北朝鮮が核よりも恐れる「コロナウイルス」がついに平壌に流入! 深刻な状況下で核実験はできるのか?
北朝鮮が今朝、それも午前2時に労働党中央委員会政治局会議を緊急招集した。
党本部庁舎で金正恩(キム・ジョンウン)総書記が主宰した政治局会議に金総書記は初めてマスクを着用して現れた。発言する時はマスクを外していたが、後にも先にも金総書記のマスク姿を見るのはこれが初めてである。
金総書記が出席する政治局会議は党軍事委員会会議と合わせて20年には19回、21年にも18回、今年も1月に開かれているが、出席者らが全員マスクを着用するのは極めて異例である。
国家非常防疫部門の担当者も呼ばれ、会議を傍聴していたが、この場で金総書記は北朝鮮で初めて「致命的で破滅的な災難を招きかねない」(2020年7月25日の政治局非常会議での発言)新型コロナウイルスの感染者が出たことを認めた。
政治局会議開催の一報を伝えた朝鮮中央通信によると、金総書記は冒頭に「2020年2月から今日に至る2年3カ月にわたってしっかり守ってきた我々の非常防疫戦線に破裂口が生じる国家最重大非常事件が発生した」と発言。続けて「世界的に各種の変異株感染者が増える保健状況に敏感に対応できなかった」として防疫部門の警戒心の欠如と油断、無責任と無能を批判した。
北朝鮮当局の発表では5月8日、平壌のある団体の発熱者らから採集した検体に対する厳格な遺伝子配列分析の結果を審議し、最近、世界的に急速に伝播しているオミクロン変異株「BA.2」と一致すると結論したそうだ。このため金総書記は国家防疫システムを最大非常防疫システムに移行し、「我が国の境内に浸透した新型コロナウイルスの伝播状況を安定的に抑止して管理し、感染者らを速やかに治癒して伝播の根源を最短期間内になくすよう」指示していた。
金総書記は「党と政府が現在のような非常時を予想して備蓄しておいた医療品の予備を動員するための措置を稼動することにした」と語っているが、備蓄していた医療品が何かは明らかにされなかった。また、科学的で集中的な検査と治療戦闘を早急に手配して展開する必要性について強調していたが、治療戦闘が何を指すのかも具体的に明らかにされてなかった。
金総書記はまた、「現在の防疫形勢が厳しいとしても社会主義建設の全面的発展に向けた我々の前進を止めることはできず、計画された経済事業で絶対に逃すものがあってはならない」と述べ、国家防疫システムを最大非常防疫システムに移行しても経済活動を緩めることなく、当面の営農事業、重要工業部門と工場、企業での生産を最大限促し、平壌市内(和盛地区)の1万世帯分の住宅建設と連浦温室農場の建設などを期日内に完成しなければならないと党幹部らにはっぱをかけていた。
最も恐れていた新型コロナウイルスの感染が流入したことで北朝鮮の国防発展及び武器体系発展5か年計画にも支障を来し、近々予定されているミサイルの発射や核実験を当面見送る可能性も考えられなくもないが、金総書記は「国家防衛の前哨戦をさらにうち固め、防疫大戦の勝利を武力で裏付けるように」と、防疫部門の担当者らと共に傍聴していた国防省指揮メンバーらに指示していた。
北朝鮮はこれまで「新型コロナウイルス感染者が一人もいないクリーンランドである」と感染者ゼロを豪語していた。
確かに北朝鮮の対応は素早かった。新型コロナウイルスが中国で発生するや「人民の生命安全を守ることは我が党と国家の最優先課題」であるとして、経済的損失を覚悟のうえで、早々とパトロンの中国との陸海空の出入りを全てシャットアウし、中国を経由して入国した自国民や外国人に隔離施設で過ごすことを義務付けた。
水際対策は徹底し、外国からの輸入物資への検査検疫及び消毒まで行っていた。感染を恐れ、韓国から泳いで亡命を求めてきた韓国人を陸に上げず、そのまま冷酷にも海上で射殺するほど封じ込め政策は徹底していた。
北朝鮮の「過剰反応」はこれにとどまらず、コロナ感染を理由に東京オリンピックも参加しなかった。このため国際オリンピック委員会からペナルティーを科せられ、今年2月の冬季北京五輪への出場資格を剥奪されたのは周知の事実である。
金総書記はこれまで「我が国に流入されれば、深刻な結果を招く」と危機感を露わにしていたが、感染力の強いオミクロン変異株「BA.2」の発生が、人口が最も密集している、それも首都で確認されたとなると、今後、肥満で糖尿のけがある金総書記も公開活動の自粛を余儀なくされるだろう。
当面、注目すべきはバイデン大統領が訪韓する今月20日前後の北朝鮮の動向である。米韓当局が厳戒している核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に踏み切るのかどうか、この1点に尽きる。