本日午後1時、抜本的法改正成立!最速で確定拠出年金改正の重要ポイントを解説
※5/25 16:30に 個人にとっての改正ポイントまとめを追加記事しています。
→2500万人に朗報!最高に有利な資産形成枠が誕生する~確定拠出年金法改正最速解説その2(個人編)
※5/26 12:30に 企業と企業型の確定拠出年金加入者550万人に影響する改正ポイントをまとめ追加記事としています。
→マスコミも知らない法律改正「裏テーマ」550万人10兆円に大影響~確定拠出年金法改正最速解説(企業編
本日午後、確定拠出年金法改正案が成立
2016年5月24日午後の衆議院本会議にて、確定拠出年金法(DC法)改正案が成立しました。今回の確定拠出年金法改正は、2001年10月にスタートしたDC法の抜本的な改正を伴うもので、マッチング拠出を認めた法改正に続き、二回目の大きなてこ入れです。
確定拠出年金制度とは、個人ないし会社が積立金を拠出、個人が資産運用の判断(商品選択や売買指示)を行い、その成果が個人の老後の受取額となる仕組みです。会社が退職金・企業年金制度として採用する企業型確定拠出年金と、個人が任意で利用する個人型確定拠出年金があります。
今回は、法改正のポイントについて成立2時間で最速解説をしてみたいと思います。
筆者は確定拠出年金の専門家であり、論文や書籍も書いているので、他のニュースが見落としているようなポイントも大きく捉えて、大胆に指摘してみたいと思います。
個人にとっての大変革~老後のお金の貯め方が劇的に変化する
個人にとってまず大きな変革は、「誰でも確定拠出年金に入れる」仕組みとなることです。企業型の確定拠出年金は会社が採用していなければ加入できませんが、個人型の確定拠出年金も、加入できる人が限られていました。
今までは「自営業者等」「企業年金のない会社員」が対象だったのですが、「公務員等」「企業年金のある会社員」「専業主婦等」も対象になります。平たくいえば、「現役世代は誰でも利用可能」になるということです。積立られる上限額はそれぞれ異なります。
これにより、誰でも老後のための上積みを行うことができるようになります。確定拠出年金は「掛金が所得控除(つまり自分の老後のための積立で節税)」「運用益が非課税(どんなに儲かっても税金がかからない)」「受け取り時にも非課税枠(退職金と同じ優遇枠が使える)」というトリプル税制優遇があるので、もっとも効果的に老後の資産形成をする枠組みです。これが現役世代全員に原則大開放されるというわけです。
一方で――ほとんどのニュースが触れていないことですが――今回の法改正により、確定拠出年金は「ほぼ全員が60歳から受け取り」という仕組みになります。今までは限定的に中途退職時などの脱退一時金の受け取りを認めていましたが、その条件がほとんど無効化されてしまうからです。
厚生労働省の法案概要説明資料では「その他の措置を講ずる」というようにさらりと書かれているため、まだ気づいていないメディアが多いのですが、個人にとっては重要な改正です。人によっては改悪に見えるほどです。
しかし、これは「老後のための虎の子の資産作りとして確定拠出年金を使ってくれ」という強いメッセージです。公的年金水準が引き下げられていく中、個人が自分でがんばるなら、国の税収が減ってでも支援するよ、と言ってきているわけですが、法律の仕組みとしても60歳までは受け取れないようにしてしまうのです。
解約に制限がある、ということは、個人の確定拠出年金制度利用については計画的な資金計画、マネープランニングが必要だということになります。
個人にとっての法改正の詳細ポイントについては後日、別コラムで解説をしたいと思います。
※5/25 16:30に 個人にとっての改正ポイントまとめを追加記事しています。
→2500万人に朗報!最高に有利な資産形成枠が誕生する~確定拠出年金法改正最速解説その2(個人編)
会社にとっての大変革~企業型確定拠出年金も大変革
ニュースをみていると、個人型確定拠出年金の規制緩和ばかりが紹介されますが、実は550万人以上が利用している企業型の確定拠出年金についても大改正が行われます。
こちらも概要資料だけではわかりにくいこともあり、ほとんどニュースになりませんが、企業の担当者や従業員にとっては影響の多いところです。ポイントをざっとあげただけでも
- 金融商品の選択肢を一定本数以下に抑える(商品の目利きが会社に求められる)
- 一定の手続きにより金融商品を除外できる条件整備(今までは実質不可能だった)
- 社員が運用未指図の場合、投資商品を自動購入させることができる仕組み
- 中小企業が確定拠出年金を活用しやすくする環境整備(従業員100名以下の中小企業向けの規制緩和)
- 掛金を年単位でやりくりできる緩和(今は月単位で固定だがボーナス時増額など可能に)
- 制度変更が容易に(中退共から確定拠出年金への変更と資産の引き継ぎを可能にするなど)
- 会社は投資教育を継続的に行うべきことの明確化(努力義務だがサボっている企業へプレッシャー)
- 会社は金融機関の評価を行い、適宜見直すべきことの明確化(努力義務だが、金融機関に競争を促すしかけづくり)
- 企業の投資教育委託先として企業年金連合会が選択肢に(中小企業を想定)
などなど、たくさんです。
筆者の本職は企業年金コンサルタントですが、この項目を解説するだけでも2時間セミナーになるほどです。会社の担当者はもちろん、労働組合も他人事と考えず、仕組みを理解しておくべきでしょう。
会社側にとっての法改正の詳細ポイントについても後日、別コラムで解説をしたいと思います。
金融機関にとっての大変革~確定拠出年金ビジネスが変わる
ところで、金融機関にとっても、この大改正はビジネスチャンスを秘めています。企業型確定拠出年金が550万人を超えてそれなりのビジネスマーケットとなっているところ、個人型確定拠出年金については利用率1%、25万人にもならないさみしさです。
多くの金融機関は直接投資信託を販売するなど(そのほうが説明は楽で利ざやが大きかった)、個人型確定拠出年金の販売を後回しにしてきました。2001年にスタートした販売プランをずっと放置していたところもあったほどです。
しかし、2017年1月の規制緩和(誰でも個人型確定拠出年金に入れるようになる)を控え、てこ入れをしたり、新規参入してくるところが増えるとみられています。
これはNISA(少額投資非課税制度)が個人1口座しか作れないように、個人型確定拠出年金も1人1口座の原則があり、口座獲得合戦が始まるからです。
特に公務員の給与振込口座を多くもつ地方銀行などは個人型確定拠出年金のセールスに積極的に動くのではないかと見込まれています。(乱暴な営業合戦にならないか心配ですが)
停滞していた個人型確定拠出年金ビジネスが活性化し、より魅力的な商品リストを提示する金融機関も増えてくると予想されています。現在は未参入のネット証券などが低コストの商品で攻めてくるかもしれません。
これは個人にとってもメリットです。2016年下半期は、各社の個人型確定拠出年金のビジネスモデルを注視し、2017年以降の加入を検討してみるといいでしょう。
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法案成立からまだ2時間ですが、まず確定拠出年金の法律改正について、最速ポイント解説をしてみました。
個人にとっての活用のポイント、会社にとっての対応のポイントについてはもうちょっと文字数が必要です。別途まとめてみたいと思います。