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ジャイアンツ編成責任者が語る山口俊の開幕先発ローテ入りの現実味

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
オンライン会見に応じるジャイアンツのザイディ野球運営担当球団社長(筆者撮影)

【ジャイアンツ編成担当責任者が山口投手獲得に言及】

 すでに日本でも報じられているように、ジャイアンツは現地時間の2月20日、ブルージェイズから40人枠を外された後、チームを解雇されFAになっていた山口俊投手とマイナー契約を結んだことを発表した。

 今後山口投手は招待選手としてメジャーキャンプに参加し、開幕メジャー入りを目指すことになるが、編成担当責任者であるファルハン・ザイディ野球運営担当球団社長が2月21日にオンライン会見を実施し、山口投手獲得の経緯について説明している。

 彼の説明によると、現在のジャイアンツは先発投手陣が不安定な状況にあり、NPBで先発として経験と実績のある山口投手を先発候補の1人と考え、獲得に動いたようだ。

【山口投手に手薄な先発投手陣の穴埋めを期待】

 ザイディ氏は、山口投手を獲得した経緯について、以下のように話している。

 「我々の国際スカウトはNPB時代の彼をずっと調査していた。先発、リリーフとしてずっと追い続けてきた中で、2019年は先発投手として素晴らしいシーズンを過ごしており、彼の個人データも魅力的なものだった。

 彼は経験ある先発投手である一方で、多様な役割をこなせ、多くの武器を持ったプロだと認識している。

 我々のプランは、彼を先発候補と考えている。現在チームの先発陣は厳しい状況にあり、どう作用するのかを見守りたい。ただリリーフとしての実績も十分だし、昨年もブルージェイズでリリーフを任されていた。いずれにせよ我々の投手陣にフィットする能力があると思っている」

 ザイディ氏の考えでは、スプリングトレーニング中はまず山口投手の先発としての適性を見極めた上で、うまく機能すればシーズン開幕から先発ローテーション入りさせたい意向のようだ。

【山口投手に続きサンチェス投手も緊急補強】

 ザイディ氏が指摘するように、今シーズンのジャイアンツの投手陣は先発、リリーフともに若手選手が中心になっており、経験不足は否めない状況にある。

 それを物語るように、ジャイアンツはスプリングトレーニングが始まってからも山口投手に留まらず、次々にベテラン投手の獲得に動いている。2月17日だけでも、ジェイク・マギー投手、ニック・トロピアーノ投手、昨シーズン途中までロッテに在籍していたジェイ・ジャクソン投手の3人をマイナー契約で獲得している。

 さらに2月21日は、ブルージェイズ時代の2016年に先発として15勝を挙げているアーロン・サンチェス投手とメジャー契約で合意しており、先発、リリーフとともに戦力アップを目指している。

【ザイディ氏「シーズンを通して7~9人の先発が必要」】

 ザイディ氏の説明からも理解できるように、仮に山口投手が先発ローテーションに入れなかったとしても、リリーフとして活躍してもらうオプションもあることが理解できるだろう。現在はマイナー契約の身ではあるが、それだけ山口投手は開幕メジャー入りに近い存在だと考えられているということだ。

 ただジャイアンツとしては前述通り、山口投手に先発候補としてより期待が高いように思う。それはザイディ氏の今シーズンの先発投手起用に関する構想からも、窺うことができる。

 「シーズンを通して7人から9人の先発投手が必要になってくる。もし先発候補投手全員が健康な状態にあるのなら、若手投手はマイナースタートさせるのがより効果的だと考えている。

 重要なのはシーズンを通して先発投手たちを如何に有効に活用していくかだ。どのチームにとっても、162試合をしっかり戦える構想を組み立てるのは重要な課題になってくる」

 もし山口投手が開幕メジャー入りを逃したとしても、現在のジャイアンツ投手陣の状況を考えれば、必ずメジャー昇格できる可能性があると考えていい。

 だがザイディ氏によれば、山口投手に関してはジャイアンツ以外のチームも獲得に興味を示していたことから、もし開幕メジャー入りできなかった場合は、山口投手から契約解除を申し出る可能性があることを匂わせている。

 とりあえず山口投手の今後の行方は、オープン戦の成績次第で決まることになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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