東急に新改札 でも「クレカのタッチ決済では乗れない」理由
8月30日、東急電鉄がタッチ決済やQRコードに対応した新たな乗車サービスの実証実験を始めました。
田園都市線の駅には新しい改札機も設置されましたが、残念ながら「クレカのタッチ決済」で乗ることはまだできないようです。その理由を聞いてみました。
追記:
2024年5月15日より、一般的なクレカのタッチ決済で乗り降りできるサービスの実証実験が始まることが発表されました。
https://www.tokyu.co.jp/company/news/list/Pid%3Dpost_53796.html
企画乗車券から実証実験を開始
駅の改札機といえば、交通系ICカードや紙の切符に対応したものが一般的ですが、最近では「クレジットカードのタッチ決済」や「QRコード」に対応する事業者が出てきています。
東急電鉄が始める新たな乗車サービス「Q SKIP」でも、これらの方式に対応。新たな改札機が田園都市線の全駅に設置されています。
従来の交通系ICカードや紙の切符に対応した改札機はそのまま、QRコードとタッチ決済にの読み取り機が追加されたような形状になっています。
クレカのタッチ決済による乗車は、南海電鉄や福岡市地下鉄などで始まっており、いよいよ首都圏でも始まると筆者は期待していたのですが、そのまま乗車できるようになるのは「2024年春以降」といいます。
というのも、田園都市線に乗った人は、直通運転をしている東京メトロの半蔵門線や、さらに別の路線に乗り換える可能性があり、降りる駅でもクレカに対応する必要があるためです。
この点について東急電鉄は、「首都圏には縦横無尽なネットワークがあり、同業他社と連携しなければならない課題がある。2024年春以降、まずは自社路線内から検討していく」(広報・マーケティング部 統括部長の稲葉弘氏)と説明しています。
それでは、何のために新しい改札機を入れたのかというと、まずは1日乗り放題のワンデーパスのような「企画乗車券」を販売していくといいます。
企画乗車券の利用方法としては、Q SKIPのサイトからクレジットカード決済で購入します。すると乗車券をQRコードとして受け取れるので、これをQ SKIPの改札機に読み取らせることで通過できる仕組みです。
また、購入時に利用したクレジットカードがタッチ決済に対応していれば、QRコードの代わりにクレカをタッチして乗ることも可能です(現時点ではMastercardブランドのカードや、Apple Pay、Google Payに登録したクレカには非対応)。
タッチ決済の読み取り機は、当面はこの目的で使われるというわけです。
QRコードか、それともクレカのタッチ機能か、利用者は使い分けることができます。このあたりの利用動向を含めて、実証実験で確認していくようです。
今後は東急グループの施設と連携するなど、さまざまな企画乗車券を提供していくとのこと。デジタルで提供することで、立ち寄り先や滞在時間などのデータ分析が可能になることを事業者側のメリットに挙げています。
他の交通事業者が訪日外国人需要を見込んでタッチ決済の導入を進めているのに対し、東急はあくまで沿線住民向けのサービスと位置付けています。これは特徴的な違いといえそうです。
東急カードで人気の「Mastercard」には非対応?
やや気になる点として、企画乗車券を購入したクレカのタッチ機能で乗車する際、Mastercardブランドは対象外となっています。
東急グループの「東急カード」では、VisaよりMastercardブランドのほうが利用者が多いとのことですが、Mastercardブランドのクレカでは企画乗車券の購入はできるものの、改札機の通過には使えません。
これは三井住友カードによる公共交通向けシステム「stera transit」の制限事項となっています。改札機にもMastercardのロゴは見当たりませんが、三井住友カードによれば「来春以降」の実現に向けて開発を進めているとのことです。
これから交通機関によるタッチ決済の対応は広がっていくことを考えると、クレカを作る際にもMastercardを選ぶのはためらう場面が出てくる可能性もあり、早期に解決してほしいところです。