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東映アニメーションへの不正アクセス事件:「プリキュア」放送延期へのファンのリアクションの訳

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:YUTAKA/アフロ)

先週末、日本の老舗アニメスタジオ・東映アニメーションが、今月6日に第三者からの不正アクセスを受けたことで、一部作品の放送スケジュールに影響が生じることが報じられました。

影響が出ると発表されたのは、「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」、「デリシャスパーティ※プリキュア(デパプリ)」、「デジモンゴーストゲーム」、「ONE PIECE」の4作品。

現在調査中とされる被害状況はもちろん、最新話の放送がずれ込んでしまうことに対しても、毎週の放送を楽しみにしている作品ファンからは多くの心配の声と、原因となった事件への憤りの声が集まっています。

こう聞くと、『楽しみなのは分かるけど、待てばみられるんだから…』と思われる方もいるかもしれません。

しかし今回の放送スケジュールの変更は、実は一部の作品にとっては、単なる放送延期に止まらないかもしれないものでもあるのです。

  • ※タイトル表記はこの位置に白ハート

今回の影響で放送延期に加えて懸念されるのは、放送話数の削減です。

特にその影響を受けることがファンの間で心配されているのが、現在最新作「デパプリ」が放送中の「プリキュア」シリーズ。

本シリーズは、通常毎年1月末に放送が終わり2月から新シリーズの放送が始まるという、各シリーズのバトンタッチ、つまり最終回のタイミングが決まっています

そのため、予期せぬ事態で最新話の放送が延期されると、延期された分、本来放送されるはずだった先のエピソードが押し出されていく形となり、その分の調整の為に、話数が削減される可能性が生まれてしまうのです。

実際に、一昨年のシリーズ「ヒーリングっど※プリキュア(ヒープリ)」では、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、新作エピソードの放送が約2か月間休止されたのですが、最終回の放送は、通常より3週間程後ろ倒しされるに止まりました。

また、そうして「ヒープリ」の最終話が2月下旬になったことで、次のシリーズ「トロピカル~ジュ!プリキュア」の放送も、2月末と通常より遅れてスタートしたのですが、一方で最終回は従来通りの1月末でした。

従来のシリーズは、多少前後しても毎年全47話~50話であったのが、この2シリーズに関しては、最終話がそれぞれ45話と46話であることからも、本来放送されるはずだったエピソードを何話か削らざるを得なかったのであろうことが窺えます。

  • ※タイトル表記はこの位置にハート

ならば予期せぬ事態が生じても、本来放送されるはずだったエピソードを削らず全話放送して、各シリーズがバトンタッチするタイミングを固定せず後ろへずらしていけばいいだけなのかというと、そう簡単な話でもありません。

「プリキュア」シリーズはアニメをはじめ、作中に登場する変身グッズ、お菓子や文房具の発売など、主な視聴層である子供達の入学/卒業シーズンやクリスマスなどのタイミングも鑑みた幅広い作品展開と共に、シリーズの入れ替わりが行われているからです。

一度はコロナ禍でずれ込んだ最終回のタイミングを、話数を調整してでも元に戻したということは、今後シリーズを継続していくにあたりバトンタッチの時期をフレキシブルにしていくことも、やはり現実的ではないのでしょう。

「デパプリ」に関しては、昨日3月13日の放送に加え、3月20日、3月27日、4月3日についても、最新話となる6話の放送は行われないことが既に告知されています。

もし話数が調整されたとしても、シリーズの大筋とはあまり関係のないエピソードから削られるであろうことは想像できますが、それでも本来だったら放送されたはずのお話が日の目をみなくなってしまうことに変わりありません。

作品ファンが今回の放送延期について残念に思い、原因となった事件に憤った背景には、単に“最新話をみるのが遅れる”だけでなく、そうして今シリーズが1年かけて積み上げていくはずだった大事なエピソードのいくつかが、欠けてしまうのではないかという懸念もあってのことなのだと思います。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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