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厚切りジェイソンが語る「お金の力」

中西正男芸能記者
仕事、お金、今後の自分。あらゆる思いを語る厚切りジェイソンさん

 IT企業役員という顔も持つ厚切りジェイソンさん(35)。新著「ジェイソン流お金の増やし方」(ぴあ)が13万部のヒットとなり、お金を通じた人生観が注目されてもいますが、ジェイソンさんが語る「お金の力」とは。

節約とは

 以前から僕が投資をしているということで、先輩芸人さんとかスタッフさんからお金の運用に関する相談を受けることは多かったんです。

 より一層、それが増えたのが新型コロナ禍以降だと感じています。直接知っている人からの相談に加え、雑誌などでのお金に関する取材が連続で入るようになったんです。

 これだけお話をいただくということは、もしかしたら多くの人が興味を持っているんじゃないか。そこを分かりやすく本にまとめたら一石二鳥というか一石万鳥というのか、皆さんの役に立てるんじゃないか。それが昨年11月にお金の本を出したきっかけでした。

 お金に関しては3つの柱があると思っています。支出、収入、投資。全部大切なんですけど、一番大切なのが支出の工夫。すなわち“節約”だと僕は思います。

 この感覚は子どもの頃からあったものでして、というのは、ウチのお母さんはかなりの節約家だったんです。スーパーのハシゴをするとか、割引券は必ず使うとか、外食は滅多にしないとか、とにかく“お金を大切にする”ということを徹底していました。

 お父さんが働いて、お母さんは専業主婦だったんですけど、よくお母さんが言っていたことがありました。

 例えば、リンゴ1個100円が普通だとして、それをお母さんが安いスーパーを探したり、期間限定のセールで買ったりして1個50円で買ったとします。となると、100円で2個リンゴが買えることになります。となると、そのリンゴはお父さんから1個、お母さんから1個もらったことになる。

 お金を稼いでくるのはお父さんだけど、その大切なお金の価値をさらに高めて、倍のものが買えるように工夫する。そうなると、実質お父さんと同じお金を稼いでいるのと変わらないことになるとも言える。実際の買い物でも日々お母さんが僕に具体的に見せてくれていました。なので、今でも心に強く残っているんです。

 よく節約=我慢という構図があると思うんですけど、僕はそうじゃないと思っています。節約とは我慢ではなく、賢くお金を使うこと。欲しいものは買っていいんです。

 ただ、欲しいからといって目の前のものをすぐに買うのではなく、一番良いところで、一番良い時期に買う。それが僕が考える本当の節約ですね。

 その考えからすると、ウチの子どもたちが公園で遊んでいる時に周りのお母さんたちが普通に自動販売機で飲み物を買ってるのを見ると、もったいないなと思っちゃいます。

 スーパーの大きなものを買うと3倍くらい容量があって値段は半分くらいで買える。だから、実質6倍ほどの差になるわけです。しかも、それを毎日買い続けると、その差はどんどん広がっていく。

 もちろん、喉が渇いていたり、周りに何もないとなったら自動販売機で買えばいいんですけど、そこで何も考えずにお金を使う。そこにこそ、いろいろと考えるべきポイントがあるんだと僕は思っています。

ネタの意味

 いろいろと考えるということで言うと、コロナ禍で芸能の仕事はかなり減りました。緊急事態宣言の時は10分の1にはなっていたと思います。

 ただ、その中でも芸能の仕事を始めた頃から目標にしていた東京オリンピック関連のお仕事もさせてもらうことができました。その他にも、コメンテーターとして自分の意見を言う場もいただけています。

 コロナ禍の大変な中で本当にありがたいことだと思います。一方、これから自分が何をしたいのか。そこもすごく考えています。

 これは言い方がすごく難しい部分でもあるんですけど、最初の頃にやっていた漢字のおかしなところを指摘するようなネタは、言わば“売れるため”に作っていました。

 市場を分析して、外国人である自分がどこでどんな物言いをしたら喜んでもらえるのか。笑ってもらえるのか。そこを突き詰めれば、自分が“商品”として世の中から求めてもらえる。そのためのツールがネタであったと。

 適当にやっていたわけでももちろんありませんし、ましてや当時の一つ一つのお仕事も一生懸命にやらせてもらっていたんですけど、ネタの成り立ちとしてはそういう属性のものであったと。

“売れるもの”と“誇れるもの”

 重ねて言いますけど、その時にはあのネタの意味があったし、あのネタがあったから今の自分がある。これは間違いないことです。

 ただ、ここからは誰が何と言おうが自分が誇れるもの。これを作っていきたいと思っています。

 売れ行きだとか、視聴率だとか、何かしらの指標を上げるためのものではなく、自分が本当に発信すべきだと思っているものを出す。

 それが小説になるのか、映像になるのかは分かりませんが“売れるもの”から“誇れるもの”に自分の意識が変わっているところは強くあります。

 そして、これは自分でも分かっているんですけど「誰が何と言おうがやりたい」と思っていることは売れないことが多い。やりたいことと売れることの最大公約数を見出すことでヒット商品が出てくるわけで、やりたいことだけに特化したら、人から認められることはどんどん難しくなります。

 なので「やりたい」自分と「売れないだろうな」と思う自分がいるのも事実で葛藤もあるんですけど、そこを後押ししてくれるのも、お金だと思うんです。お金を大切にして、堅実に投資をして、最低限生活はしていけるお金があれば「やりたい」ことができる。

 当然それも簡単なことではないです。でも、お金があれば自分自身の選択肢を広げることにもつながる。お金がその力をもっているのも間違いのない事実です。

ハリウッドザコシショウ

 理想的なのは自分が誇りに思えるもので利益を出すことです。でも、これは非常に稀なことだと思います。自分の意志と世の中のニーズが奇跡的に一致しないとダメですから。

 でもね、それで言うと、今僕が大好きなのがハリウッドザコシショウさんなんです。CMに出てきたりしたら毎回笑ってますし、存在自体が本当に魅力的だと思います。

 僕は「R-1ぐらんぷり2016」の決勝戦で彼に負けました。彼は大阪で活動されている時から自分が面白いと思うものを貫いて、それで優勝した。自分が発信したいもので大きな利益を得たわけです。これは本当にすごいことだと思います。

 もし、あそこで僕が優勝していたとしても、彼の喜びには遠く及ばないでしょうし、それは本当の幸せではないのだろうなとも考えます。なので、すごくうらやましくもあります。

 自分もいつかあの喜びを味わいたい。そのために日々恵まれた機会を大事にしながらタネをまいていく。水を与えていく。これをただただやっていくしかない。

 あんまり面白いことじゃないから申し訳ないんですけど(笑)、いつか大きな喜びを得られるように頑張りたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■厚切りジェイソン(あつぎりじぇいそん)

1986年4月9日生まれ。アメリカ出身。本名はジェイソン・ダニエルソン。身長186センチ。ミシガン州立大学工学部卒業。IT企業の役員を務めるかたわら、ワタナベエンターテイメントの先輩にあたる「ザブングル」の加藤歩の勧めで養成所に入り、2014年にデビュー。「R-1ぐらんぷり2015」「R-1ぐらんぷり2016」と2年連続で決勝に進出する。NHK Eテレ「えいごであそぼ with Orton」などに出演中。公開中の映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」にも出演。新著「ジェイソン流お金の増やし方」(ぴあ)が13万部を超えるヒットとなっている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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