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やはり「大阪2強」は健在だった! 大阪桐蔭は履正社に夏12連勝中だけど、今年は全国で「波乱」相次ぐ

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪決勝は履正社が大阪桐蔭に挑む。夏の直接対決12連敗中だが果たして(筆者撮影)

 やはり大阪は「2強」の決勝直接対決で甲子園を争うことになった。大阪桐蔭が順調に勝ち進んだのはある程度、予想通りだったとしても、センバツで初戦(2回戦)敗退を喫してから元気のなかった履正社(タイトル写真)が、夏の本番を前に復調したのはさすがだ。秋の直接対決では大阪桐蔭が圧勝しているが、チーム状態は履正社の方がいいように見える。

履正社は好調の打線に勢い

 履正社はセンバツで高知と対戦し、内容的には圧倒していたが、ワンチャンスでひっくり返され、2-3で惜敗した。そのショックからか、春の府大会では4回戦で大商大高に敗れ、夏のシード権を逃した。強豪との早期対戦も予想されたが、2回戦からの登場でノーシードの影響はなく、安定した試合運びを見せている。特に目につくのが打線の活発さで、準々決勝までコールド勝ちを重ね、準決勝の関大北陽にも8-4で打ち勝った。ここまで6試合、全て二桁安打で、打線の勢いは大阪桐蔭を上回る。

準決勝は主力打者の代打アーチとエース・増田の完投

 ただ、チームの攻守のカナメである捕手の坂根葉矢斗(3年)が指の故障で守れず、代打で控える。また、経験値の高い右腕の今仲巧(3年)がベンチを外れ、投手陣も万全とは言えない。北陽戦ではエース・増田壮(3年)が3回に一挙4失点したが、すかさず逆転し、終盤には坂根の代打本塁打も飛び出して、増田が完投した。

履正社の増田は序盤に4失点したが中盤以降立ち直り、関大北陽に完投勝ちした。センバツでは福田にエースナンバーを譲ったが、今夏は背番号「1」でエースとして春夏連続の甲子園を狙う(筆者撮影)
履正社の増田は序盤に4失点したが中盤以降立ち直り、関大北陽に完投勝ちした。センバツでは福田にエースナンバーを譲ったが、今夏は背番号「1」でエースとして春夏連続の甲子園を狙う(筆者撮影)

 多田晃監督(45)は「ウチらしい試合ができた。増田が粘って9回を投げたのが大きい。坂根は気持ちで打ってくれた」と、秋からチームを牽引してきた主力の活躍に満足そうだった。

大阪桐蔭は打線が不調で大苦戦

 一方の大阪桐蔭は、全く打てない。秋の府3位の箕面学園との準決勝は、2回に失策から失点し、終盤まで1-2と苦戦を強いられた。8回にようやく代打・長澤元(3年)の適時二塁打で追いつき、タイブレークの末、2番・山田太成(3年)のサヨナラ打で辛勝したが、箕面学園の軟投派右腕・島津汰均(3年)にうまくかわされ、各打者がしっかりスイングさせてもらえなかった。西谷浩一監督(53)は「よく研究されていた。思うような攻撃ができず、後手後手に回って、嫌な流れだった。もう少しコンパクトにいかないと」と攻撃面では反省しきりだった。

投手陣は西谷監督も合格点与える

 ただ投手陣は先発の南恒誠(3年)が5回までで2失点(自責1)したものの、6回から登板した境亮陽(2年)が4回を2安打無失点。タイブレークの10回には平嶋桂知(2年)が力のある球でバントを阻止して無失点で切り抜けるなど、全体的には安定感のある投球だった。

大阪桐蔭は前田を助ける投手陣が調子を上げている。平嶋は2年生ながら187センチの恵まれた体から最速149キロの直球を投げる。次チームのエース候補だ(筆者撮影)
大阪桐蔭は前田を助ける投手陣が調子を上げている。平嶋は2年生ながら187センチの恵まれた体から最速149キロの直球を投げる。次チームのエース候補だ(筆者撮影)

 西谷監督は「2年生がよく投げた。特に平嶋は魂を込めて投げていた」と頼もしい下級生を絶賛した。エース・前田悠伍(3年=主将)はこの日もベンチ待機で登板機会はなく、選手たちを鼓舞し続けていた。

夏の直接対決は大阪桐蔭が12連勝中

 この両校は20年以上にわたって「大阪2強」とされる。甲子園での実績は優勝9回の大阪桐蔭が大きく上回るが、履正社も4年前の2019年に全国優勝し、2強としての面目は保たれている。翌年も履正社がチーム力で優位とされたが、コロナ禍で春夏の甲子園が中止になり、甲子園を懸けた戦いは行われなかった。この年の「独自大会」では履正社が大阪桐蔭に完勝したが、これは甲子園にはつながらない試合。負ければ甲子園出場を断たれる夏の直接対決では、大阪桐蔭が履正社に12連勝中と、圧倒的な差がある。昨夏も決勝で当たり、大阪桐蔭が7-0で完勝した。

履正社戦には必ず前田を登板させてきた西谷監督

 今チームの対戦は昨秋、府大会決勝の1回だけで、奇しくも7-0と同じスコアで大阪桐蔭が勝っている。大阪桐蔭の西谷監督は、一昨年秋から履正社戦には必ず前田を登板させているが、前田は今大会の準決勝までで、1試合しか登板していない。後半戦の組み合わせが決まった段階で、西谷監督は前田の決勝での登板を想定していたのではないか。準決勝での前田の様子を見ていても、登板の気配すらなかった。前田は4回戦の東海大大阪仰星戦で先発し、2本塁打を浴びたが6回を4安打2失点にまとめた。これが今夏、唯一のマウンドで、満を持して決勝での登板となれば、中5日となる。

履正社の先発は150キロ左腕の福田か

 対する履正社は、多田監督の言うように増田の準決勝での完投が大きい。決勝は同じ左腕の福田幸之介(3年)の先発が予想される。センバツでは高知を相手に7回まで無安打投球で、敗れはしたが大きく成長した姿を見せた。増田より体格、球威とも上で、最速150キロの直球に、キレのいいスライダー、緩いカーブなどの変化球も多彩。秋の直接対決でも投げたが、ほとんど打たれていない上、春以降、急成長している。緩急の使える左腕は大阪桐蔭が伝統的に苦手としていて、制球さえまとまれば、大阪桐蔭打線もかなり手こずるだろう。履正社としては、投手陣が踏ん張って終盤までもつれる展開に持ち込みたい。

大阪でも「波乱」が起こるか?

 夏の対決12連勝と言っても、メンバーは毎年変わる。今年の大阪桐蔭に絶対的な力があるわけではないだけに、チームの勢いで上回る履正社につけ入るスキはあるだろう。特に前田はセンバツ後、実戦の絶対数が少なく、消耗戦になれば終盤で息切れする可能性がある。投手も含めた総力戦が予想される中、履正社が前田を降板させる展開になれば、一気にムードも上がるだろう。また今夏は全国で「波乱」と呼ばれる試合が多かった。大阪2強の対決で「波乱」と言うのもおかしな話だが、こと今チームに関しては、大阪桐蔭がかなり「格上」なのは明らか。今夏の地方大会のフィナーレを飾るにふさわしい、熱い戦いを期待したい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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