほしいということで「GABU」と名付けられた名店は、いつも多くのお客さまでにぎわっています。そしてそのお客さまたちに大評判なのが、田子にんにくを使用した料理の数々。

「田子にんにくを使う一番の理由は、おいしいから。今は、親戚の農家から譲ってもらって、お店で使用していますし、欲しいというお客さまにはにんにくそのものを販売したりもしています」

田子にんにくは、大粒で身がしまっていて、糖度が高くふくよかな香りが特長
田子にんにくは、大粒で身がしまっていて、糖度が高くふくよかな香りが特長

聞けば、田子の人たちにとって、町の主要産業でもあるにんにくは、食生活に欠かせないものなのだそう。

「田子って、大体どの家庭も普通のお醤油のほかに、にんにく醤油っていうのを用意してて、にんにくは本当に食卓から切り離せない食材なんです。僕は18歳で地元を離れたんですけれど、それまで当たりまえにおいしいにんにくがある環境だったから、気づいていなかったんですよね。田子にんにくのおいしさに。親元を離れて自炊するようになって、スーパーに行くと青森のにんにくって高いんですよ。それで『輸入物でいいか』って妥協したら、エグ味なんかもすごくて僕の口には全然合わなかった。自分がどれだけ恵まれた環境にいたのか、痛感しましたね」

山蔭さんの気さくな人柄も「GABU」が人気店たる理由のひとつ
山蔭さんの気さくな人柄も「GABU」が人気店たる理由のひとつ

実は山蔭さんは、元介護福祉士。18歳で青森の実家を離れ、仙台の専門学校に進学し、資格を活かして介護福祉士として3年ほど働いたそうです。

その後、飲食店に転職した山蔭さんは、ホールの仕事に就きます。

「そのときの料理人が体調を崩してお店を休みがちになってしまって、僕が厨房に立つ機会が増えたんですね。それで、系列店のランチで勉強させてもらいながら、次第に料理人になっていった感じです。もともと実家でも包丁を握って料理はしていたので、好きではあったんですよね」

そんな山蔭さんに転機が訪れたのは、30歳のころ。

「働いていたお店が閉めることになっちゃって、しばらくは先輩のお店を手伝ったりしながらブラブラしてたんですよ。そんなときに、前のお店のお客さまが飲食ビルのオーナーさんで。それで『空いてるところがあるから、そこでやんないか』って声をかけてくださって。それで、スナック居ぬきのまま自分の店を始めることにしたんです」

こうして自分のお店を持つことになった山蔭さん。ワインを気軽に楽しめ、なおかつ田子にんにくを使用した「GBS(ガーリックバターソース)」が大評判となり、人気店へとなっていきました。それから数年後、現在の場所へと移転し、ますます多くのお客さまでにぎわうようになりました。

仙台市の繁華街に店舗を構えています
仙台市の繁華街に店舗を構えています

お店も軌道に乗ってきた山蔭さんは、「田子にんにくをもっと多くの人に知ってもらうために、加工品をつくろう」と、「GABULIC」というブランドを立ち上げ、加工品の開発に着手します。

「ところが、田子にんにくって糖度が高すぎて、パウダーにしようとすると熱でカラメル状になっちゃうんですって。それで業者さんに『加工に向いていない』と断られてしまってね…」

それでも「どうにか田子にんにくを全国の人に知ってもらうには、商品をつくらないと!」と考えた山蔭さんは、とある常連客に相談を持ち掛けました。

それが、仙台を拠点に東北のよいものを商品化し販売する地域商社「ロル」代表の堀井哲平さんでした。堀井さんは、「食」において絶大な信頼を寄せている株式会社千秋食品の倉田浩一さんにコンタクトをとりました。

株式会社ロルの代表・堀井さんと打合せをする山蔭さん
株式会社ロルの代表・堀井さんと打合せをする山蔭さん

そして、倉田さんのもとで「GABULIC」の第一弾商品として誕生したのが、「田子にんにく味噌味」の袋麺です。

新しく発売する袋麺のデザイン。にんにくの愛らしいキャラクターが目を引きます
新しく発売する袋麺のデザイン。にんにくの愛らしいキャラクターが目を引きます

倉田さん曰く「にんにくの風味を前に出すのに苦労した」というスープは、すりおろしとダイスカットにしたにんにくで、風味を全面に出すことに成功。魚介、鶏ガラ、豚骨と津軽味噌を合わせたスープ、そして麺にはスープをよく絡めとる中太麺をチョイスしました。

「想像した以上においしくて、『これなら全国の人に食べてもらえる!』と思いましたね。まずはクラウドファンディングでみなさんに知ってもらって、それから一般販売するつもりです。もちろんお店でも調理してお出ししますし、袋麺として購入もしていただけるようにします」

トッピングに生のにんにくを加えるとよりガツンとした味わいに
トッピングに生のにんにくを加えるとよりガツンとした味わいに

さらに山蔭さんの挑戦は止まりません。

「前からお客さんに『GBSを家でも食べたい。調味料として売ってくれないか』っていわれてたんです。だから、ソースの開発も始めました」

「GBSソース」を瓶詰にした「田子ガーリックバターしょうゆ味」のほか、新たな味にも挑戦。

刻みベーコン、田子にんにく、玉ねぎ、チーズを特製のマヨネーズソースに混ぜ合わせ、アクセントに粗びきのブラックペッパーを使用した「田子ガーリックマヨネーズ」は、パンに塗るだけでサンドイッチができあがる極上スプレッド。そして、「田子ガーリック味噌バター」は、甘辛に仕上げた鶏ひき肉に津軽味噌、田子にんにく、バター、かつおだしを合わせた、ごはんのお供にぴったりの一品となりました。

クラウドファンディングの返礼品にもなるという3種のソース
クラウドファンディングの返礼品にもなるという3種のソース

「OSTERIA GABU」の人気メニューが自宅で再現できます
「OSTERIA GABU」の人気メニューが自宅で再現できます

「この袋麺やソースをきっかけに、田子にんにくのおいしさはもちろんですが、まず田子をちゃんと『たっこ』と読んでもらえるようになってほしい。田子の地名を知ってもらって、興味が湧いたら足を運んでもらって…。そんな風に微力ながら地元に貢献出来たらうれしいですよね」

山蔭さんと堀井さん。タッグを組んでこれからも魅力ある商品づくりをしていきます
山蔭さんと堀井さん。タッグを組んでこれからも魅力ある商品づくりをしていきます

山蔭さんの“田子にんにく伝道師”としての活動はまだまだ始まったばかり。この先の展開が楽しみですね。

OSTERIA GABU

宮城県仙台市青葉区一番町4-6-14プランドビル一番町1階・B1階

022-707-4053

営業時間 18:00~翌2:00 (料理L.O. 翌1:00 ドリンクL.O. 翌1:00)

定休日 日曜

Instagram:osteria_gabu

取材:2024年5月

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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