陰性と思っていたら「陽性」 新型コロナ抗原検査キットの落とし穴
5類感染症移行後、初めての波が現在日本列島を縦断中です。ピークアウト傾向の地域もありますが、北日本では定点医療機関あたりの感染者数は増加傾向となっています。ドラッグストアで購入した新型コロナの抗原検査キットを使うことはもはや当たり前になりつつありますが、その陽性・陰性の判定には注意が必要です。
選択肢が増えた抗原検査キット
ドラッグストアやインターネットで入手可能な、厚労省承認の新型コロナ抗原検査キットは16種類あり、インフルエンザと同時に検査できるキットも4種類あります(1)。
重要な点は、厚労省が承認した「体外診断用」の抗原検査キットを使うということです。ドラッグストアなどでセルフチェック目的で購入する場合、未承認である「研究用」のキットは検査精度が担保されておらず、買わないように注意してください。
抗原検査キットは、一般的に「鼻腔ぬぐい液」を採取します。鼻の穴から綿棒を約2センチメートル入れて、鼻の内側で5回ほど回転させます。竹とんぼのようにクルクルするのではなく、鼻の中全体をスープのように綿棒でかき回す感じです。
乾燥させすぎると、ウイルスが綿棒に付着せず、誤って陰性(偽陰性)になります。そのため、綿球が湿る程度、鼻腔に綿棒を静置します。その後、綿球をしぼり取るように検体抽出液へ調整して、液体をキットに滴下すれば検査結果が表示されます(図1)。
見逃されやすい「陽性」のライン
X(旧Twitter)などのSNSでは、陽性ラインが出ているのに「新型コロナ陰性でした」と画像をアップロードしている事例が散見されます。発熱外来でも、「自宅で検査したら陰性だった」とスマホの写真を見せてくれる人がいますが、「これは陽性ですね」とお伝えすると、ビックリされることがあります。
陽性・陰性の判定に必要な条件は、確認用のコントロールライン(図2の「C」)が出ていることです。ここにラインが出ていない場合、うまく検査できていないことを意味します。
抗原検査キットは、薄くてもラインが出ている場合は「陽性」として扱います(図2)。含まれるウイルス量など、色々な条件によって薄くなります。
「陰性」だと勘違いしているSNSの画像は、よく見ると薄いラインが出ているのです。
とはいえ、実際には新型コロナの患者さんにおける抗原検査キットの陽性ラインは濃いことが多いです。そのため、ラインが薄くて見逃されるケースが決して多いわけではありません。
薄いラインのほうがウイルス量が少なく感染性が低い可能性はありますが、人によって症状がまちまちであるため、ラインの濃さで優劣をつけず、陽性の場合は新型コロナとして対応するのがよいと考えます。
判断に迷う場合は、かかりつけ医や医療機関に相談ください。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27779.html)
(2) 新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000836277.pdf)