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東北のいいものを全国に送り出したい/株式会社ロル 堀井哲平さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
株式会社ロルの代表、堀井哲平さん。東北を盛り上げるべく地域商社を立ち上げました

仙台に拠点を構える株式会社ロル。地域商社として、東北のよいもの、おいしいものを発掘、ブラッシュアップし、全国に届けることをミッションとして活動しています。代表の堀井哲平さんは、秋田県出身。専門学校への進学を機に仙台にやってきました。

JUSTINE COFFEEの看板メニュー「ニボリタン」のレトルトは株式会社ロルとして初めて開発を手掛けた商品
JUSTINE COFFEEの看板メニュー「ニボリタン」のレトルトは株式会社ロルとして初めて開発を手掛けた商品

「高校生のとき、兄が建築系の学校に行っていて、面白そうだなとは思っていたんです。でも、なんとなく僕は違うかなぁと感じていて、そんなときに同級生の中で『これからはグラフィックデザインだ』みたいな話が急に出て、かっこいいなと思って。当時バンドをやっていて、クラブのフライヤーとかなんとなく気になっていたし、街なかの看板なんかも気になったりはしていたので『じゃあ、グラフィックかな…』と。東京への進学も考えたのですが、叔父が仙台で広告の制作会社にいて『仙台デザイン専門学校がいいよ』というので見学に行って…という感じでした」。

仙台デザイン専門学校のグラフィックデザイン科に進学した堀井さんは、ここで運命の出会いを果たします。「ストリートカルチャー好きの友達といつも遊んでいて。クラブイベントのフライヤーつくったりしていたんです。その仲間と卒業後5年経ったら、一緒に会社をやろうという約束をして、卒業後、それぞれの道に進みました」。

卒業後、すぐにデザイナーとはならずにカメラマンのアシスタントとして働いたという堀井さん。その後、アパレル、そして飲食店と転職をします。

「飲食店では、インハウスデザイナーとして新規店舗のツールを任せていただいたりしていました。現場を知らないと…ということで、実際にお店にも出ていたんですよ」。

気づけば卒業から3年が経過。学生時代の友人と約束した「一緒に会社を起こす」まで、2年を切っていました。

「一度ちゃんとどこかでやらないとダメだ…と思っていたんですけれど、未経験のデザイナーもどきを雇ってくれるほど甘くなくて。20社くらいに履歴書を送って、それで決まったのが写真製版の会社でした。そこで、DTPオペレーターとして働かせてもらって、どういうデータが来るのかを見て勉強させてもらいました。そこから、約束通り友達と独立しました」。

JUSTINE COFFEE店主の平野大智さんと打合せをする堀井さん
JUSTINE COFFEE店主の平野大智さんと打合せをする堀井さん

2006年3月、学生時代の友人5人が集まり、株式会社PILEを設立。

5人の仲間がそれぞれ得意なことを持ち寄ってスタートし、最初こそデザインの仕事をしていたものの、次第に堀井さんはディレクションへと仕事をシフトさせていきました。

「当時、ウェブを自分たちで管理したいということで、僕はコーディングもやっていたんです。デザインとの両立は難しいなということで、そのうちディレクションにシフトしていきました。そして、40歳を前に『残っていくものをつくりたい』という思いが出てきたんです」。

自分の手掛けたものが、より多くの人の手に渡り、後世まで残っていくという仕事をしたいと考えていた堀井さんが出合ったのが、青森市に店舗を構えるJUSTINE COFFEEの「ニボリタン」でした。

青森の食文化のひとつである「煮干し」と洋食の代表選手「ナポリタン」を掛け合わせた究極のローカルメニュー。

堀井さんがほれ込んだ、JUSTINE COFFEEの「ニボリタン」
堀井さんがほれ込んだ、JUSTINE COFFEEの「ニボリタン」

「そのネーミングもさることながら、おいしいのにびっくりして。これを全国の人に食べてほしいと思ったんです。最初はクール便での通販を始めて、そのうちに『もっと日持ちするといいのに』というお客さまの声を受けて、レトルトをつくりました」。

試行錯誤を重ね、さらに改良も加えた「ニボリタン」は、オンラインで購入可能
試行錯誤を重ね、さらに改良も加えた「ニボリタン」は、オンラインで購入可能

この斬新なメニューを手軽なレトルトにしたアイデアは、仙台市産業振興事業団が主催する「新東北みやげコンテスト」で入賞。取扱店も順調に増え、オンラインストアのほか、青森県内のおみやげショップやスーパーマーケット、仙台市内のセレクトショップや全国のスーパースポーツゼビオhinataキッチンなどで販売されています

また、「ニボリタン」開発の際のノウハウを活かし、仙台の人気ラーメン店「仙台っ子」「油そばはてな」の袋麺も開発。さらに2023年10月現在は、“仙台G系”として大人気のラーメン店「ラーメン☆ビリー」の袋麺開発を行っており、クラウドファンディングも行っています。(2023年12月3日まで)

仙台の老若男女が愛する「ラーメン☆ビリー」のビリーラーメン(写真本人提供)
仙台の老若男女が愛する「ラーメン☆ビリー」のビリーラーメン(写真本人提供)

自分の好きなものを『これ、おいしいから!』っていう感じで世に送り出したいんです。あと、僕は誰かが一生懸命やっていることをお手伝いするのが好きなんですよ。だから、まずは今ある商品からですけれど、この先もどんどん東北のいいものを全国に展開していくお手伝いができたら」。

「ラーメン☆ビリー」の袋麵開発の打合せ(写真本人提供)
「ラーメン☆ビリー」の袋麵開発の打合せ(写真本人提供)

堀井さんの手によって、東北のよいもの、おいしいものが全国に―。次のアイテムが何なのか、期待大ですね。

堀井さんと青森市のカフェJUSTINE COFFEEがコラボした「ニボリタン」レトルトの誕生秘話は、「暮らす仙台」でもご紹介しています。ぜひご覧ください。

株式会社ロル

仙台市青葉区大町1-3-7 8F

hello@lolinc.jp

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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