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アストロズに更なるサイン盗み疑惑?!ホワイトソックス投手の疑惑発言で地区シリーズは一触即発状態か?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
アストロズのサイン盗みを匂わせる発言をしたライアン・テペラ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【アストロズ対ホワイトソックス戦で場外戦が勃発】

 地区シリーズで対戦しているアストロズとホワイトソックスの間で、何やら一触即発の雰囲気を醸している。

 ホームで戦った第1、2戦に勝利し、シリーズ勝ち抜けに王手をかけたアストロズだったが、敵地シカゴで行われた第3戦を1対6で落とし、勝負は第4戦に持ち越された。

 しかし現地時間の10月11日に実施される予定だった第4戦は、悪天候のため12日に延期されることになったのだが、グラウンドの外で両チームが舌戦を繰り広げているのだ。

【事の発端はテペラ投手のサイン盗み疑惑発言】

 事の発端は、第3戦終了後に行われた記者会見でライアン・テペラ投手が発した内容だった。アストロズの三振数が第1、2戦と第3戦で差があることについて尋ねられ、テペラ投手は以下のように答えている。

 「まさに数字が示すとおりだ。彼らは以前あそこ(本拠地球場)でいろいろやっていた過去があるし、やはり少し何か違いがあると言っていいと思う。第1、2戦と比較して、第3戦は彼らの空振りが多かった。

 だからと言って、それを(メディアに)報告しようとしているのではない。自分たちはプレーし、競い合うだけだ。彼らが何をしているのかなんて気にすることはない。これからも自分たちの投球をしていくだけだし、いずれにせよ彼らは打つことができないだろう」

 テペラ投手が指摘しているのは、第1、2戦で合計16三振だったアストロズが、第3戦は1試合だけで16三振を記録している点だ。確かに第1、2戦のアストロズはいずれも2桁安打を記録し、チーム打率は.308だったの対し、第3戦は6安打で、打率も.182に止まっている。

 今更説明する必要はないと思うが、アストロズは2017年シーズンにチーム全体でサイン盗みをしていたことが発覚し、MLBから処分を受けるほどのスキャンダルに発展している。つまりテペラ投手は、アストロズが今も本拠地球場でサイン盗みをしている可能性を示唆するような発言をしたというわけだ。

【ベーカー監督は大人の対応で反論】

 この発言を受け、アストロズのダスティ・ベーカー監督が面白いはずはなかった。翌日の記者会見で、以下のように反論している。

 「耐えがたい批判だ。今シーズン我々の得点やOPSは(本拠地、敵地ともに)ほぼ同じだった。というか、本拠地より敵地の方が少し良かったはずだ。そして彼らは敵地よりも本拠地の方が良い成績を残している。

 (テペラ投手の発言に)いろいろ反応するつもりはないが、今朝エリック・クラプトンの曲を聴いていたのだが、その歌詞に『人を批難する前にまず自分自身を見つめ直せ』というのがある。自分が言いたいのはそれだけだ」

 ベーカー監督が指摘するように、今シーズンのアストロズの打撃成績は、ホームが打率.267、105本塁打、427得点、OPS.787だったのに対し、敵地では打率.268、116本塁打、436得点、OPS.780と、やや敵地の成績が上回っている。本拠地球場で成績がいいという、テペラ投手の指摘は当てはまらないことになる。

 しかもベーカー監督は、MLBから処分を受けた後に就任しており、また2017年シーズンから在籍している選手は6人しか残っていない。ベーカー監督からすればテペラ投手の発言は、心外でしかなかったはずだ。

【両チームの間で遺恨を生んだ可能性も】

 テペラ投手の発言からも理解できるように、今回の一件で事を荒立てるつもりはなさそうなので、今後論争が発展する可能性は低い。

 だがベーカー監督に止まらず、アストロズ選手たちもテペラ投手の発言を面白く思っているはずもなく、第4戦以降更なるモチベーションを持って試合に臨むことになるだろう。

 果たしてこのシリーズは、アストロズ、ホワイトソックスのどちらが制することになるのだろうか。ただシリーズに止まらず、今後両チームの間で遺恨を生んでしまった可能性は否定できない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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